これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。
当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、上質な大型ミニバンの元祖として知られる、ホンダラグレイトを取り上げる。
文/フォッケウルフ、写真/ホンダ
■北米版オデッセイが日本上陸!?
2024年現在、日本市場では、高級ミニバンのアルファードとヴェルファイアが、プレミアムカーのひとつの頂点として君臨している。それは、同車がラグジュアリーサルーン並みの走りの安定性、内外装の高い質感や高級装備、そして巨大なボディサイズを活かした快適な室内空間を得られた唯一無二の存在だからだ。
しかし、過去をさかのぼれば、「元祖・高級ミニバン」と言える存在が、かつて日本に存在していた。それが、ホンダのラグレイトである。これは、「オデッセイ」として北米で売られていた上級ミニバンが日本でも発売されるようになったもので、そのままカナダの工場で製造される輸入モデルであった。
車名の由来は、感嘆詞の「LA(ラ)」と偉大なという意味の「GREAT(グレート)」をつなげた造語ということで、直訳すれば「なんと、素晴らしいクルマだ!」となる。見事なまでの自画自賛だが、この名前に相応しい実力を持ったクルマで、発売当時は高い評価を獲得していた。
この頃の日本市場といえば、初代オデッセイが乗用車的な乗り味を持つミニバンとして市井に受けいれられ、96年に発売された初代ステップワゴンとともに、ミニバンというジャンルが活発になりかけていた時期。特に低床、低重心のオデッセイは人気で、その北米版としてさらにゆとりのある室内空間を持つラグレイトには、ホンダとしても相当な期待を持っていたに違いない。
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