日本では、駐車場へは前進よりもバックで入れることのほうが多い。どちらから入れても法的に違反となるものではないが、なぜ日本ではバックでの駐車(後ろ向き駐車)が多いのか? 駐車の方向を考えてみる。
文/山口卓也、写真/写真AC
【画像ギャラリー】前向き駐車と後ろ向き駐車、迷うこと、ありませんか?(6枚)画像ギャラリー日本では後ろ向き駐車、欧米では前向き駐車が多いのはなぜか?
後ろ向き駐車とは、クルマの後方から駐車する方式で、日本ではこの後ろ向き駐車が一般的だが、欧米では前向き駐車が一般的である。
後ろ向き駐車の利点は以下のとおり。
1.バックでの駐車時に内輪差が生じないため、駐車スペースが狭い場所でも駐車しやすい
2.出庫時に前進で発進できるため、バックでの出庫と比べて安全性が高い
3.出庫時に切り返し(バック→前進)をしなくてすむ
このうち、日本で後ろ向き駐車が一般的なのは、1の「駐車スペースが狭い」からというのが一番の理由。そして、見通しの悪く通行量の多い通りへ出るのには前進での出庫のほうがバックでの出庫よりも視認範囲が広く、安全だからいうのもある。
また、この後ろ向き駐車は「バック駐車」や「出船駐車」ともいわれる。
大日本帝国海軍の伝統で、海上自衛隊でもいわれる“出船の精神”という言葉がある。これは、艦船が港にある場合、舳先(へさき:艦首)を港口に向けている状態(クルマでいう後ろ向き駐車)を「出船」といい、いざ出港という時でも直ちに出港できるようにしておくことを意味し、「いつでも確実・迅速に行動できるよう準備を怠らないようにしようとする精神」を表している。
この出船駐車に対して、前向き駐車は「入船駐車」といわれることがあるので知っておきたい。
前向き駐車の利点は以下のとおり。
1.後続車の多い場所では素早く駐車することができる
2.トランクへの荷物の積み込みが簡単に行える
3.自動車盗難の犯人がクルマを発進させにくい
このうち、欧米で前向き駐車が多い理由は2や3に加え、クルマより先に主要な交通手段だった馬が「前向き駐車(駐馬?)」だったからともいわれている。さらに、駐車場全体も個々の駐車スペースも広い欧米では出庫時の見通しも良いため「わざわざ後ろ向き駐車にする必要がない」ともいえる。
日本ではより安全な後ろ向き駐車が推奨されている
このように、駐車スペース(特に横方向)の狭い日本では内輪差のないバックのほうがクルマをスペースに収めやすい。つまり、後ろ向き駐車のほうが適しているといえる。これは特に大型車に乗っている人ならよくわかるはずだ。
筆者は以前、フルサイズのアメリカンピックアップに乗っていたが、都心部の駐車場に駐車しようとするときはよく駐車場入り口からバックで進入して駐車スペースに入っていた。そうしないと、最小回転半径もかなり大きかったので絶対に駐車できなかったのだ……。
また、駐車時の視認範囲を考えた場合、安全面からも後ろ向き駐車が適している。
つまり、バックで“狭い自車の駐車スペースの安全を確認”するか、バックで“クルマや歩行者・自転車などが往来する広い車路(もしくは道路)の安全を確認”するかを考えた場合、前者のほうがより見落としが少なく安全であることは理解できるだろう。
さらに、最近のクルマにはバックモニターが付いており、 “左右タイヤと駐車枠の白線との距離”は前進よりもじつはバックのほうがわかりやすい。フロントウィンドウ越しに見る前進では、右と左が同じように見えないので、“前進での枠内への均等入れ”は意外と難しいのだ。
とはいえ、バックで駐車するときはミラーやバックモニターに頼りきらず、以下の点に注意してほしい。
1.バックギヤに入れる前に一度停止して駐車スペースの安全確認
2.安全確認後にバック開始
3.一度前進して切り返し、まっすぐにバック
4.最後は2〜3m手前でもう一度停止して最後の安全確認








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