一口にトラックといっても、業種・業態によって仕事の内容は千差万別。特に専門輸送の仕事は、輸送に携わるドライバーしか知らない、さまざまな仕事の流れがあります。
業種別にトラックドライバーのリアルな一日を追う本編ですが、今回は、専門輸送の雄・セメントバルク車を取り上げます。
北海道でセメントバルクトレーラを運転するベテランドライバーのかんちゃんに、その詳細を綴ってもらいました。
文・写真/ベテランドライバーかんちゃん
*2013年2月発行トラックマガジン「フルロード」第8号より
バルク車ってどんなクルマ?
バルク車とは、粉粒体(粉や粒の集まった物)の運搬に使用される特殊なトラックの一種で、正式には粉粒体運搬車と言います。大きく分けると、次の3つのタイプにわかれるかと思います。
1つ目は、飼料系を運ぶクルマで、スクリューコンベアー(ボトムスクリュー・バーチカルスクリュー・デスチャージスクリュー)で粉粒体を移動させるタイプ。
2つ目は、比較的水分の少ない粉粒体を運ぶエアスライド式のクルマで、タンク下部のキャンバスよりエアを噴出し、粉粒体と混合。流動化させることによってバルブから排出(圧送)し粉粒体を移動させるタイプ。
3つ目は、こちらも比較的水分の少ない粉粒体を運ぶのですが、粉粒体の入っているタンク部分をダンプアップさせてエアと重力で粉粒体を移動させるタイプ。
粉粒体輸送には、そのほかにも特殊な粉粒体1種類しか運べないタイプもあり、細かく分けると数えきれないくらいあるので、ここでは私が携わっているセメント輸送に特化してご説明いたします。
バラセメントを運ぶセメントバルク車
私がセメント輸送に携わってもう24年になります。この間にセメント輸送の変化はさほどなく、強いていえば車両の大型化(トレーラ&増トン単車)と、積載量のコンプライアンス重視および運行管理(お昼休み・430休憩・運行時間の制限)くらいですね。
セメント輸送も所属する会社によって輸送形態が変わってきます。セメントメーカー側(セメントを売る側)に所属している会社の運転手ですと、そのメーカーの代理店が契約しているすべての工場と現場に配達しなければいけません。
このすべての工場&現場っていうのが物凄い数なんですね。すべての納品場所や荷降ろし形態をしっかりと把握していなければなりませんし、トラックの停める方向ですとか進入場所などなど、細かいことなのですが守らないと工場&現場での業務に支障が出ます。
いっぽう、私の所属する会社はセメントを買う側で、自社の生コンプラント工場が3カ所あります。輸送形態は、配達ではなく引き取りです。ほとんどの輸送が自社工場のセメントを引き取りにセメントSS工場(セメント堆積工場)に行きます。
そのほか、私の所属している会社はセメント代理店も行なっているので、自社以外の清掃工場や二次製品工場にも納品しています。納品場所が限られていますので、比較的落ち着いて作業できます。
誤納と「大噴火」には注意が必要
業務で一番に気を付けなければならないことは「誤納」です。セメントにも種類があり、大きく分けて3種類のセメント(普通ポルトランドセメント・高炉セメント・早強ポルトランドセメント)あります。
セメントサイロ1本に対して1種類の場合はあまり間違えないのですが、サイロによっては内部が二層三層になっていて、デリバリーホースの接続口が2つ3つあるサイロなどではごく稀に誤納が発生する場合があります。
次に気を付けなければならないのは「大噴火」です。荷物を降ろすセメントサイロが満杯になっても気が付かずに入れ続けると、サイロ上部のバックフィルターが飛んで「大噴火」してしまう事故です。
一応セメントサイロには満量警報機なるものがあるのですが、工場によっては工場の電源と一括しているので、工場の電源が入ってないと満量警報器の電源も入らないところがあります。
日中の荷降ろしだと問題ないのですが、配達の都合で夜中に降ろすことも多々あります。大抵、業務が終わると工場側は電源を落としますので、夜中に配達する時は本当に緊張します。
また古い工場ですと、そもそも満量警報機など付いていません。ちなみに「大噴火」すると、工場の周りはすべてセメントだらけ! もちろん本人もセメントだらけ!
工場側も運転手に対して言いたいことはたくさんあるはずなのですが、あまりにも悲惨な運転手の姿に気をつかってしまう状態になります。(後編に続く)
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