全国的な緊急事態宣言が発令されてからというものの、不要不急の外出は避けて行動している方が多い。クルマに乗ってドライブには最適な天気だけど、グッと我慢しておうち時間を過ごしているクルマ好きも多いはず。
今回はベストカーのトラックマガジン『フルロード』編集部から、トラックの知識を伝授します。「平ボディ」というトラックの形態の一部を紹介します。
いったいどんなトラックのことなのか? どういう使い方をするのかなど、意外に知らないトラックのこと勉強しませんか?
文/写真:フルロード編集部
フルロード」2018年6月11日発売号
■「なんでも運べる平ボディ」を目指した職人の作りこみ
日本のトラックは箱型のバンボディが主流。しかし、クラシックな平(ひら)ボディもまだまだ健在だ。
平ボディとは、真っ平らな荷台の3方(左右後方)をアオリと呼ばれる柵で囲ったトラックのこと。
バンボディと異なり天井や側面がオープンになっているので、風雨対策は必要だが、背が高いものや幅が広いものでも容易に運ぶことができる。
今回紹介するのは、そんな平ボディの中でも、ユーザーの特別な依頼でフルオーダーメイドされる「つくりボディ」と呼ばれるもの。
製作したのは神奈川県平塚市の架装メーカー・美川ボデーで、ユーザーは東京都大田区の運送会社・ゑびす興運だ。
美川ボデーの平ボディといえば、軽くて頑丈なのが大きな特徴。今回の二段アオリ式平ボディは軽さ、強さのみならず使い勝手にもこだわって細部を作り込んだというから注目だ。
美川ボデーによると、この「二段アオリ式平ボディ」の1号車は約15年前に完成。ユーザーのゑびす興運は何でも運ぶのが持ち味の運送会社で、開発コンセプトも「なんでも運べる平ボディ」だった。
何度も打ち合わせを繰り返して完成し、これまで基本設計は一切変えていないという。
■エアサス搭載で重機などの搭載も容易に
ベース車両は日野プロフィアFW系4軸低床フルエアサスシャシーのハイキャブ・標準ルーフ仕様。
サブフレームはサイドメンバー(横根太)をサイドレール(床枠)に溶接する美川ボデー独自の井桁づくりを採用し、横根太のピッチを詰めることで剛性アップを図っている。
床材は通常のアピトン材より約3割軽い合成圧縮樹脂「ネオランバー」を採用。車体全体の軽量化と合わせて合計で約200kgの軽量化を達成し、最大積載量14300kgを確保する。
荷台は7方開の平ボディで、キャブバックにルーフデッキ付き鳥居を搭載。荷台寸法は内長9500mm、内幅2420mm。床面地上高は1020mmとなっている。
ゑびす興運はフリーのスポット運送(定期や専属ではない都度契約で荷物を運ぶサービス)でパレット貨物や重量物、鉄道保線車両などさまざまな積み荷を運ぶのがメイン。
二段アオリは、これらさまざまな積み荷の形状に合わせて、アオリの高さを変えるための仕組みである。
高さは上段251mm、下段250mmとなっており、上段アオリは職人が冷凍車の床材をミリ単位でカットし、ステンレスの補強カバーを被せたワンオフ品。薄くて軽いので、素早くアオリの高さを変えることができる。
使い方はシンプルで、荷台内幅に収まる積み荷はそのまま積載。鉄道保線車両など、車輪が荷台に収まっても車体が荷台からはみ出すような積み荷を運ぶ際は上段アオリを開く、または取り外して積載する。
最初から全部のアオリを外せばいいのでは?と思うかもしれないが、荷台には積み荷のほか使わなかった荷締機や枕木などさまざまな道具が置かれており、アオリが開きっぱなしだと走行中にこれらが落下する危険も……。そのため荷主からアオリの装着を要望されるケースも多いという。
このほかにもゑびす興運ではホイールローダーやフォークリフトなどの重機・産業車両も運んでおり、二段アオリ式平ボディのリアにはスロープを引っ掛けるためのフックも搭載。
エアサスの車高調整機能を組み合わせることで重機・産業車両も積載可能だ。
なお、下回りはシャシーの設計変更に合わせて都度変更しており、今回は左右ホイールベース間にステンレス製のボックスを搭載。このほかリアオーバーハング部に樹脂製ボックスを搭載し、収納スペースもたっぷり確保されている。
二段アオリ式平ボディは斬新なアイデアとともに細部に至るまでこだわりが満載。つくりボディのお手本のような存在だ。
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