そしてSS9で「悪夢」は起きた
中間のテクニカルセクションを過ぎてそれまでは至って普通に、それまでのステージと同様に進んでいました。そして6km付近の中速ブラインドの右コーナー。そのコーナーの500m手前からはほぼ全開の高速セクションが続き、緩い左の高速コーナーでブレーキングをしながらアプローチしなければいけないコーナーでした。
手前の高速左コーナーでペースノート通りに減速し、中速ブラインドに侵入し、クリッピングからアクセルを踏んですぐ、クラッシュしたクルーが減速させている姿を確認。OKとSOSは確認できなかったので、まだクラッシュして間もないかもしれないかもしれないからこの先は更にスピードを落とそうと思った刹那、まさかそのコーナの出口でラインを塞いでいるマシンを目視で確認しました。
「なんでこのクルーはクラッシュしている車両のすぐ横で減速アピールしてるんだ?!! 減速が間に合わない!!」
その段階でクラッシュ車両に正面衝突するか、ハンドルを左に切って崖から落ちることしか選択肢として残っていませんでした。三角停止板もOKもSOSが目視できなかった段階で無意識にハンドルを崖に切っている自分がいて、気づいた時には崖からゆっくり落ちている自分が超スローモーションに感じました。
クラッシュ車両が既にガードレールを根こそぎ破壊していたせいで、ガードレールに衝撃を吸収されることもなく先ず8メートル下の枝道にルーフから落下し自分側のピラーから下のアスファルトに9Gで叩きつけられ、そのまま回転し、更に崖下に70メートルほど落下しました。急斜面を転がっていたので、目を瞑ってただひたすらマシンが止まるのを祈っていました。
生死を分けたわずかな時間
事故直後は脳震盪状態で全然何が何だか分からずに、とりあえず助けに来てくれた観客の声だけが朧げに聞こえているだけでした。急斜面で止まっていたので、車両がこれ以上落ちないようにブレーキを無意識で踏んでいました。
外に出ようにも先ずはコドライバー保井さんが無事なことを確認しないといけないと思い、お互いに大丈夫かと先ずは怪我がないか確認し合い、お互い怪我がなくてホッと胸を撫で下ろしました。
とりあえずは保井さんが先にマシンから脱出して、次に自分が脱出しようと思っていたのですが、コドライバー側のドアが開かずに自分のドライバー側から2人とも脱出しました。
傾斜が急すぎて観客に手を差し伸べてもらいながら何とか上の枝道に上がりました。
ドラ、コドラが上に避難したと同時にまた車両は落下し始めて更に谷底へ落ちていき、もし車両の脱出がもう少し遅れていたら取り返しのない怪我をしていたかもしれません。
名状しがたい感情、それでも新井選手は前を向いて進んで行く
30分ぐらいとりあえず冷静になってから現状を整理して、何で減速アピールしている奴がマシンの横に立っているのか、なぜガードレールが無くなっているのに競技続行をしているのか、言葉に出来ない感情が込み上げてくるものがありましたが、色々考えてもこの状況を回避するのは不可能だと感じました。
常に自分の判断や状況、結果に対しては責任を持って対応する覚悟は持っています。シュコダ R5は言うまでもなくグチャグチャになってしまい、車両保険で直すのですがそれでも免責で500万以上の支払い義務が生じます。だから今回のように大きなクラッシュをしたらもう先に進めないということも自分自身が1番良く分かっていました。
だからプライベーターでラリーを続けようと決めた時から自分のミスでクラッシュするのは無くすように6年以上努力をしてきたのですが、今回のように未熟なドライバー達に巻き込まれて戦線を離脱してしまったのは無念で無念で仕方ありません。
どのような形で今後ラリーを続けていけるか分かりませんが、応援していただいたファンやスポンサーの皆様と一緒に頑張っていきたいと思っています。
プライベーターで海外参戦するのは円安の昨今は本当に辛いことばかりですが、とりあえず今年は自分の所有している車を売ってでもお金は工面してみようと考えています。せめて1ユーロ160円ぐらいに戻ってくれた少し楽になるのですけどね。
間髪入れずに今週末からの全日本ラリー選手権のラリーカムイへ戻ります。今回起こってしまったことは教訓にしてしっかりとラリーカムイへ繋げます! ありがとうございました!
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