ゴキにハチハチ、ナナハンキラー! あだ名もユニークだった80年代の伝説的バイク5選

ゴキにハチハチ、ナナハンキラー! あだ名もユニークだった80年代の伝説的バイク5選

 バイクの一大ブームが巻き起こった1980年代は、数々の名車が生まれましたが、その人気を裏付けるように、さまざまな愛称で呼ばれたモデルも数多く存在しました。ここでは、そんな1980年代のバイクのなかでも、特に「ゴキ」「ハチハチ」「サンマ」など、かなりユニークなあだ名で呼ばれたモデルたちをピックアップして紹介します。

 
文/平塚直樹
 

ヤマハ・RZ350(1981年):ナナハンキラー

 ヤマハ「RZ350」は、兄弟車の「RZ250」と共に、後の「レーサーレプリカ」ブームの先駆けとなったモデルです。当時は、そのクラスを超えた圧倒的な動力性能などにより、「ナナハンキラー」のあだ名で呼ばれました。

 

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ヤマハ・RZ350(1981年)

 

 1980年に発売された「RZ250」の爆発的ヒットに続き、1981年に登場したのがこのモデル。車体などの基本コンポーネントはRZ250と共通ながら、水冷2ストローク2気筒エンジンの排気量を、247ccから347ccへ拡大。最高出力も、RZ250の35PS/8000rpmから45PS/8500rpmにアップし、当時の350ccモデルとしては、かなり優れた動力性能を発揮しました。

 

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ヤマハ・RZ250(1980年)

 

 特に、ほかのモデルを圧倒したのが、乾燥重量143kgという軽量な車体と相まって発揮した鋭い加速性能。当時、高性能バイクの代名詞だったナナハン、750ccの大排気量車を、峠のワインディングなどで追い回すほどのシャープな走りを味わえることから、ナナハンキラーの愛称で呼ばれたのです。

 ちなみに、RZ350には、「サンパン」というあだ名もありますが、これは兄弟車のRZ250と区別するため。当時、RZ250などの排気量250ccバイクを「ニイハン」と呼んでおり、RZ350は排気量350ccなのでサンパンと呼んでいたんですね。

 ともあれ、RZ250やZR350の大ヒットにより、ヤマハは1981年に50cc版の「RZ50」、1882年には125cc版の「RZ125」も発売し、シリーズ化。当時は、2ストローク車よりも4ストローク車の方にトレンドが移ろうとしていた時代でしたが、RZシリーズは、その時代の流れに待ったをかけて、再び2ストローク車への人気を呼び戻したといえます。

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ヤマハ・RZ50(1981年)

 

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ヤマハ・RZ125(1982年)

 

 そして、RZのセールス的な成功は、当時のWGP(ロードレース世界選手権)人気とも相まって、後のフルカウルモデル「TZR250」をはじめ、ホンダ「NSR250」やスズキ「RG250ガンマ」、カワサキ「KR250」といった2スト・レーサーレプリカのブームへと繋がります。

 残念ながら、排気ガス規制のために消滅してしまった2スト・レーサーレプリカですが、今でも多くのファンを持つことは確か。そして、そうしたモデルが生まれるキッカケとなったのが、RZ350やRZ250だったのです。

 
 
 

ヤマハ・TZR250(1989年):サンマ

 レーサーレプリカ全盛期に登場したのがTZR250シリーズです。初代モデルは1985年に発売。その後継として、1989年に登場した2代目モデルは、「サンマ」という愛称で親しまれました。

 

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ヤマハ・TZR250(1989年)

 

 当時の最高峰2輪レースWGP・500ccクラスを闘うワークスマシン「YZR500」の技術などを投入したのがTZR250。1995年まで販売されたロングセラーモデルだったのですが、特に、2代目モデルは、水冷・2ストローク・並列2気筒エンジンに、独特な前方吸気・後方排気のレイアウトを採用。エンジンに取り入れる走行風の流れをストレートにすることで、燃料効率のアップなどを図った機構を採用します。

 ちなみに、この後方排気型レイアウトは、レース専用車で採用されることが多く、当時の市販車には珍しかったといえます。しかも、2代目TZR250は、2本のサイレンサーがシートカウル後方から伸びるスタイルも採用。当時のレーシングマシンを彷彿とさせるシャープなスタイルなどにより、今でも多くのファンを持つモデルだといえます。

 そんな2代目TZR250が、なぜ「サンマ」という愛称で呼ばれたかというと、型式が「3MA」だったから。つまり、「3=サン」+「MA=マ」ということですね。おそらく、約10年間に及ぶ歴史を持つTZR250は、多様なバリエーションがあったため、ほかのモデルと区別するために、ファンなどが型式をもじったのでしょうね。それだけ、多くのファンを持っている名車のひとつである証だといえます。

