■レーシングドライバー木下隆之が感じた「走り」のよさ
LC500で高い評価を得た新プラットフォーム「GA-L」により、新型LSはエンジンを低く後退させることに成功しており、それによって前後重量配分が理想的になった。ドライバーの着座点も低い。ドライバーズカーとしての意思を感じる。
走り出した瞬間に、LSのフットワークが優れていることがわかる。もちろんけっして足回りがゴツゴツしているわけではない。
電子制御エアサスは、硬いわけではまったくなく、巧みに路面の凹凸をいなす。それでもプラットフォームの恩恵により、心地いい旋回性能が滲み出るのである。
ドイツ御三家のように、硬いボディと足回りで強引に旋回を引き出すような素振りはない。ステアリングを切り込めば、素直にヨーが現れる。そう、滲み出るような感覚なのである。それはライバルにはない味である。
特にLDH(後輪操舵)が組み込まれているモデルのハンドリングは絶品だ。個人的には後輪操舵否定派だったけれど、この完成度を知ったいま、考えを改めなければならないかもしれない。
ところで編集部からの原稿依頼はこうだった。ドイツ勢に「勝る」と「もう一息」を伝えろと。
そのリクエストに答えるのは簡単だ。凌駕しているのは高度運転支援でありインテリアのしつらえである。エクステリアデザインは個人の主観だからここではあえて断言しない。
走りに関しても際立っている。圧倒的な乗り心地と、それでいて滲み出るハンドリングはライバルと並ぶ。あえて言うならば、あきらかにドイツ御三家とは異なるテイストで走りを追い求めている。
どこにも真似はないし劣等感もない。まさに威風堂々と自らが思う走りの世界を追い求めている。だからここには優劣がつかないのである。好みの世界だと思う。
あえて言うならば、誰にでも直感的にわかる走りの荒々しさは欠如している。走りを際立たせた仕様の「Fスポーツ」でさえ、乗り心地は「エクスクルーシブ」と遜色ないし、それでいて走りは洗練されている。
これが悪いとはまったく思えないが、あえて想いを伝えるのならば、もっとドキドキする仕様があってもいい。奥ゆかしさが心地いいとはいえ、あからさまなスポーツ仕様があってもいいのかと思う。
ともあれ、新型LSは、世界のフラッグシップと堂々と対峙する。
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