後方に死角だらけ!? 視界の悪い車が、昔と比べて大幅に増加。その理由と背景にある事情とは?
助手席のヘッドレストに左腕を掛けて、身体の向きを「グイッ」と変えて後ろを振り向く――、誰もが自動車教習所でも教わる、駐車時の“お約束”だが、そんなふうに振り向くと、後方視界が悪い車と良い車の差は一目瞭然。
そして、いま後方視界が悪い車が急速に増えている。
商用車やワンボックスに近い形の車はさておき、セダンやハッチバック、SUVといった一般的な乗用車で、特にこの傾向が強い。
いつ頃から、後方視界が悪い車は増え始めたのだろうか。その理由とともに解説したい。
文:吉川賢一
写真:編集部、MITSUBISHI、SUBARU
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スーパーカーは「後方視界が悪い」のがステータスだった!?
昔から「走る」ことを目的としたクルマは、後方視界を割り切っていることが多い。
例えば、ランボルギーニのようなミッドシップスーパーカーは、キャビンをできるだけ小さくデザインするため、Cピラーを太く、ドライバーの着座高も低く、さらには巨大なリアスポイラーが装着されているおかげで、後方視界が悪い(というか、ほぼない)のは常識だった。
また、トランクからリアスポイラーが浮いた車、例えばR35 GT-R(2007年)やシビックタイプRユーロ(2009年)、古くはスバル インプレッサ WRX STI(1998年)やランサーエボリューションシリーズなどは、後方を走る車がちょうどスポイラーとかぶさって、見えにくかった。
さらに、フェアレディZ(Z33、Z34)のように、リアフェンダーが「モリモリ」なクルマも、リアエンドがどこにあるのかわかりにくく、後退する際には非常に気を使ったものだ。
近年はSUVでも増加! 視界が悪い車はいつから急増?
一方、2000年あたりを境に、それまで車の主役であったセダンが、ミニバンやSUVといった背が高く、視界が広い車へと徐々に置き換えられ始めた。
背が高い車は、死角が多くなるイメージがあるが、ドライバーのアイポイントの高さに加えて、大型のサイドミラーやサブミラーを使うために、意外と視界が良く、むしろセダンのほうが見にくい、ということもある。
筆者の経験だと、1990年に登場した初代エスティマは、大型ボディかつ流麗なデザインをしていたが、ガラスエリアが非常に大きく、後方視界もよく確保された車だった。
他にも、初代セレナ(C23型 1991年)や初代ステップワゴン(1996年)などの初期のミニバンも「後方の視界確保」は良くできていた。
おそらく2010年ごろから、視界が悪い車が登場し始めた。筆者もよく覚えているのが、レンジローバーの初代イヴォーグ(2011年)だ。
SUVなのにデザインを優先し、後ろのガラスが極端に横長のクルマだった。当時の試乗記では、「(後方視界は)思ったほど悪くはない」といった表現でお茶を濁した記事を見たことがあるが、実際に後方視界は良くなかった。
近年は、日産 ジューク(2010年)、トヨタC-HR(2016年)、カローラスポーツ(2018年)、そして最近のマツダ3(2019年)、CX-30(2019年)など、主にハッチバックやSUVで、後方視界が良くない車が徐々に増えてきたように思う。
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