■BMWとはいかないものの、かなりいいセンだと思う
圧倒的な加速感はさすがにないものの、このクラスのクルマの加速としてはいいと思う。5気筒エンジンをVW=アウディが作りはじめてからもうずいぶんになる。それはよくできたストレート6よりはスムーズネスの点で一歩譲るけれど、普通のストレート6並みになった。
初期に見られた固有振動もほとんどなくなり、快適な金属音を残して高回転に達する。1.8L、4気筒は相当活発でスムーズだが、こと高級感となると5気筒の方に分があるだろう。
ただ、日本の厳しいエミッションコントロールのため、高回転域ではややつらく、あまり引っ張っても意味はない。高速道路のクルージングで見せる5気筒の味は率直にいってBMWとはいかないものの、かなりいいセンだと思う。
また、3速オートマチックについてはこれもスムーズな作動であり、パートスロットルでもシフトダウンするヨーロッパタイプだが、もし私がVWサンタナを選ぶとしたら5速マニュアルにするだろう。
■ハンドリングはなかなかのものだ
VWサンタナの持ち味はそのハンドリングにある。パワーステアリングは適度の重さを持っているし、剛性感も充分である。テストの当日は横風が強く吹いていたが、その中をVWサンタナは相当なスピードで走ったのである。
直進性のよさという点では西ドイツ車はそれが本当に必要なものだけに充分に煮つめられている。風ばかりではなくて路面の荒れによる直進性の乱れについても、相当の高速においてステアリングでごく簡単に修正できる。
VWサンタナは、もし許されるならば150〜160km/hを保ってクルージングするクルマである。最近のVW・アウディのハンドリングの味つけは、 一段とリアの剛性が高くなり、どんなことをしてもリアがテールアウトの姿勢をとらない。
むろん、この方が安全なのであり、このやり方に私は大賛成であるが、VWサンタナもその例にもれない。VWサンタナのリアサスペンションは、トーションピームとトレーリングアームを組み合わせた半独立だ。
そして、日産製VWサンタナの一番のポイントはこのサスペンションのチューニングを可能なかぎり本国版に近づけたことにある。
私はVWサンタナのハンドリングをこれ以上語らない。というのは、このクルマは大人のクルマであり、充分安心できる高速の直進性を持ち、コーナリングにおいては味を感じさせるということだけで充分だと思うから。
乗り心地は低速ではやや硬いが、60〜70㎞/h以上になると驚くほどいい乗り心地を示す。高速で道路の継ぎ目を拾っても硬いショックはなく、また道路が荒れていてもクルマはいつも水平に保たれる。このクラスの国産車でこれほどの乗り心地を示すクルマが他にあるだろうか。
ただ、ロードノイズはやや高く、風切り音もけっして小さくはなかった。
■どんなユーザーに好まれるクルマか
VWサンタナはメーカーの日産が表明しているように″まるで輸入したかのように″忠実に作られている。このクルマを買う層がどんな人たちか私は大いに興味深い。
今、考えつくのはもっともオーソドックスに西ドイツ車が好きで、VWゴルフに乗っているようなユーザーではないだろうか。
ドライブフィールで西ドイツ車が好きという人にはもうピッタリである。VWサンタナが1/2以上外国車なのに、それでいながら身近な日産のサービスを受けられていると考えられているユーザー。
私はこのタイプのユーザーにVWサンタナを選んでもらいたいと思う。国産車はよくできているけれど“なにか物足りない”と思っている人、こんな人はVWサンタナの“走り優先”(けっして0~400m○○秒という走りではなくて)の思想に共感すると思う。
日本の歌謡曲調高級車に乗っている人には、このクルマは向いていないと思う。彼らにとってVWサンタナの乗り心地は固いし、少しばかり音も高いし、第一アクセサリーが少ない(実は十分なのだが)。
とにかくVWサンタナの走りのフィーリングを好んでいる。この種のクルマを愛用するユーザーが増えることは国産車全メーカーに少なからぬショックを与えることになると思う。
VWサンタナは、数の上では世界一を標榜する日本の自動車界に一種のカルチャーショックを与えるかもしれないと密かに思っているのだが、はたしてどうだろうか?
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