こんなクルマよく売ったな!!【愛すべき日本の珍車と珍技術】異業種合同プロジェクトで生まれたWiLL VS ステルス戦闘機を想わせる超個性派ハッチバック!

■見た目は個性重視でも走りは扱いやすい特性を重視

 エンジンは吸気バルブタイミングの連続可変に加え、吸・排気バルブのリフト量も制御するVVT Liを採用したBEAMS 2ZZ-GE型 エンジンと、低・中速域での扱いやすさとレスポンスのよさを両立したBEAMS 1ZZ-FE型エンジンをラインアップしていた。

 トランスミッションはいずれも高効率なスーパーフロートルクコンバーターを搭載した小型軽量なSuper ECTを組み合わせることで滑らかかつ応答性に優れた変速を実現。また、上位に位置付けられる2ZZ-GEエンジン搭載車は、ステアリングから手を離さずにシフト操作が可能なスポーツステアシフトマチックが採用されていた。

 サスペンションはフロントがジオメトリーの最適化を図ったレアームマクファーソンストラット式で、リアはトーコレクト機能付きトーションビームを備えたイータビーム式。スポーティな走りを想定してスプリング、アブソーバーおよびブッシュ類に専用チューニングが施していた。

 こうした作りがなされているなら見た目どおりスポーティに走れると思いきや、ルックスのわりにドライブフィーリングはいたって平凡。125~190PSの動力性能を発揮するパワーユニットや、専用チューニングされた足まわりの特性などが功を奏することなく、操縦性に機敏さは乏しく積極的に走りを楽しみたいユーザーにはいささか物足りなさを痛感させた。しかし、この緩さがいかにも“企画モノ”らしさを感じさせる「WiLL VS」ならではの特徴とも言える。

 走りが緩めとはいえ、安全性についてはクラストップレベルのパフォーマンスが与えられていた。高い水準の緊急回避運動性能を確保するとともにGOAボディを採用。ブレーキはフロントを大径ベンチレーテッドディスクとして優れた制動性能を確保したうえに、EBD(電子制動力配分制御)付きABSと、緊急制動時にブレーキの踏み込みが弱い場合に強い制動力が得られるブレーキアシストを全車に標準装備していた。

 現代のような運転支援機能は採用されていないが、運転席・助手席にプリテンショナー&フォースリミッター付シートベルトを備え、SRSエアバッグも装備。そのうえ40%ラップオフセット前面衝突試験を時速64km、フルラップ前面衝突試験および側面衝突試験を時速55kmで実施して進化させた衝突安全ボディGOAの採用は、万が一の状況に際してドライバーを含めた乗員に大きな安心感を提供し、ドライブを存分に楽しむことができた。

ステルス戦闘機をイメージしたスタイルは、「意志」や「未来」を表すWiLLのネーミングに合致したものと言える
ステルス戦闘機をイメージしたスタイルは、「意志」や「未来」を表すWiLLのネーミングに合致したものと言える

 2002年1月には1.5Lエンジン搭載車や6速MT車を追加。さらに、「レッドスペシャル」や「ホワイトスペシャル」といった特別仕様車をインターネット限定でリリースするなど、意欲的な販売を展開していた。その甲斐あって、企画モノのわりに2001年から2004年の3年間での総登録台数は1万4950台と意外にも多い。

 WiLL VSが技術や機能でその後の自動車界に影響を与えることはなかったかもしれないが、「ステルス戦闘機」を標榜したスタイリングだけでも後世に語り継がれているというのは、企画モノとしての面目躍如なのではないだろうか。

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