2024年10月30日、スズキとトヨタは、スズキが開発したBEVをトヨタにOEM供給することを発表した。SUVタイプのBEVとのことで、直後にスズキがイタリア・ミラノで初公開したBEV「e VITARA(eビターラ)」であることは間違いない。日本でも販売されるというeビターラの詳細をご紹介しよう。
文:吉川賢一/写真:SUZUKI
【画像ギャラリー】トヨタにOEM供給される、スズキ初の新型BEV 「eビターラ」(7枚)画像ギャラリー日本にも導入予定あり!!
11月8日に発表した、2025年3月期通期の業績予想において、営業利益は700億円増の5500億円、当期純利益は400億円増の3500億円へと上方修正するなど、業績好調なスズキ。主力のインド市場を中心に、高収益車種の販売台数が増えたことが利益に貢献しているという。鈴木俊宏社長は「現地ニーズを吸い上げて地に足を付けて売る努力を続ける」としており、これまでの堅実な努力が実り、結果に表れているようだ。
その好調なインド市場で、スズキが販売しているミドルクラスSUVに「グランドビターラ」というモデルがある。かつて日本でも販売されていた「エスクード」の後継車であり、現行モデルは2022年デビューの3代目だ。トヨタとの協業で生まれたモデルで、1.5Lエンジンのマイルドハイブリッド車(6速ATと5速MT)と、1.5Lエンジン+モーターのトヨタ製THS-IIを搭載したストロングハイブリッド車が用意されている。
その他にも、スズキはインドで、最近日本デビューした小型SUVのフロンクス、3列シートSUVのXL6、コンパクトセダンのバレノ、ラージSUVのインヴィクトなどをラインアップしているが、そこに冒頭で紹介した「eビターラ」が加わることになる。ガソリン車から強・弱のハイブリッド車、そしてBEVと、宣言通りのマルチパスウェイ戦略だ。
eビターラは、2025年春からインドで生産開始予定とのこと。2025年夏頃から欧州とインドに加えて、なんと日本でも販売を開始する。生産領域やOEM相互供給、電動車の普及など、スズキとトヨタは広い分野で協業をしており、BEVユニットとプラットフォームは、スズキ、トヨタ、ダイハツの3社が、それぞれの強みを活かして共同開発したそうだ。
ヤリスクロスよりもやや大きく、安心・安全を追求したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用
eビターラは、全長4,275mm、全幅1,800mm、全高1,635mm、ホイールベース2,700mmのミドルクラスクロスオーバーSUVと発表されている。ヤリスクロス(全長4,200mm)よりもやや長く、カローラクロス(4,490mm)よりもやや短いというサイズ感だ。ホイールベースはカローラクロス(2,640mm)よりも長いが、回転半径は同じ5.2mと、BEV専用プラットフォームとあって、小回り性能に優れている。
駆動用バッテリーには、中韓系のリチウムイオンではなく、安心・安全を追求したリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを採用。容量は49kWhと61kWhの2つがあり、FFモデルと4WDモデルが設定される。61kWhの4WDモデルは、モーターとインバーターを一体化した、高効率のe-AXLEを前後独立で2基備えており、最高出力は135kW(フロント128kW、リア48kW)、合計最大トルクは300Nmというスペックだ。この電動4WDは「ALLGRIP-e」といい、BEV専用の新プラットフォームは「HEARTECT-e」と呼んでいることからも、スズキ独自の技術ということがわかる。
もちろんトヨタ単独でも、eビターラのような小型BEVを開発することは可能だろうが、小型車の廉価開発に長けたスズキに主導権を握らせることで(要所はトヨタ側も加わって)、トヨタは良質な小型BEVのOEM供給を受けることができ、スズキとしても、トヨタが扱っている電動化技術やバッテリーやeAXLEをはじめとした部品が利用できる。インド工場生産なので地理的に近い欧州市場へ輸送・販売することも可能だ。競争相手ながら、双方のメリットが重なったことでベストなソリューションとなったのだろう。
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