クルマを労わりたいから高回転まで回さない
エンジンを長持ちさせるためには、なるべく回転数を上げないほうがいい。そんな話を聞いたことはないだろうか。
確かに、エンジンを高回転まで回せばピストンやクランクシャフトなどの運動速度が上がり、各部にかかる負荷も大きくなる。冷間時から高回転まで回したり、レッドゾーン付近を常用したりする運転は避けたい。
しかし、だからといって低回転ばかりで走っていればエンジンが長持ちする、というわけでもない。
特に注意したいのが、短距離走行や低負荷運転ばかりを繰り返す使い方だ。
エンジンが十分に暖まらない状態で運転を終えることが多いと、燃焼室や吸気系などにカーボンやデポジットと呼ばれる汚れが蓄積しやすくなる場合がある。
こうした汚れが増えると、エンジンの吹け上がりが悪くなったり、燃焼状態が悪化したりする原因になる。
また、エンジンオイルに混入した水分や燃料が十分に蒸発しないまま蓄積すると、オイルの劣化を早める可能性もある。
つまり問題なのは、単にエンジン回転数が低いことではなく、エンジンが十分に暖まらない使い方や、不適切な負荷をかけ続けることなのだ。
では、時々エンジンを高回転まで回してやれば、内部の汚れが落ちるのだろうか?
いわゆる「エンジンを回してカーボンを飛ばす」という話もあるが、これを過信するのは禁物である。
適切な負荷をかけてエンジンを十分に暖めることは、良好な燃焼状態を維持するうえで役立つ。しかし、アクセルを強く踏んで高回転まで回せば、蓄積したカーボンが必ず除去されるわけではない。
むしろ過度な高回転運転や急加速を繰り返せば、燃料消費が増えるだけでなく、エンジンや駆動系に余計な負担をかけてしまう。
大切なのは、メーカーが想定する通常の回転域を適切に使うことである。
例えば高速道路への合流時など、必要に応じてエンジン回転数を上げること自体は問題ない。ただし、法定速度を守り、エンジンが十分に暖まった状態で行うことが前提だ。
逆にMT車で極端に低い回転数のまま高いギヤを使い、アクセルを大きく踏み込むような運転も避けたい。エンジンに無理な負荷がかかり、振動やノッキングなどを招く場合があるからだ。
ディーゼルエンジン搭載車では、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)の状態にも注意したい。
短距離走行ばかりではDPFの再生に必要な条件が整わず、PM(粒子状物質)が蓄積する場合がある。ただし、むやみに高回転まで回すことが解決策ではなく、メーカーが指定する走行条件や再生方法に従うことが重要だ。
エンジンを長持ちさせるには、低回転にこだわりすぎず、適度な負荷で十分に暖めて走らせること。そしてエンジンオイルやフィルターを適切に交換することが基本なのである。
タイヤの空気圧を高めにしすぎる
タイヤの空気圧を高くすると燃費がよくなる。そんな話を聞いて、メーカー指定値よりも高めに空気を入れている人はいないだろうか。
確かに、タイヤの空気圧が低いと転がり抵抗が増え、燃費の悪化につながる。また、タイヤのたわみが大きくなり、発熱や偏摩耗を引き起こす原因にもなる。
だからといって、空気圧は高ければ高いほどよいというわけではない。
指定空気圧を大幅に上回る状態では、タイヤの接地形状や接地圧の分布が変化し、路面との接地状態が悪化する可能性がある。
その結果、乗り心地が硬くなったり、路面の凹凸でクルマが跳ねやすくなったりする。タイヤの中央部分が偏摩耗する場合もある。
特に注意したいのが、雨の日の走行だ。
空気圧を過度に高めると、タイヤ本来の接地特性が変わり、グリップ性能やブレーキ性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
もちろん、空気圧不足も危険であり、ハイドロプレーニング現象の発生リスクを高める要因になる。重要なのは、低すぎず高すぎない適切な空気圧を維持することだ。
また、空気圧を高めればタイヤが長持ちするという考え方も正しくない。
タイヤの寿命は、空気圧だけでなく、走行距離、使用年数、保管環境、運転方法などによって左右される。
タイヤのゴムは、走行距離が少なくても時間の経過とともに劣化する。溝が十分に残っていても、ひび割れや硬化が進んでいれば交換が必要になる場合があるのだ。
では、適切な空気圧はいくつなのか?
これは車種やタイヤサイズ、積載条件などによって異なるため、一律に何kPaが正解とはいえない。
運転席ドア付近などに貼られている指定空気圧のラベルや、取扱説明書を確認するのが基本だ。
また、空気圧は走行によってタイヤが暖まると上昇するため、原則として走行前の冷間時に測定したい。
高速道路を走るからといって、自己判断でむやみに空気圧を高くする必要もない。積載条件などに応じた指定値がある場合は、それに従えばよい。
燃費をよくしたい、タイヤを長持ちさせたいという気持ちはわかる。しかし、タイヤはクルマと路面をつなぐ重要な安全部品だ。
わずかな燃費向上を狙って安全性や乗り心地を犠牲にしてしまっては本末転倒である。
タイヤの空気圧は月に1回程度を目安に点検し、メーカー指定値を基本に管理する。これこそが、もっとも確実なタイヤのメンテナンスなのである。



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