メグロS1は空冷シングル的ドコドコ感と、磨いて楽しい質感が魅力! 昭和レトロな新型モデルに試乗

メグロS1は空冷シングル的ドコドコ感と、磨いて楽しい質感が魅力! 昭和レトロな新型モデルに試乗

バイクの楽しみ方にもいろいろありますが、乗って良し、眺めるのも楽しいのがカワサキの新型ネオクラシック「メグロS1」です。その走りは、232cc・空冷シングルならではの排気サウンドや鼓動感により、休日にのんびりとツーリングを楽しむのに最適。また、カワサキの伝統を受け継ぐ「メグロ」ブランドの最新作らしく、燃料タンクやマフラーなど各部に質感の高いパーツを採用。まめに洗車して、磨き上げて悦に入るのも楽しいモデルです。
そんな新型メグロS1について、メディア向け試乗会に参加し、実際に現車を確認し、乗り味を試してみたので、その印象をお届けしましょう。

 
文/平塚直樹
 

メグロS1の歴史的背景とW230との関係

 試乗記をお届けする前に、ちょっとだけカワサキの「メグロ」ブランドについておさらいしてみましょう。

 

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232cc・空冷シングルを搭載するメグロS1

 

 カワサキのメグロは、かつて存在した2輪車メーカー「目黒製作所」の名称を受け継ぐ伝統のブランドです。その最新モデルとして2024年11月20日に発売されたのが、232cc・空冷単気筒エンジンを搭載するメグロS1です。

 目黒製作所は、1924年に創業。第2次世界大戦前から戦後直後にかけて、数多くの高性能モデルをリリースし、一斉を風靡した企業です。とくに500ccや650ccなどの大排気量モデルに定評があったのですが、1950年代後半以降、小排気量モデルの人気上昇に対応できず、業績が悪化。1964年にはカワサキ(当時の川崎航空機工業)に吸収合併されたのです。

 そして、目黒製作所の創業から100周年を迎える2024年に発売されたのがメグロS1です。このモデルは、合併後の1964年に発売された「250メグロSG」をオマージュしたバイク。カワサキも、「正統な後継車」と発表していますから、まさに昭和のモデルを復刻させた最新のオートバイがメグロS1だといえます。

 

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1964年に発売された250メグロSG

 

 ちなみに、カワサキは、従来、773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「メグロK3」を販売しているのはご存じの通り。そのため、メグロS1は、その弟分で、メグロ・シリーズに属する軽二輪タイプということになります。

 

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メグロK3

 

 また、カワサキでは、メグロS1の兄弟車として、同じ車体やエンジンを搭載した「W230」も同時発売。こちらは、カワサキが1966年に発売した「650-W1」、通称「W1(ダブワン)」の車名を冠したモデルとなります。

 

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メグロS1の兄弟車となるW230

 

 

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650-W1、通称「W1(ダブワン)」

 

 624cc・並列2気筒、バーチカルツインの愛称を持つエンジンを搭載したW1は、当時のバイクとしてはかなり高性能だったことで、世界的に大ヒットを記録。「大排気量の高性能モデル」という、のちに続くカワサキ製オートバイのイメージを生み出した名車だといえます。

 そして、W1は、前述した目黒製作所との合併後、1965年に発売した「500メグロK2」がベースといわれています。つまり、カワサキ「W伝説」誕生のきっかけとなったのが、メグロというブランドといっても過言じゃないのです。

 なお、Wシリーズにも、従来、メグロK3と同じ773cc・空冷2気筒エンジンを搭載する「W800」をラインアップ。W230は、その弟分となる軽二輪タイプという位置付けとなります。

 

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W800

 

 
 
 

ひとクラス上の存在感を持つスタイル

 前置きがやや長くなりましたが、実際に実車を見たり、乗ってみた感想を紹介しましょう。

 全体的なスタイルは、まさに「昭和レトロ」を体現しているようなフォルムが一際目を惹きます。そのクラシカルな雰囲気は、とても令和の最新モデルとは思えないほどです。また、232cc・空冷単気筒を搭載する軽二輪モデルながら、ぱっと見た印象は、400ccなどひとクラス上の車格に見えるほどの存在感を持ちます。

 実際のボディサイズは、全長2125mm×全幅800mm×全高1090mmですから、例えば、兄貴分のメグロK3(全長2190mm×全幅925mm×全高1130mm)と比べると、一回り以上コンパクトなんですけどね。

 

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ひとクラス上の存在感を持つメグロS1

 

 また、各部の質感も、決して兄貴分のメグロK3に負けていません。メグロS1では、丸目1灯ヘッドライト、スチール製のフロントフェンダー、前後スポークホイール、ステンレス製のキャプトン風マフラーなど、兄弟車のW230と共通のパーツも多く採用しています。