ホンダ・NSR250R(1988年):ハチハチ

 ヤマハのTZR250と共に、2スト・レーサーレプリカ人気をけん引したのがホンダ「NSR250R」。初代モデル(MC16型)は1896年に登場しましたが、その2代目となるMC18型のうちでも、マイナーチェンジ版の1988年型は「ハチハチ」のあだ名で呼ばれていました。

 

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ホンダ・NSR250R(1988年)

 

 世界最高峰レースWGPの250ccクラスで数々の栄冠に輝くなど、国内外のレースで大活躍したワークスマシンが「NSR250」。その市販バージョンといえるのが、NSR250Rです。

 1988年に登場した2代目モデルのマイナーチェンジ版では、まず、エンジンに249cc・水冷2ストロークV型2気筒を採用。きめ細かな空燃比制御をする「PGMキャブレターII」を装備し、45PS/9500rpmもの最高出力を発揮します。また、車体には、異形5角断面材を用いたアルミ製ツインチューブ・フレームを採用。後輪に150/60R18のワイドなタイヤを採用したほか、低く長いスラントノーズ型フルフェアリングなども装備。まさに、レーシングマシンさながらのスタイルも魅力でした。

 そんな2代目NSR250Rですが、一部のファンなどの間では、「1988年式が最強」といった都市伝説もあります。実際、NSR250Rの最高出力は、1990年に出た3代目(MC21型)までが45PS。その後、1993年登場の4代目MC28型では40PSに自主規制されましたが、初代から3代目までは最高出力は同じです。

 ただし、筆者が覚えている限りですが、NSR250Rに限らず、例えば、CBR400RRなど、当時のホンダ・レーサーレプリカは、1998年型が他メーカーのモデルも含め、最も速かったといった噂がありました。その理由は定かではありませんが、「実際にマシンをベンチテストに掛けると、1988年型がカタログ馬力に一番近かった」など、さまざまな憶測が飛び交っていたようです。

 ともあれ、ことの真相は定かではありませんが、そんな1988年型NSR250Rを、ほかの年式などと区別するために「88=ハチハチ」と呼んでいたのは確かです。「高性能バイク=正義」だった時代を象徴する愛称だといえますね。

スズキ・GSX400E(1980年):ゴキ

 スズキ製スポーツやツーリング向けバイクのシリーズが、ご存じ「GSX(ジーエスエックス)」。その400cc版であるGSX400シリーズの初代、1980年に登場した「GSX400E」は「ゴキ」のあだ名で呼ばれていたことで知られています。

 

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スズキ・GSX400E(1981年)

 

 従来、1気筒あたり2バルブの4ストロークエンジンを採用していたGSシリーズに変わり、1気筒あたり4バルブの高性能な4ストロークエンジンを搭載したのがGSXシリーズです。なかでも、GSX400Eでは、DOHC4バルブを採用する399cc・空冷4サイクル並列2気筒を搭載。シリンダーヘッドに2つのドームを設け、それぞれに吸気・排気バルブを配置することで、燃焼効率を高めた「TSCC」の採用などで、最高出力44PS/9500rpm、最大トルク3.7kgf-m/8000rpmを発揮しました。

 また、フロントフォークには、当時のWGPマシン「RGB500」のノウハウを活かした「ANDF(Anti Nose Dive Fork)」も採用。制動時の前沈み現象を防止することで、車体姿勢や操縦安定性を向上するアンチ・ノーズ・ダイブ機構付きフォークを、750cc版「GSX750E」と共に世界で初採用するなどで、当時としてはかなり革新のメカニズムを搭載していたことも特徴でした。

 そんな名車の呼び声も高いGSX400Eですが、発売当初はこのあだ名はついていなかったようで、ゴキのあだ名は、マイナーチェンジで初期よりも丸みを帯びたフォルムになってからです。車体色にブラック&ゴールドを追加したのですが、マシンにまたがり真上から燃料タンクを見下ろすと、黒光りする「ゴキブリ」を連想させたことから、この愛称が付けられたようです。

スズキ・GSX250E(1980年):ザリ

 一方、GSX400Eと同じく1980年に発売された250cc版の「GSX250E」は、「ザリ」のニックネームで親しまれたバイクです。

 

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スズキ・GSX250E(1981年)

 

 DOHC4バルブ化した高性能な249cc・空冷4サイクル並列2気筒を搭載したのがGSX250Eです。GSX400Eと同じく、燃焼効率を高めるTSCCを採用するなどで、最高出力29PS/10000rpm、最大トルク2.2kgf-m/8000rpmを発揮。操縦安定性を追求した新設計のセミダブルクレードルフレームや、WGPマシンRGB500の技術を活かした穴あき型のフロント・ディスクブレーキなども採用することで、軽快な走行性能などに定評があったモデルです。

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