11月5日、8年ぶりのフルモデルチェンジを受けたボルボのミッドサイズセダン「S60」が発表された。
T字型の印象的なLEDヘッドライト(北欧神話に登場するトール神が持つハンマーをモチーフとしているという)をはじめとした、いわゆる「スカンジナビアンデザインデザイン」のみならず、日本の道路事情に即した扱いやすいボディサイズや、車外の人をも守る先進安全・運転支援機能「IntelliSafe(インテリセーフ)」を全グレードに標準装備するなど、細やかな配慮と最新技術とが随所に散りばめられている。
自動車評論家 鈴木直也氏に試乗の様子をレポートしてもらった。なお、電動化を見据えた取り組みの一環としてディーゼルエンジンのラインナップは持たないという。価格は489万円から。
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※本稿は2019年11月のものです
文:鈴木直也/写真:ベストカー編集部/撮影:西尾タクト
初出:『ベストカー』 2019年12月10日号
■再定義された スウェディッシュ パワフルセダン
ボルボの代表車種といえば、ちょっと前ならワゴン、現在はSUVが主流だが、実はセダンもすごくいい。
日本にボルボが輸入されるようになったのは“アマゾン”の時代からだが、地味だったイメージをガラッとひっくり返したのがモータースポーツにおける240ターボの大活躍だった。
R32GT-Rが登場する前夜、日本のツーリングカーレース最高峰“インターテック”でボルボ240ターボが2連勝したのは、1984年、1985年のこと。ボルボのブランドイメージが上昇するきっかけは、この240ターボの存在が大きかったのだ。
そんな歴史を誇るボルボセダンだが、数的にいえば現在は少数派だ。2018年にボルボは初めて年産60万台を突破したが、うちセダン系は7万台弱で約1割ちょい。
今回日本デビューする第3世代S60の販売が本格的に立ち上がる2019年予測でも、グローバル販売台数は1.5万台程度と見込まれている。しかし、だからイイ!
今セダンを買うユーザーは、流行に影響されずセダンのよさを評価する人たちだが、少数派でいたほうが「価値がわかる人だけ乗ればいい」というイメージにはむしろプラス。
また、新型S60の端正なスタイリングは、いわゆる“オーセンティック”な価値観を好む現代のセダンユーザーのド真ん中にミートしている。
今回試乗した新型S60は、T5インスクリプション。254ps/35.7kgmを発揮する2Lターボを搭載したFF2WDモデルで、614万円のプライスタグがつく。
わかりやすいライバルといえば、新型BMW330i Mスポーツが価格もパフォーマンスもほぼ同等。そう、いまやボルボとBMWは「ガチの競合車」となるほど、ボルボのブランドイメージは高まっているのだ。
走りっぷりについては、FFとFRという違いはあれど、S60と330iはいい勝負だと思う。
もちろん、峠を攻めるのが大好きな人はBMWのハンドリングを好むだろうが、少しペースを落として景色を楽しみながらワインディングを縫っていくようなシチュエーションでは、新しいS60の洗練された立ち居振る舞いは素晴らしい。
その一方で、S60のインテリアデザインは質感という点では3シリーズを凌ぐし、軽快なステアフィール、しっとりした乗り心地など、ドライバーにストレスを感じさせないドライバビリティもきわめて洗練されている。
ボルボはいち早く「2020年以降の新車に180km/hの速度リミッターを装備する」と表明しているが、こういった環境重視のLOHASなライフスタイル提案は、明らかにジャーマン3の先を走っている。
過激なほど環境志向に傾斜しつつある欧州で高級セダンに乗るなら、アウトバーン爆走イメージのドイツ車よりボルボセダンのほうがクール。
新型ボルボS60は、そんな時代の空気を敏感に反映した環境志向の高級車といえるんじゃないかな。
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