2017年7月、ホンダ・シビックが7年ぶりに日本市場へと帰ってきた。10代目となる新型は、サイズアップと上級化が図られ、今までのシビック像とは異なる新世代の姿を提案している。
この新型の性能や賛否については多くの有識者に任せるとして、ここでは別方面からのシビックについて語りたい。
そもそも国民的実用車を目指し、初代が1972年に発売されて以来、45年もの歴史をもつシビックには、様々な個性を持つ歴代モデルが存在した。その中でも一際輝いていたシビックたち3モデルを紹介したい。
文:大音安弘
写真:HONDA、小宮岩男
■今も世界のベストセラー
初代誕生から45年を迎えたシビックの活躍は、今や世界規模となっている。
世界170以上の国や地域で販売され、昨年までの世界累計生産台数は約2400万台にも上るベストセラーカーだ。
歴代モデルはモータージャーナリストなど専門家からの評価も高く、例えば日本カー・オブ・ザ・イヤーでは、1モデルとしては最多となる4度の栄冠に輝いている。
またユニークな宣伝戦略の取り組みとして、2代目から7代目までは、モデルに「愛称」が当たられていた。「スーパーシビック」、「ワンダーシビック」、「グランドシビック」、「スポーツシビック」、「ミラクルシビック」、「スマートシビック」。
この呼び名で、どのシビックかを思い浮かべることが出来る人も多いはずだ。では、時代に合わせて、進化し続けてきた歴代シビックのなかでも特にエポックメイキングだったモデルたちを振り返ってみよう。
■ダウンサイザーの先鋭だった「初代」
シビックの原点である初代は、かなり画期的なモデルだった。
意外にも1972年の発表時は、3ドアハッチバックではなく2ドアに独立したトランクを設けたハッチバック風のスタイルだった。発表翌月には、3ドアハッチバックを追加し、その後、ボディバリエーションを拡大。
当時はオイルショックの生活への影響と悪化する公害問題を打破すべく、厳しい環境規制が打ち出され、国産自動車メーカーが大きく飛躍しようとした矢先であり、大きな課題を突き付けられたかたちとなった。
そこでホンダは、より厳しい米マスキー法さえクリアするCVCCエンジンを開発しシビックに搭載。ユニークなデザインも新しいと受け止められ、多くのダウンサイズ需要を獲得するなど、実に未来志向なクルマだった。
初代にもスポーツモデルRSが設定されたが、これも厳しい時代の目をかいくぐるために、ロード・セーリングの略と謳っていた。
■クルマ好きの心をとらえた「ワンダーシビック」
1983年にデビューした3代目のワンダーシビックは、スポーツな走りを謳うものの、コンサバな実用車という印象であった。
しかし、そんなイメージを大きく覆す、スポーツハッチが登場する。それが、待望のツインカムZCエンジンを搭載したSiだ。
ボンネットのパワーバルジはまさにオーナーの誇り。前後スタビライザー追加など足回りの改良に加え、60タイヤの採用やフロントブレーキの性能向上などが図られていた。
レースシーンでも活躍し、ホンダワークスがSiベースで挑んだJTCでの活躍は、ホンダの「FF最強伝説」の始まりとなった。
また、ラインアップの中で、背の高い5ドアハッチバックのシャトルの存在も新しく、商用車のように荷物がたくさん載るのに、乗用車ライクで洒落ていると独自のファンを獲得に成功した。
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