売れているクルマがあれば、売れてないクルマもある。ただ古くからのクルマ好きにとっては、売れないクルマのなかに「かつて売れていたクルマ」を見つけて切なくなることがある。
いまは販売店のお荷物になっているようなこのモデル、かつてはみんなが憧れた大人気車種だったのに……。本企画ではそんな、現行型は「不人気車」と呼ばれて日陰の存在ではあるが、かつて一世を風靡したモデルたちを紹介したい。
いずれのモデルも現在は月販三桁台、苦戦を強いられております。若い方はご存じないかもしれませんが、いずれのモデルも「黄金時代」があって、それはそれは、大変な騒がれようだったのです!
文:片岡英明
■日産シーマ(初代)
5ナンバー枠の小型車が常識だった1980年代に「ビッグカー」の時代を築いたフルサイズのプレミアムセダンがシーマである。1987年秋の東京モーターショーで鮮烈なデビューを飾り、88年1月に正式発売に移された。セドリックとグロリアの上に君臨し、エンジンはパワフルな3ℓのV型6気筒DOHCハイフローセラミックターボが主役だ。初代モデルの走りは鮮烈だった。グッと腰を落とし、ノーズを上げて豪快な加速を見せつけている。
初代モデルは91年までに13万台に迫る販売を記録し、シーマ現象を巻き起こした。2台目はV型8気筒エンジンになり、豪華さを前面に押し出している。96年に3代目、2001年に4代目が登場。2年近いブランクの後、ハイブリッド専用モデルとなった5代目(現行型)シーマが誕生した。が、2代目以降のシーマに、初代のような豪快さはなかった。
黄金時代を挙げるというなら、やはり初代。あの頃のシーマは豪速球でライバルたちをのけぞらせ、海外の名門プレミアムカーにも衝撃を与えている。
■日産スカイライン(8代目)
スカイラインはスポーツセダンの代名詞であり、日本の風土が生み出した名車だ。誕生したのは1957年4月だから、60年以上の歴史を誇る。スポーツセダンとして認められるのは2代目からで、これ以降、GTは直列6気筒エンジンを搭載した。が、11代目からとなる21世紀のスカイラインは、パワートレインをV型6気筒エンジンとし、長いことターボパワーも封じている。当然、刺激性は薄れ、マイルドな印象を受けるようになった。
当然、スカイラインの黄金時代は音色もいいストレート6を積んでいた時代だ。名車が多いから1台に絞るのは難しい。販売面では4代目のケンとメリーや5代目のジャパンが名車となる。人気度と熱狂的なファンが多いのは3代目のハコスカと8代目のR32だ。どちらも時代の先端を行くダイナミックな走りを見せつけた。ジャパン以降、スカイラインは販売が落ち込んでいる。これに歯止めをかけたR32は稀代の名車と言えるだろう。キュートで、走りの実力も飛び抜けて高かった。
■ホンダオデッセイ(初代)
オデッセイは、今につながるミニバンブームの火付け役となったマルチパーパスカーである。デビューしたのは1994年秋だ。ホンダはミニバンという言葉を嫌い、クリエイティブムーバー(生活創造車)と名付けて販売を開始した。当時のミニバンは商用車ベースだったが、オデッセイはアコードをベースにしている。他のミニバンより背が低く、後席用のドアもヒンジ式だ。また、7人乗り仕様のほか、パーソナルジェットをイメージした快適な6人乗り仕様も設定している。
ホンダの首脳陣は、このオデッセイは売れないと思ったようだ。が、瞬く間に3ナンバー車のベストセラーとなり、経営が悪化していたホンダの救世主となる。が、守りに入った2代目は販売が伸び悩んだ。スポーツ方向に降った3代目が盛り返すも、4代目がまたもや失速。今はライバルと同様に、スライドドアを採用し、ハイブリッド車も送り出した。が、ファミリー族に衝撃を与えた初代オデッセイほどの魅力は持ち合わせていない。
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