猛吹雪の時は?
どんなに冬道に慣れたドライバーたちでも、絶対に普通の速度を出せないのが猛吹雪の時です。
しかし経験を積んでいる人は見えなくなるのは数秒だと知っていますから、それまで見ていた記憶を頼りに、ゆっくりと走り続けます。決して止まりません。
ご想像の通り、後続車の追突を避けるためです。
初心者は前が見えなくなると一瞬でパニックを起こし、急ブレーキを踏みます。そのまま止まれたならまだ幸いで、凍結路はつねに平らだとは限りませんから、轍があれば確実にスピンします。
その結果クルマが真横になって止まってしまえば、後続車はライトもテールランプも視認できずに、追突は避けられません。こればかりは経験を積んでもらうしかないのです。
凍結路のエキスパートは、追突を避けるため以外では、どんな状況下でもパニックブレーキを踏みません。
ところで、私は趣味で山に登ります(若い頃は無知の勢いで何度もビバークを経験しました)。山を知る人は、北海道の山では本州プラス1000mの標高気象を想定します。つまり、北海道の冬は本州の山間部の気候だと言うことでしょう。
酷い雪の吹き溜まりで立ち往生し、クルマの中で窒息死する事故が過去に何度もありました。一番寒い二月にはクルマのヒーターが効かず凍死する可能性もあります。
古いトラックで真冬の北海道に来られる方は、氷点下対応のシュラフ、スコップ、60km/hの速度で長時間走行できる特殊鋼のチェーンを装備してください。
あとは2~3日分の食料と飲料水、携帯トイレも忘れずに。運が悪ければ大雪に見舞われ、交差点の真ん中で除雪車の助けを待つことになります。大抵は遅くとも3日以内に助けが来ますから、安心してください(笑)。
氷点下の秘密
最後に、恐らく北海道でしか体験できない氷点下の秘密をお伝えしておきます。
一月から二月、札幌より東北方面、つまり道北や道東方面へ向かう時なら、終日氷点下15度以下になる日が多く、時には氷点下25度から34度くらいまで気温が下がります。
そして快晴なら、穴だらけのシートでも荷物が濡れないんですよ。空気中の水分がすべて凍結していますから、水濡れ厳禁の荷物も大丈夫です。
さらに北海道のトラックドライバーなら口を揃えて言うと思いますが、氷点下20度以下では例え路面が凍結していても不思議なくらい滑りません。
夏のアスファルトとまったく同じとまではいいませんが、ほぼアスファルトと同じくらい滑りません。北海道の方言で言う「縛れ乾き」(しばれがわき)の状態なので、氷の上でも滑りません。チャンスがあれば体験して下さい。
冬のドライブは危険ばかりではありません。極寒の地でしか体験できない素敵なこともたくさんあります。
空気中の水分が凍ってキラキラと光るダイヤモンドダスト。濡れたタオルを振り回すと棒になる凍結現象。深い雪に音が吸収される無音現象。氷点下の真夜中は別世界です。タイミングに恵まれたなら、そんな体験をお土産にして、生きて帰って欲しいです。
凍結路のドライブを楽しいと感じられるようになったなら、あなたも立派な北海道人です。過酷な自然には、言葉にはできない魅力があります!
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