今見ても「これ、本当に約30年前のクルマ?」と思わされるSUVがある。いすゞビークロスだ。コンセプトカーのようなデザインをほぼそのまま市販し、本格4WD性能まで備えながら販売は振るわなかった。しかし希少車となった現在、中古車価格はじわじわ上昇している。いま買うといくらなのか? 改めてビークロスの魅力と中古車相場を追ってみよう。
文:ベストカーWeb編集部/写真:いすゞ
いすゞビークロスはこうして生まれた
117クーペ、ジェミニ、ピアッツァ……。かつてのいすゞには、「他社とは違うクルマを作る」という強烈な個性があった。
そして、その系譜の最後期に登場した一台がビークロスである。ビークロスの原点は、1993年に開催された第30回東京モーターショーまで遡る。
ここでいすゞは「VehiCROSS(ヴィークロス)」と名付けたコンセプトカーを出展。その姿は、当時のクロカン4WDの常識から完全に飛び出していた。
1990年代前半といえば、三菱パジェロやトヨタランドクルーザー、日産テラノといった、いかにもタフそうな角張ったデザインのクロカン4WDが人気を集めていた時代である。
そこへ現れたビークロスはまるで違った。大きく張り出したフェンダー、丸みを帯びたボディ、黒い樹脂製クラッディング、スペアタイヤを内蔵したように膨らんだリアゲートなど、その姿は未来からやってきたSUVのようだった。
モーターショーでの反響は大きく、いすゞは市販化を決断。そして驚くべきことに、コンセプトカーのイメージを大きく崩すことなく1997年3月に量産車として発表した。いすゞ自身も、プロトタイプの大胆なデザインを忠実に再現したモデルとしている。
ベースとなったのはビッグホーンのショートボディ系プラットフォーム。全長4130mm、全幅1790mm、全高1710mm、ホイールベース2330mmというコンパクトな3ドアボディに、3165ccのV型6気筒DOHCガソリンエンジンを搭載した。
最高出力は215ps/5600rpm、最大トルクは29.0kgm/3000rpm。トランスミッションは4速ATのみで、駆動方式には電子制御トルクスプリット4WDを採用していた。
単に「見た目だけが派手なSUV」ではなかったのだ。車内にはレカロ製フロントシートやMOMO製ステアリングを採用するなど、当時としてはかなり気合いが入っていた。新車価格は295万円である。
1997年11月には日本カー・オブ・ザ・イヤーの「選考委員特別賞」も受賞している。
さらにボディカラーにも遊び心があった。標準5色に加えて20色を追加する「プレミアムカラープロデュース25」が用意され、合計25色から選択できたのだ。今なら「パーソナライズできるSUV」として人気になりそうな企画である。
そして1999年には国内販売終了に際し、開発コード「175」にちなんだ「175 LIMITED EDITION」が登場。文字どおり175台限定で、レザー表皮のレカロシートや専用インテリア、シリアルナンバー入りオーナメントなどを装備し、希望小売価格は322万円だった。
いすゞ自身がビークロスを「イメージリーダーカー」と位置づけていたことからも、いかに特別な存在だったかがわかる。



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