トヨタが中国の今を考え抜いて現地で発表したbZ3X。その実車がオート上海に展示されていた。じっくり見てみると、見た目も中身も驚愕することばかり。いったいなにがすごいのか。掘り下げて解説しよう!
文と写真/国沢光宏
中国勢と真正面から戦えるクルマを作れ!
話は2年前の上海ショーに遡る。
新型コロナ渦も明け、制限付きながら渡航出来るようになったため、トヨタの中嶋副社長が中国の最新情報を見るべく、その時点で世界最大規模のモーターショーである上海に行った。
当時、トヨタの最新電気自動車といえばbZ4Xである。比較対象として中国の最新モデルを見ての感想は「このままだとトヨタは潰れる!」だったそうな。相当な危機感だったらしく、現地から日本に檄を飛ばしたという。
帰国後「日本のルールで中国勢と戦おうとしても無理!」という結論に至り、前田さんと小西さんという、トヨタの精鋭を起用。「私がすべて責任を取るからいちいち日本に伺いを立てることなく、中国で中国勢と真正面から戦えるクルマを作って欲しい」。それまでの日本勢は「中国車より品質が優れている。少し高くてもいい」だった。
中嶋さんの指令は「価格を含めて戦え!」。それから2年。日本車の開発期間としては異例の速さで(中国と同じ速度感です)仕上げたのがbZ3Xである。
最新のADAS技術も積んでなんと200~320万円!
まず驚くのが価格! ボディサイズ4600mm×1874mm×1645mmというからRAV4と同等。電池容量は58.37kWhと67.92kWhの2タイプ。当然ながら中国で主流のLFP(リン酸鉄リチウム)である。さていくらか?
何と10万元スタートで、最上級モデルも16万元。日本円だと200~320万円ということになります。同じクラスのBYDと比べたって割安感大きい。
考えていただきたい。ARIYAと同じサイズで3分の1。同等サイズのbZ4Xと比べたって半額以下。この時点で「どうやったらそんな安く作れるんだ?」と言われるBYDと並んでいる。価格を見ただけで「今までの日本車とまったく違いますね!」。
凄いのはここからです。中国車といえばADAS技術だ。bZ3Xで採用した中国で主流となっている『モメンタ』のシステム、驚くほど優れてます。なんせセンサーがハンパない! ライダー1、CCDカメラ11、ミリ波レーダー3、ソナー12という多数のセンサーからの情報を入れ、精密地図情報を必要としない広域での”事実上の”ハンズフリー走行を可能にしている。
もっといえば、16万元のクルマでライダー(超高性能測距システム)を採用しているクルマなど存在しない。現時点では中国一(事実上世界ダントツ)のコストパフォーマンスということになる。
日本にこんなクルマが出たら即ゲームチェンジ!
前述の通りbZ3Xで一番高いモデルが320万円。そいつはライダー使う「ハンドルに触っているだけでOKな事実上のハンズフリー」機能を持ち、航続距離610kmの電池を積んでいる。
こんなクルマを日本で出したら現時点でゲームチェンジです! 私は迷うことなく買う。補助金なんか使わなくたってエンジン車より安くて高い機能を持ってますから。皆さんBYDに驚いているけれど、同じレベル以上のクルマをトヨタは2年間で作ったワケ。もちろんbZ3Xが先鋒であり、今回『bZ7』という全長5m級のモデルをワールドプレミアし、これまたBYDと勝負する。
驚くのはここからです。クルマをジックリ見たら、写真のごとく仕上げも素晴らしい! フル装備320万円と聞けば「それなりでしょ」と思うかもしれない。聞けばトヨタの水準をキープしているという。色使いやデザインなどはトヨタより明るくて気に入ったほど。リアシート用のテーブルなどもメルセデス並みにガッチリしており、お金か掛かってる感じ。一時が万事でウナるばかり。
すでに売れ行きも好調。当初予定は月販5千台だったというが、すでに1万台ペース。評価は口コミなどで伝わるし、何よりトヨタというブランドの信頼性は圧倒的。中国人に聞いてもネガティブな意見無し(参考までに書いておくと同じ日に発表されたレクサスの新型ESは酷評でした。中国の人は厳しい評価をします)。押され気味だった日本勢ながら、bZ3Xと日産N7から反撃が始まる!
前田さんと小西さんに「こういったクルマを日本で売らないんですか?」と聞いたら、「現時点では中国市場での生き残りに専念しますが、経験を活かせると思っています。日本でもこの価格でこのレベルの電気自動車を出せる日は遠くないかもしれません」。
なるべく早いタイミングでbZ3Xに試乗したくなってきた。いやいや自動車もま~だまだ大きな伸び代がありそうです。

















コメント
コメントの使い方負けるも負けないもエンブレムはトヨタですが、中身は中華ですよね。
トヨタはbz3cはBYDのプラットフォームにファーウェーのOSを使い、bz3xはGACのaionのプラットフォームにモーメンタムのADASを使っているとの事です。
中国で売り上げが減少している日本メーカーはこれ以上放置はできないのでとりあえず他社製の物でも使って早急に売り上げを確保しなければならなかったのでしょうね。
でもこれで十分気がしますが。
昨年フルモデルチェンジしたAion Vという中華の兄弟車ですね。生産も同工場で行っているようです。https://en.wikipedia.org/wiki/Aion_V#Second_generation_(2024)
負けてないってBYDと共同開発だからこの車売れてもBYDの一人勝ちだぞ
これなら自宅に200V工事してでも欲しい!