これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、スバル インプレッサにランナップされていた「カサブランカ」について紹介していこう。
文/フォッケウルフ、写真/スバル
■トレンドに流されることなくクラシック路線を構築
クルマのデザインは技術的な進化はもちろん、流行の移り変わりによる消費者の意識変化などによって変遷してきた。たとえば電動化の流れが加速している昨今の外形デザインは、無駄なアクセントがなく、シンプルかつスムーズなラインで美しさを表現するシームレスな造形がトレンドとなっている。
現代に限らずこうしたデザイントレンドは過去にも存在し、それを採用したクルマは時代を象徴するものとして多くの人から支持される傾向にある。こうした最新のデザイントレンドを反映したクルマが時代を牽引する一方で、クラシカルな雰囲気を演出して独自の個性を主張したクルマが注目されることがある。
たとえば今回クローズアップする、スバル インプレッサ スポーツワゴン「カサブランカ」も、かつて自動車業界に話題を提供した1台であり、愛すべき日本の珍車として記憶にとどめておくべきクルマである。
カサブランカが発売された1990年代のインプレッサといえば、初代BC系レガシィに代わるWRCベース車両として開発され、イメージリーダーであるWRX STi系を筆頭に、販売の主力を担ったセダン、さらスバルが得意とするワゴンの要素を盛り込んだスポーツワゴンをラインアップしていた。
スポーツワゴンは同シリーズのなかでも取りまわしのいいコンパクトなボディながら優れた居住性と実用性を有しており、走行性能の高さも相まって売れ行きも好調。カサブランカは、そんなスポーツワゴンの売れ筋グレードであるC’zをベースに、“スポーツエレガンス”をコンセプトに掲げ、コンパクトで高級感ある個性的なスタイルに仕上げた特別仕様車としてリリースされた。
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