商品企画は難しい。何がウケてヒットするかわからない。基本的に押し付けがましいのはダメだし、メーカーの自己満足が表に出ているクルマは、一部の例外を除き多くの人からは敬遠される傾向にある。
ユーザーフレンドリーでなければ売れないため、メーカーはユーザーのニーズに合わせてクルマを開発している。
しかしなかにはユーザーのニーズに応えようと必死になったばかりに失敗したクルマもある。言葉は悪いが、ユーザーに迎合して失敗した、ということにもなる。
ユーザーのことを考えすぎて失敗したクルマにスポットを当てていく。
【画像ギャラリー】マイチェンで復活の兆しを見せるスカイライン
9代目日産スカイライン(R33)
販売期間:1993~1998年
スポーツセダン&クーペの代名詞となっていたスカイラインが大きく躓いたのは7代目のR31スカイランで、マークII三兄弟を意識しすぎてラグジュアリー性を高めたことにある。
そのR31での失敗を教訓に、スポーツ性を高めて登場したのが8代目のR32スカイラインだった。当時日産が推進していた『901運動』の成果もあり、2ドアクーペ、4ドアセダンともその走りの評価は高く、クルマ好きから支持された。
しかし、販売面では決して成功したわけではなかった。特に問題視されたのがセダンのリアシートの狭さで、居住性の悪さが指摘されることが多く、スカイラインの4ドアセダンは販売面で苦戦していた。
9代目のR33では、セダンの居住性アップが大きな命題となっていて、それを実現するためにボディは大型化した結果、車重も大幅に増加してしまった。
2ドアは4ドアよりもショートホイールベースを採用する予定だったというが、最終的には同じホイールベースで登場したため、R32のようなキビキビ感がなくなった。
パワー感のないリニアチャージコンセプトのターボの影響もあり、鈍重なイメージが定着して、セダン、クーペとも共倒れしてしまった。
大排気量NAを思わせるリニアチャージターボ、重量増はしたが、剛性感が高くしっかり感のあるボディ、ロングホイールベースによるスタビリティの高さなど、絶版になってから評価されたのは皮肉だった。
3代目マツダロードスター(NC型)
販売期間:2005~2015年
ロードスターは1989年にデビューした初代でライトウェイトオープンスポーツカーの楽しさを世界に知らしめ、それ以来ライトウェイトオープンスポーツのアイコンとなっている。
初代は1000kgを切る940~960kgの車重に、前期モデルは1.6L(120ps/14.0kgm)、後期型は1.8L(130ps/16.0kgm)のエンジンを搭載していた。
低速でもFRの挙動が楽しめるのがロードスターの醍醐味だったが、『遅い』、『加速が悪い』などが指摘され、モアパワーを望む声もあった。モアパワーに対する要求は、1998年にデビューした2代目ロードスターにもついて回った。
3代目のNC型は2005年にデビュー。NA型のエクステリアをオマージュして原点回帰を謳っていたが、キャラクターはまったく別物になっていた。
エンジンはシリーズ最大となる2Lで、170ps/19.3kgmまでスペックアップ。マツダの軽量化技術により1090kgに抑えていたが、初代、2代目の面影はなかった。
加速力に優れ、トップスピードも速く、コーナリングパフォーマンスは格段に上がっていたが、ロードスター特有のヒラヒラと舞うような走りは影を潜めていた。
運動性能に優れたロードスターを歓迎する声があるいっぽう、失ったものも大きかった。その経験を生かして誕生したのが現行のロードスターで、本当の意味での原点回帰を果たすと同時にNCの運動性能も持ち合わせている。
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