 ですが、一方で、例えば、メグロS1の燃料タンクには、クロームメッキとブラックのツートンカラーに、「MEGURO」の車名ロゴを入れたオリジナルの立体エンブレムも装備します。

 

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メグロS1の燃料タンク

 

 また、エンジンの空冷フィンにも切削加工を施すことで、光が当たると輝く工夫も実施。加えて、サイドカバーや2連メーター内などには、レトロなカタカナ書体の「メグロ」ロゴも入れるなど、各部に質感を高める数多くのギミックが入っています。

 

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フィンの外側部分に切削加工も施したメグロS1のエンジン

 

 これらにより、W230とは異なるビンテージ風味や、ワイルドな雰囲気などを演出。その分、価格(税込み)も、W230が64万3500円なのに対し、メグロS1は72万500円。7万7000円高い設定になっているのですが、実際に現車のクオリティを見れば、そうした差額は納得といえますね。

 ちなみに、今回はW230も現車を確認したり、試乗もやりました。こちらの印象は、パールアイボリー×エボニーやメタリックオーシャンブルー×エボニーという、ちょっとお洒落なボディカラーを採用していることもあり、よりフレンドリーな印象でしたね。

 特に、車体の色調は、女性ライダーにも人気が出そうな印象で、かつての名車「エストレア」を彷彿とさせます。よりリーズナブルな価格設定もあり、こちらはさらに幅広いユーザー層から支持を受けそうですね。

 

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スタイリッシュなボディカラーなどで、W230は女性ライダーにも人気が出そうな印象

 

ポジションは自由度が高く、足着き性も抜群

 ライディングポジションは、ワイドだけれど絶妙な幅のバーハンドルなどにより、上体があまり前傾せず、自然な姿勢で乗ることができます。また、前後に長いシートは、着座位置に自由度があり、筆者のような小柄なライダーから身長が高い人まで、幅広いライダーが窮屈にならずに好みのポジションを取れるといえるでしょう。

 

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ライディングポジションは、上体があまり前傾せず、自然な姿勢で乗ることができる

 

 また、足着き性は、身長164cmの筆者でも、片足・両足共にカカトまでベッタリと地面に着きます。このあたりは、740mmという低いシート高が効果を発揮していますね。ちなみに、兄弟車W230のシート高は745mmとやや高いですが、筆者の体格であれば、さほど差を感じないほどのレベルです。

 

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シートにまたがってみると、身長164cmの筆者でも、片足・両足共にカカトまでベッタリと地面に着く

 

 例えば、街中の渋滞路やタイトなUターンをする際などに、仮にバランスを崩してしまっても、余裕で足を地面に着けて転倒を回避することができそうです。なお、こうした取り回しなどのしやすさには、車両重量143kgという軽量な車体も、相乗効果で貢献しているといえます。

エンジンの鼓動感や排気サウンドは大きな魅力

 エンジンを始動させ、ギアがニュートラルの状態でアクセルを数回ひねってみると、空冷シングルエンジンらしい低く乾いた排気サウンドを楽しめます。カワサキの開発者によれば、メグロS1とW230のマフラー排気音は、かなりこだわったポイントのひとつなのだといいます。

 

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マフラーは、見た目だけでなく、排気サウンドにもこだわった

 

 特に、音質は、1960年代の250ccモデル「メグロ・ジュニアS8」の現車を旧車ファンのオーナーさんからお借りして、徹底的に研究したといいます。もちろん、排気ガスや音量など、現代の厳しい規制値をクリアしながらですから、かなり苦労したことがうかがえますね。その効果もあってか、メグロS1とW230の排気サウンドは、これらモデルの魅力のうちでも、特に大きなポイントとなっているといえるでしょう。

 そして、実際の走り。アクセルを軽くひねりながらクラッチレバーをミートすると、スルスルと軽快に車体が走り出してくれます。

 特に、メグロS1のエンジンは、低回転域からかなりトルクフル。パワーユニット自体は、オフロードモデルの「KLX230」シリーズと共通ですが、より低い回転からトルクが出るため、信号待ちからの発進でも、流れを十分にリードすることが可能です。

 

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メグロS1のエンジンは、低回転域からかなりトルクフル

 

 また、逆に、シングルエンジン特有といえる、高回転まで回すと頭打ちする感覚がなく、全域でスムーズに吹け上がる感じだったのも驚きです。

 あくまで、筆者の経験上での感覚ですが、単気筒エンジンは、あまり高回転まで回さず、加速する際は早めにシフトアップしたほうが心地よく走れることが多いような気がします。

 もちろん、メグロS1も、そうした走り方で、回転をあまり上げずにドコドコ感を味わうことが楽しいバイク。そこが大きな魅力だともいえます。目を吊り上げてガンガンに走るというより、周りの景色なども楽しみながら、ゆっくりと流して走ることで、心地よい走りを楽しめるバイクなのです。

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