トヨタ流マーケティングの副産物か!!一世代で終わった悲運のトヨタ車たち

小さな高級車路線を推し進めたブレビス(2001年6月登場)

プログレをベースにセルシオ似のエクステリアを纏って若いユーザーを狙ったブレビスだったが、残念ながらヒット車種とはならなかった
プログレをベースにセルシオ似のエクステリアを纏って若いユーザーを狙ったブレビスだったが、残念ながらヒット車種とはならなかった

 ブレビスは1998年に登場したプログレの兄弟車。明らかに保守的だったデザインのプログレに対し、ブレビスは当時のセルシオにも似たデザインとなっており「アクティブ・エレガンス」をキャッチコピーに若い世代をターゲットとしていた。

 プラットフォームやパワートレインこそプログレと共通であったものの、全長や全幅はプログレよりも大型化されており、インパネに至ってはプログレの面影は全くなく、オプティトロンメーターやセンター部分に埋め込まれたエレクトロマルチビジョン、乗用車としては世界初となる純正5.1ch対応のDVDシステムなどを備える先進的なものになっていた。

 しかしながら当時のトヨタの中~大型セダンにはセルシオを筆頭に、クラウン、アリスト、マークII、カムリ、プロナードと複数の車種が存在しており、明確なポジションを確保できることなくプログレと共に姿を消すこととなってしまった。

こちらがブレビスのベースとなったプログレ。小さな高級車という考え方は決して悪くなかったが、保守的過ぎたのが仇となったか?
こちらがブレビスのベースとなったプログレ。小さな高級車という考え方は決して悪くなかったが、保守的過ぎたのが仇となったか?

マーケティング先行の色が強かったiQ(2008年10月登場)

マイクロカーとしてリリースされたiQにはさまざまな仕様や限定車などが追加された
マイクロカーとしてリリースされたiQにはさまざまな仕様や限定車などが追加された

 ドイツのスマートに代表されるマイクロカーのトヨタ版として2007年にコンセプトモデルを発表し、2008年から販売を開始したのがiQだ。

 1LエンジンとCVTという組み合わせのパワートレインと、全長3m弱と軽自動車よりも短い全長ながら4名乗車とした(実質的には3+1で、のちに2シーターも追加)パッケージングで、小さくても上質な車両を求めるユーザーをターゲットとして本革シートを備える「レザーパッケージ」なども用意されていた。

 しかしながら、価格面や使い勝手だけでみるとヴィッツやパッソの方が優れているため、一部のコアユーザー以外にはなかなか評価されないという状態が続いた。メーカー側も1.3Lエンジンや6速MTの追加、GAZOO Racingが開発を手掛けたチューニングモデルの「GRMN」、さらにパワートレインに手を加えて過給機をプラスした「GRMNスーパーチャージャー」などを限定でリリース。精力的にテコ入れをしていたが、ベース車の人気につながることはなかった。

 車両自体はあのアストンマーティンが(環境性能のためとはいえ)認め、シグネットというモデルのベースになるほどであったが、評価が高いからといって売れるわけでないという残念な一例となってしまったのである。

ルーフ、ドア、リアフェンダー以外は専用の外板を持つアストンマーティン シグネット。500万円弱の価格に見合った仕上がりとなっていた
ルーフ、ドア、リアフェンダー以外は専用の外板を持つアストンマーティン シグネット。500万円弱の価格に見合った仕上がりとなっていた

欧州勢に果敢に挑んだブレイド(2006年12月登場)

「乗るといいんだけどね~」と言われる代名詞となってしまったブレイド
「乗るといいんだけどね~」と言われる代名詞となってしまったブレイド

 実用車のイメージの強いハッチバックにプレミアム感をプラスし、「ショートプレミアム」というキャッチコピーで登場したブレイド。ある意味では「小さな高級車」のプログレの後継モデルとも言える1台だ。

 当初は2.4Lの直列4気筒エンジンを搭載するモデルのみだったが、2007年8月には280PSを発生するV6 3.5Lエンジンを搭載した「ブレイドマスター」も追加。V6、3.2Lエンジンを搭載したフォルクスワーゲンのゴルフ「R32」を意識していたのだろう。

 しかし、当のフォルクスワーゲンは2008年にリリースしたゴルフの6代目モデルからダウンサイジングターボを投入。ブレイド自体も1.5Lクラスのオーリスと車体を共有していたことでプレミアム感が薄く、販売は低迷。トヨタには珍しいパターンと言えるだろう。

 このようにあのトヨタでさえ、大ヒットにつながらなかったモデルは珍しくなく、理由もさまざま。チャレンジングなモデルもあれば、テスト的に販売したものもあり、この辺りはさすがトヨタといった余裕を感じなくもないが、なんにせよトヨタのクルマも深掘りしていけば新たな発見がある、ということがおわかりいただけたのではないだろうか。

【画像ギャラリー】歴史的遺産を発掘!! トヨタの快進撃を陰で支えた一世代カーたち (10枚)画像ギャラリー

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