■決定打になるか? 磁界共鳴式非接触充電
先にも少し触れた磁界共鳴式ワイヤレス充電は2006年アメリカのMIT(マサチューセッツ工科大)で理論化されたものだ。送電側、受電側それぞれにコイルとコンデンサを埋め込み、共鳴現象が起きることを利用し、特定の共振周波数を使って電力を送るもので実用化の研究が進んでいる。
そしてこの技術で他社をリードするのがアメリカのベンチャー企業であるWiTricity(ワイトリシティ)社になる。WiTricity(ワイトリシティ)は無線(wireless)と電気(electricity)をあわせた造語だ。
磁界共鳴式の特徴は電磁誘導式よりも電力の伝達距離が数十cmと大きく、送電装置と受電装置の位置や角度のずれの影響を受けにくいといったことが挙げられる。
つまり、こちらは地中に埋め、シビアにその上を走行しなくてもいい。例えば側面や斜め方向からのワイヤレス充電が可能で、街中や高速道路の区間ごとに送電コイルを置くことで、走行しながらの充電が可能で結果的に長距離を走れるようになるかもしれない。もちろんそこまでのインフラの整備が可能かどうかは別の話だが、実現すれば充電での航続距離の短さというEVの欠点を払拭できる。
ちなみにWiTricity(ワイトリシティ)社と技術提携しているトヨタは2015年までにワイヤレス充電式のEVやPHVを発売する計画だが、リーフのワイヤレス充電器が発売になれば前倒しされ実用化される可能性もある。
■NEXCO中日本の給電実証実験
高速道路側でもさまざまな検証が始まっている。高速道路各社のなかで最もEVの充電に熱心なNEXCO中日本は三菱ふそうが開発した小型電気トラックキャンターE-CELLを使ってワイヤレス充電の実証実験をこの秋から始める。
キャンターE-CELLは2t積みの3L DEトラックをEVにしたもので最高出力96kW(131ps)、最大トルク650Nm(66.2kgm)の強力なモーターと70kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載する。最高速度80km/h以上、航続距離100km以上という本格的な電気トラックで、チャデモ方式の急速充電コネクターのほか磁界共鳴式のワイヤレス充電装置を持つのが大きな特徴だ。
もちろんこんなトラックが走るのは日本では初めてで、ふだんは自走式の標識車として使われるが、コネクター左側面にワイヤレス給電装置を持ち、実際に新富士ICそばの富士保全サービスセンターにあるワイヤレス充電装置から充電が可能だ。
秋に始まる実証実験では、実際にワイヤレス充電を繰り返すことで角度のずれなどによる充電状況の変化を計測する。
NEXCO中日本では今後道路にワイヤレス充電装置を設置しての走行中の充電にも前向きな姿勢を見せている。
まだまだ始まったばかりのワイヤレス充電だが、走行中の充電が可能になれば、クルマに搭載するバッテリーの容量も小さくてすむというメリットがあり、車体の軽量化やパッケージングの高効率化など、EVの姿を一気に変えてしまうかもしれない。
その一方で、全日本ラリー選手権に自身のリーフで出場し、EVの可能性を追求している国沢光宏氏は「ワイヤレス充電が普及する前に、バッテリー自体が大きく進化する可能性もある。各社とも次世代バッテリーの開発を急ピッチで進めていて、大容量バッテリーが開発されれば、走行中の充電も必要なくなる。ワイヤレス充電は急速充電には向かないから、その点は差し引いて考える必要があるだろう。家電感覚で充電できるのは楽しいと思うけれど」と指摘する。
航続距離の短さがネックとなっているEV。課題を克服するのはいつか? そのメドを判断するには時期尚早だが、アメリカで始まったリーフのワイヤレス充電器の販売がEV普及の可能性を拡げたことは間違いない。






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