■お洒落でオールマイティ!「スポーツシビック」
シビック初のVTEC搭載車のグランドシビックも忘れてはならない存在だが、その進化形である1991年デビューのスポーツシビックは、まさに隙のない一台ではないだろうか。
人々がクルマに夢中だった時代に開発されただけあって、若者をターゲットとし、ホンダの持つスポーティなイメージを前面に打ち出したスタイルは、野暮ったさのあったセダンさえ、ファッショナブルに生まれ変わらせるなど、かなり画期的だった。
メカニズムでは、エンジンラインアップをVTECエンジン中心に展開したのが特徴で、エコなVTEC-Eエンジンも用意。
トップエンジンであるSiR系に搭載されるB16Aは、リッター107psとNAエンジンとしては驚異的なパワーを発揮。差高出力の170psを7800rpmで発生する高回転型エンジンはクルマ好きを虜にした。
しかし、スポーツシビックの隠れた名車を忘れてならない。それが1.5LのSOHC VTECエンジンD15Bを搭載したVTiの存在だ。
レギュラー仕様でありながら、最高出力130ps/6800rpmを発揮。お手頃なのに高性能と、まさにスポーツシビックに相応しい存在だった。
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最後に本稿でタイプRを挙げなかった理由を書き留めておきたい。
ミラクルシビックより登場したFFスポーツ最強マシンであるタイプRの存在は偉大であり、今でも憧れの存在だ。
しかし、(これはもう本当に、あくまで個人的でわがままな意見ではあるが)あまりにも偉大でありあまりにもストイックな「タイプR」の名を掲げることになって、シビックの存在そのもの、いわゆる「キャラクター」が薄まってしまったと感じるのも事実だ。
もちろんパフォーマンスは最高だ。世界に誇る日本の宝といっていい。
しかしシビックを語る際に、常に「タイプR」が念頭に置かれるようになって、それまで「シビック」という車名が持っていた軽やかさやカジュアルさが削られてしまったように感じてしまうし、そのために、シビックがシビックとして輝いた時代は、スポーツシビックまでと思えてしまう。
かつてシビックは、その名の通り、老若男女に愛される身近な存在だった。新型は、高性能でスポーティさとホンダの魅力を色濃く反映したハイパフォーマンスモデルであるのは間違いないが、「あの頃のシビック」とは変わってしまったと感じるのは、きっと私だけではないはずだ。
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