バーストの威力
セパレーションが起きたタイヤは時間の問題でバーストに至ります。
タイヤの一部が膨らんでいる、或いは変形しているのが目視できた場合は、バーストまでの経緯がゆっくり進行している感じです。ただ、点検時には異常が無く急にバーストする場合も原因はほぼ同じです。
トラックのタイヤに充填する空気圧はかなり高圧です。高圧にする理由は耐荷重を上げるため。空気入りタイヤは空気の圧力で荷重を支えると同時に、タイヤ自身も保護しております。
タイヤの構造はこの高圧に耐えられるように設計・製造されており、タイヤ毎に規定圧があります。空気圧によって荷重を支え、その空気圧を充填・保持することができるというのが正常なタイヤの構造なワケですね。
従って何らかの理由により低内圧になったり、タイヤの内部構造に致命傷なダメージが与えられた場合は、充填している空気圧にタイヤ自身の構造が負け、バーストしてしまいます。
ここでよくある疑問は、「内圧が低いとバーストするのか?」「低内圧でバーストしてもそんなに威力があるのか?」です。
例えば規定圧900kPaのタイヤを300kPaで使用すれば、いずれ低内圧でバーストしてしまいます。
ちなみに現在の内圧表記の単位はkPa(キロパスカル)ですが、以前はキロ(kg/cm2)表記でした。300kPaは約3.05キロです。つまり、1平方cm当たりに3kgくらいの力が掛かってるということですね。
タイヤ内面の表面積の計算は割愛しますが、大型トラック用の11R22.5サイズだと、1万9865平方cmとなります。このサイズの規定の充填圧が800kPa(約8.15キロ)とすると、タイヤ内面に掛かる総圧力は 8.15 kg/cm * 19865 cm = 161899.75 kg となります。
つまりこのタイヤの内側には規定で約162トンもの力がかかっています。同じように計算すれば低内圧の300kPaだとしても、60トン以上だとわかります。タイヤにとっては「低内圧」とはいえ、人間にとっては高圧です。
もしバーストして、爆風がヒトを直撃したら……。その威力は、あまり想像したくありません。大事に至る前に点検をお願い致します。
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