クルマ好きならライト関係、ステアリングといったアフターパーツのお気に入りブランドがあることだろう。
特に平成初期まではクルマの性能が現在のようによくなかったのもあり、各部をアフターパーツに変えるのが当たり前だった40代後半以上の世代であれば、その傾向はより強いに違いない。
そんな方々が昔を振り返えると、「そういえば昔よく買ったあのブランドの名前を最近聞かないけど、今はどうなっているんだろう?」と思うこともあるかもしれない。
かつて日本で一世を風靡した有名ブランドの今を追ってみた。
文:永田恵一/写真:マーシャルジャパン、FORTUNE、FET、レーシングサービスワタナベ、FERRARI、MAZDA、NISSAN
マーシャル(MARCHAL)
【当時の人気ぶり】
フランスのフォグランプ、ドライビングランプといった補助灯のメーカーであるマーシャルは、自動車黎明期のポルシェやフェラーリの市販車に加え、夜間走行があるル・マン24時間レース参戦車両への供給も追い風となり、ブランドイメージを高めた。

マーシャルの商品は1970年代初めから日本でも販売されるようになった。当時の日本車は純正のランプ類の性能が低かったのに加え、自動車熱が熱かった時代でもあった。
そのため補助灯を追加するのは当たり前で、性能の高さに加え、黒猫のロゴでも認知度が高かったマーシャルの補助灯はクルマ好きの間で大人気となって一部では神格化されていたほど。
【現在は?】
マーシャルは残念ながら1980年代に入り経営が傾き、フランスの灯火類のメーカーであるシビエに吸収された。ブランド自体は今も残っており、日本でもマーシャルジャパンを通して販売されている。
【現在の主力商品】
現在は二輪用のヘッドライトのほうがラインナップは多く、四輪用は箱スカや初代フェアレディZといった旧車が主に使う規格品のヘッドライトが販売されていて、旧車に乗っているオーナーからは絶大なる支持を得ている。

取り扱い/マーシャル・ジャパン
フィアム(FIAMM)
【当時の人気ぶり】
フィアムはイタリアのバッテリーなどの電装品メーカーで、同社のバッテリーやホーンはフェラーリ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベンツといったヨーロッパの名門にも現在も供給されている。
日本では1980年代中盤まで日本車のホーンの音が味気なかったり、ショボイものばかりだったこともあり、フィアムのホーンは格調の高さも感じさせる音色がする標準タイプに加え、笛の音を再現していると言われているフェラーリに純正供給される二連エアホーンも、クルマを買ったら早めに交換するパーツとしてクルマ好きから愛された。

【現在は?】
フィアムのホーンは現在も健在で、日本では株式会社フォーチュンなどを通じて販売が続いている。しかし、現在日本ではフィアム=バッテリーのイメージが強くなっている。
【現在の主力商品】
フォーチュンではフェラーリやランボルギーニに純正装着される二連エアホーンに加え、エアホース不要の小型2連エアホーンや装着が容易なミニ強力電磁ホーンをラインナップしており、嗜好や予算に合わせたホーン選びが可能となっている。
ただし2019年7月中旬時点で、フィアムのホーンはすべて在庫切れ状態にあり、再入荷するのがいつになるのかわからないという(フォーチュン談)。

取り扱い/ FORTUNE
ナルディ(NARDI)
【当時の人気ぶり】
ナルディは1932年にステアリングを作り始めたイタリアの名門である。創業黎明期はウッドのステアリングの引き合いが多く、フェラーリの市販車なども採用するほどだった。
日本では1990年代中盤までステアリング交換が容易なエアバッグのないクルマがスポーツモデルを含め多かったのに加え、昔のクルマのステアリングはスポーツモデルでもスポーツ性の薄いものばかりだったこともあり、ステアリング交換も当たり前のカスタマイズだった。

そういった時代背景もありナルディもステアリング交換の定番ブランドで、数多く存在したステアリングメーカーでもMOMOとナルディは人気を分け合っていた。
特にシンプルな造形をしたクラシックという商品は「走り屋のステアリング」というイメージを持つほどの人気を集めていた。
【現在は?】
日本ではFETが正規代理店となっている。現在はエアバッグの普及もありステアリング交換をすることはめっきり減ったが、それでも堅調な需要があるようで日本でも販売が続いている。
【現在の主力商品】
レザーとウッドのクラシックやガラといった昔からの定番商品に加え、ステアリングを前に近づけることができるディープコーンタイプなどの豊富なバリエーションが揃っており、好みの応じたステアリング選びに対応している。

取り扱い/FET
コニ(KONI)
【当時の人気ぶり】
オランダのコニはもともと馬具や馬車具のメーカーで、1932年にショックアブソーバーの製造を開始したという長い歴史を持つ。
ヨーロッパ車への純正供給に加え、1958年からF1チームへの供給も開始。F1では233連勝という大記録も樹立し、その名声を高めた。
日本ではショックアブソーバーの交換の際には日本ブランドを選ぶユーザーが多かったが、その中でコニはビルシュタインと並ぶ二大輸入ショックアブソーバーブランドで、「しなやかな動きが売りのコニを使っている人はクルマ通」というイメージを持たれたものだ。

【現在は?】
現在も日本でも販売されており、ショックアブソーバー単体だけでなく、車高調やノーマル形状のキット(スプリングとのセット)もラインナップされており、選ぶのに困るほどの充実ぶりを見せる。
【現在の主力商品】
用途に合わせた商品が多数揃っており、その中でも「スペシャルアクティブ」というショックアブソーバー単体は輸入車用の設定が多く、コストパフォーマンスを含めたすべての要素のバランスが優れた商品となっている。

KONI スペシャル アクティブ/適応車種:FIAT 500、 2007-2019年(アバルト含む)品番/価格※ 1台分合計 /9万6000円(税別)フロント左 8745-1247L 2万8000(税別)フロント右8741247R 2万8000円(税別)リア 左/右共通 8045-1248 2万円(税別)×2本必要
取り扱い/FET
レーシングサービスワタナベ
【当時の人気ぶり】
1ピース鍛造ホイールを得意としてきたRSワタナベのホイールは評価が高く、中でも「エイトスポーク」と呼ばれる商品は1980年代に大人気を集めた。
ちなみに人気漫画「頭文字D」の主人公である藤原拓海が駆るAE86トレノが履いているホイールもエイトスポークである。

【現在は?】
RSワタナベでは現在もエイトスポークを中心にホイールを生産、販売していてコアなファンを獲得している。また、D1をはじめモータースポーツ活動も積極的に展開している。
【現在の主力商品】
現在の主力商品もエイトスポークで、飽きないデザインをしていることもあり、AE86のような古いクルマだけでなく、設定サイズを増やしながら86&BRZのような現代のクルマが履いているのを見るくらい、根強い人気を保っている。


マシンは、今でも人気のトヨタスプリンタートレノ(AE86)でD1ドライバーの 田所義文選手がドライブ