EVの欠点は航続距離の短さ。それを急速充電器の普及によってカバーしようというのがこれまでの考え方だったが、非接触(ワイヤレス)充電が可能になれば、この問題は解決できるかもしれない。そして、北米でリーフ用ワイヤレス充電器が発売され好評だという。EVに風は吹くのか?(本稿は「ベストカー」2013年9月26日号に掲載した記事の再録版となります)
文:編集部
■ワイヤレス充電器は3098ドルで販売中!
ワイヤレス充電(日本では非接触充電とも呼んでいる)についてはリーフが発売した時から研究されていたものだが、今回初めて発売したのは電力品質のソリューションを手がける世界的メーカー、シャフナー社と関係の深い米国EVatran Groupで「Plugless Power(プラグレスパワー)」という名前で商品化された。
現在のところ、ラインアップされるのは日産リーフとシボレーボルト用で、米国ボッシュによって設置の際のサービスが行なわれ、価格は3098ドル、日本円で約30万円とそれほど高くない。
もちろん工事費は別途かかるが、日本でも充電器を設置しようとすれば、本体と工事費合わせて30万円以上するから、従来のプラグタイプよりもおしゃれで新鮮なワイヤレスタイプが人気になってもおかしくない。
このシステムは日産がリーフ発売時にすでに研究していた電磁誘導方式を使っている。
EVのワイヤレス充電にはこのほかに三菱がIHIとともに共同研究し、トヨタが技術提携している米国のベンチャー企業WiTricity(ワイトリシティ)社が高い技術を持つ磁界共鳴式もEVでは有力視されている。この磁界共鳴式については後ほど説明するが、まずは今回発売されたリーフ向けのワイヤレス充電器のシステムを説明しておこう。
大きく分けると3つの主要部品からなる。01.クルマの下に装着された車載アダプター 02.地上に設置された駐車パッド 03.充電状況を教えるコントロールパネルの3つだ。つまりケータイ電話の充電と同じ原理で、送信コイルの入った駐車パッドに電気を流すと磁界が発生し、その磁界を受信コイルの入った車載アダプター側で受け、電流が発生し、リチウムイオンバッテリーに充電できる仕組みだ。
円盤状のユニークな駐車パッドの大きさは約56×46cmで高さ6cmとコンパクトで、万一乗り上げても680kgまでの重さに耐えられるという。
コイル同士が反応する距離が約15cmと短いため、位置合わせが重要になるが、クルマが近づくにつれコントロールパネルが明るくなるなど工夫され、ほとんどのドライバーがすぐに慣れ、適正な位置に停車できたという。
駐車パッドの上に停車すれば自動的に3・3kWの送電が始まり、満充電になれば自動的に停止する仕組みだ。ケーブルを使用する際とほぼ同じ91.7%の充電効率を持ち、充電時間は200Vのケーブルで充電した時と同じ約8時間で満充電になるという。
駐車パッドとコントロールパネルをボッシュが取り付ける契約となっていて、約4kgの車載アダプターもボッシュのカーサービスで装着されるほか、新車にはオプションで用意されるという。
おそらく日本でも来年までに同様のシステムを日産が実用化するだろう。
ワイヤレス充電器を装着すると、リーフが持つITコントロールによって充電開始時間をタイマーでセットしたり、充電完了の情報がスマートフォンでわかったりとますます便利になるはず。
最近リーフのタクシーを見るようになったが、例えば駅のコンコースなどに駐車パッドを設置すれば、客待ち時間に充電できるようになり、航続距離も稼げる。仮に6kWの電力を待ち時間15分で充電したとすれば、電費を一般的な7km/kWhとして10.5kmの航続距離が稼げる計算だという。
すでに実験が始まっているが、ある一定区間に定置式充電器を設置することで走行中の充電が可能になる。クルマが減速し、時に停車するような交差点近くに数百mに渡って地面に埋め込んだりすれば走行中も充電が可能になるだろう。
なお韓国では2010年、ソウルで地下架線からの電磁誘導によって循環路線で電気バスが走っている。














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