こんなクルマよく売ったな!! 【愛すべき日本の珍車と珍技術】「クルマ社会の次の100年」の扉を開いた小さな先駆車三菱i-MiEV

■現在大人気の軽自動車EVが支持される礎を作った

 デビュー当初は、法人および自治体への販売から始まり、個人向けの販売は2010年4月から開始される。法人向けは459万9000円だったが、個人向けの価格はそれよりも61万9000円安い398万円に設定された。

 軽自動車で300万円オーバーというのは最新鋭の技術を数多く採用したEVということを差し引いでもかなり高額だ。

 しかし、経済産業省が実施していたクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金(114万円)を活用すると、実質負担額は284万円に収まった。なおかつ環境対応車普及促進税制に基づき、購入時の自動車取得税と自動車重量税も免税だった。

荷室スペースは可倒式シートによって用途に応じたアレンジが可能。テールゲート内側のトリムには、竹繊維とPBS(ポリブチレンサクシネート)を組み合わせた内装材を使用するなど、EVらしく環境に配慮した作りがなされている
荷室スペースは可倒式シートによって用途に応じたアレンジが可能。テールゲート内側のトリムには、竹繊維とPBS(ポリブチレンサクシネート)を組み合わせた内装材を使用するなど、EVらしく環境に配慮した作りがなされている

 2009年に登場し、2021年に生産終了となるまで、何度か改良が実施され、性能のアップデートやグレードの追加、安全性の向上など着実に進化を続ける。2018年に実施された一部改良では、フロントバンパーとリアバンパーの造形が変更され、低重心で安定感のあるスポーティなスタイリングが強調された。

 この変更はデザインのテコ入れだけでなく、道路運送車両の保安基準の改正に伴う対歩行者安全強化のためでもあり、バンパーの形状変更によって全長が85mm拡大されて3480mmとなった。このためi-MiEVは軽自動車から登録車に変更されてしまう。前代未聞の変更だったが、登場から9年を経て、すでに市場での存在感が希薄になっていたことから販売にはさしたる影響はなかった。

 それでもEVの普及促進を図るために車両価格を294万8400円に引き下げ、デザインに手を加え、機能も新たに追加し、グレード展開の見直しを行うなど、量産EVの先駆車は、最後まで進化・熟成を重ね、ユーザーに向けた訴求を続けていた。

 ハイブリッドカーが一般的な選択肢として販売台数を伸ばし、ガソリン、ディーゼル車もクリーンであることが必須となった時代だからこそ、i-MiEVの登場はそれなりにインパクトがあった。

 インフラが整っていなかったことや、環境車に対してユーザーの意識がまだ未成熟だったことはi-MiEVにとって少しだけ不利だったかもしれないが、eKクロスEVやサクラが売れた今なら、もっと脚光を浴びたかもしれない。

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