タイのバンコクモーターショーが2024年3月27日に開幕した。BYDなど中国勢が圧倒的な勢いで進出しているなか、日本勢はハイブリッドに活路を見出せるか? バンコク現地から国沢光宏氏がレポートする!
文、写真/国沢光宏
■中国勢が圧倒的なスペースを占めるバンコクモーターショー
いつもなら一般メディアに紹介されることなどないバンコクショーながら、今年はTVを始めけっこうな露出度になっている。なぜかといえば、中国勢の猛攻が始まったからだ。
ご存じのとおり、タイといえば東南アジア随一の親日本国として知られており、日本車のシェアはインドネシアとともに高い。日本の自動車工場も多数あり、「東洋のデトロイト」とも呼ばれるほど。
そんなタイで開催されるバンコクモーターショーは、今まで日本車を中心に欧米のメーカーがブースを出し、その場でクルマを販売する大規模な展示商談会といったイメージだった。
しかし! 今回はまだクルマを販売していない中国勢が大挙来襲! ググッと広くなった会場の半分近くは中国の自動車メーカーという状況になっている。
■中国勢でホントに恐ろしいのはPHEVだ!
中国、タイを始めとした東南アジアに出てきましたね! 驚くべきは出展されているクルマの完成度。中国のモーターショーに行くと、文字どおり玉石混交。なんせ100以上の自動車メーカーが乱立している。
時間をかけてジックリ見ようものなら、何日あっても足りない。しかも90%は宝石じゃなくて石で、動かないクルマすら珍しくないほど。一方、タイのモーターショーに出てきた中国勢は、中国政府が「海外で戦える」というお墨付きを出した。
中国選抜企業と言い換えてもいい。BYDやGWM(長城汽車)、MGを始め、出展しているメーカーのクルマを見ると、すべて国際基準に達している。というか電気自動車であれば電池性能はもう圧倒的!
グリルレスのデザインは中国が一歩先を進んでいるし、インテリアだって存分にお金をかけている。中国の自動車メーカーのブースに並んでいるクルマ、みんなキラキラ輝いている感じ。
加えて電気自動車だけなら驚異でもない。タイの電気自動車販売は2023年から急速に伸びたものの、充電インフラなど整っておらず。お金持ちのセカンドカーとして売れただけで、もはや伸び悩んでしまっている。
怖いのはPHVです。ここにきてPHVは中国のキラーコンテンツになってきた。大得意の電気自動車にエンジン+発電機を搭載すればいいから、変速機など複雑なメカニズムは不要。
しかも純エンジン車やハイブリッド車だと燃費を稼ぐためエンジンの熱効率が重要になってくる。されど日常の移動距離くらいなら電気で走れるPHVは、多少燃費の悪いエンジンだって問題なし。
タイもガソリンがリッター160円するのに対し、電気は日本より安い。PHVの価格が日本車のハイブリッド車レベルまで値下がりしてくれば、キラキラ光る中国車にシェアを奪われると思う。
実際、中国国内では2024年に入ってBYDなど中国勢のPHVが大幅値下げを行い、日本勢のハイブリッド車と同じレベルになった。PHVとハイブリッドが同じ価格になれば厳しい。
同じことがタイなど日本車のシェアが多い新興国で始まると、いろいろな意味で厳しい戦いになるだろう。皆さん「中国車=電気自動車」だと思っているようだけれど、恐ろしいのはPHVです。
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