洗車が苦手、嫌いという人のほとんどは、面倒くさいということと洗車について知識がないことがその要因となっている。
洗車は物凄く奥が深く、極めようとすれば専門的な知識、テクニックなどを要するが、愛車をきれいに保つレベルの洗車ならそんなに難しく考える必要はない。
しかし、よかれと思ってやっていたことがクルマには逆効果だった、という残念な結果にならないためにも基本的なことは押さえておく必要がある。
本企画では、洗車、ボディケアに関する初歩的な疑問に対し諸星陽一氏が考察していく。
文:諸星陽一/写真:池之平昌信、平野学、ベストカー編集部、ベストカーWeb編集部
愛車を傷から守る方法はあるの?
クルマを大切に乗っている人にとって、とても気になるのがボディのキズや汚れでしょう。クルマは屋外で使うものですから、どうしたってキズや汚れはつきものです。でもその被害は最低限にしたいものです。
まずはキズを防ぐ方法ですが、もっとも手っ取り早いのはクルマ全体をラッピングしてしまう方法でしょう。実はスーパーカーなどはこうした手法でクルマを守っている人も多いようです。

また、フェラーリなどは赤いボディのほうが下取りがいいので、赤いボディのクルマを買って、自分の好きな色にフルラッピングして乗る人もいるとのことです。
フルラッピングまでいかなくても、ノーズ部分だけにビニール製などのカバーを掛ける「ノーズブラジャー」という用品もあります。「ノーズブラジャー」を取り付けると、飛び石や虫などからクルマのボディを守ることができます。
キズを自分で修復する基準は?
さて、クルマについてしまったキズですが、これはどんなキズは直すのか、どんなキズなら直さないのか? の判断が難しいところです。
最終的にはオーナーが自分で判断することですが、ちょっとした判断基準もありますし、直し方のコツというか修理方法の選択が存在します。
クルマの塗装は何重にもなっています。一般的に上(表面)からクリア、色、下塗りが基本で、高級車になると塗りの層が増えます。

飛び石などで色の層をキズつけ、下塗りまで見えていたらそのままにするのはあまりよくありません。こうしたときはタッチペンと言われるもので補修しておくのがいいでしょう。金属面が出ていたら、錆が発生する可能性もあります。
タッチペンが使えるのは飛び石などの“点”のキズで、いわゆる10円パンチなどで付けられた“線”のキズをタッチペンで直すのは難しいものです。
ただキレイに修復することは難しくても、キズが深い場合は錆防止の意味などを含めてタッチペン処理を行ったほうがいいでしょう。
塗装にキズがなく凹んでいるだけの場合は、デントリペアという方法もあります。デントリペアはボディの内側に特殊な道具を差し込んで、内側から凹みを押し出して直す方法です。深い凹みや塗装がはがれているときは処理できませんが、軽いキズの場合は比較的簡単に直せ、板金塗装よりも安価で直すことができます。

コーティングの耐久性は?
最近はクルマにコーティングを施す人も増えてきてます。ディーラーでも取り扱っていることが多く、新車の納車時からコーティングが施されたクルマとなっているパターンもたくさんあります。
コーティングにはさまざまな種類があって、その耐久性もメンテナンスの方法も異なります。基本的にはメンテナンス方法を指定されるはずなので、それに従ってメンテナンスしていくことになります。
とはいえ、クルマをどのように保管しているか? どのように使っているか? ということでもコーティングの劣化度は変わってきます。コーティングがどのくらい劣化しているか? は効果の現れ方で確認するのが一番いいでしょう。

コーティングは大きく分けて、はっ水系と親水系の2種類があります。はっ水系は水を弾くタイプなので水が掛かると水玉ができます。逆に親水系は水が弾かないタイプなので水が掛かると均一に広がっていきます。
どちらがいいか? は議論の分かれるところなのでここでは触れませんが、その効果が落ちてきたら再コーティングになるでしょう。
心配な人はコーティング初期の状態を動画などで撮影しておくといいでしょう。なんでもそうなのですが、劣化というのは徐々に起きるので、初期状態と客観的に比較するのは難しいのです。
タイヤの乗り心地などは客観的に記録しておくことが難しいですが、コーティングの状態は動画で客観的に記録しやすいはずです。

ただコーティングを継続するのか? それともやめてしまうのか? はオーナーの気持ち次第です。はっ水や親水の効果が落ちてきたら、そこから普通の洗車に切り替えるのもひとつの手段です。
また、今までは業者に依頼していたコーティングを自分でやるようにするというのも選択肢として存在します。どこでコーティングをやるのか? は本人の考え次第でしょう。それなりに費用も掛かりますし、費用を掛けただけにその効果を維持したいという気持ちは大きいはずです。
ただ、そのことが重圧に感じられる時期が訪れることもあります(もちろん何も感じないこともあります)ので、そうしたときは、コーティングとさよならするタイミングかも知れません。

洗車後の拭き取り方法は何がいい?
プロの洗車技術は素晴らしいものです。手際よく仕上げていくその様は、まるで芸術のようでもあります。プロの洗車がキレイに仕上がるのはこの手際のよさにもあります。なによりも洗車後の拭き取りの素早さは素晴らしいものです。
洗車後に水分をしっかりと素早く拭き取ることで、水垢のシミなどの発生も抑えることができますし、空気中の汚れの再付着を抑えることもできます。
洗車後にどうやって水を除去していくかにはさまざまな方法があります。コーティングをしっかりしているなら、人工セーム革や吸水力の高いスポンジなどで吸い取るようにしていけばいいでしょう。


人工セーム革は折りたたんで使うよりも、広げた状態でボディの上を引っ張るようにしてあげると効率よく水分を拭き取ることができます。プロはすき間の水分をエアコンプレッサーで吹き飛ばしていますが、一般人はあまりエアコンプレッサーを持っていません。
そうした時は人工セーム革をすき間に滑り込ませてゆっくりと動かすと、水分を拭き取ることができます。人工セーム革は乾いた状態だとごわごわで使いづらいので、必ず濡らして柔らかくしてから使うようにしましょう。
コーティングなどが施されていない場合は、まず最初に水切りワイパーで水分をはぎ取ってしまうといいでしょう。ザックリと水分を落としてから人工セーム革などを使うと作業性が上がります。

ただ、水切りワイパーを使うときは、優しく作業することをオススメします。とくに水洗いだけのときは、固い汚れがボディ表面などに残っていると、それを引きずってしまうことがあるからです。
洗剤を使ってひと通り洗ったあとならそうした心配はかなり減りますが、それでも慎重に作業したほうがいいでしょう。当たり前のことですが、作業はルーフから順番に低い部分に向かって行っていきます。