マツダが販売の柱と位置づける新型SUV「CX-30」の初期受注を発表。マツダ自身が「好調」と表現するその数字は、他社のSUVと比較して好調と言えるのか。そして、身内への影響は?
マツダは、2019年12月25日に「CX-30の受注が好調」という報道発表を行った。CX-30は9月20日に発表、10月24日に発売となり、12月下旬の受注台数は1万2346台に達した。
CX-30は、「CX-5に続き、今後のマツダの柱の一つと位置付ける、全く新しいSUV」とマツダ自身が明言する渾身の作。
マツダにとっては“売れてもらわなくては困る”本命SUVのCX-30は、想定どおりのスタートダッシュを決めることができたのか。初期受注の評価や他社の人気SUVとの比較、そしてマツダ車全体への影響なども含めて検証したい。
文:渡辺陽一郎
写真:編集部、MAZDA
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CX-30は実質的に約1万2000台を「半年で」受注?
魂動デザインとSKYACTIV技術に基づくマツダ車は、OEM(相手先ブランド製造)車を除くと8車種を用意するが、この内の4車種はSUVで占められる。今は国内、海外ともにSUVが流行しているから、マツダもラインナップを充実させた。
マツダのSUVの中で、設計の新しさで注目されるのがCX-30だ。プラットフォームや各種のメカニズムは、マツダ3と共通点が多く、エンジンについては火花点火制御圧縮着火方式の「SKYACTIV-X」を採用した。
魂動デザインもマツダ3と併せて新しい段階に入ったから、ボディスタイルは新鮮だ。マツダ3と同様、ボディサイドに周囲の風景がダイナミックに映り込む。
マツダは冒頭のとおり受注台数を発表したが、一連のプロセスで注意したいのは、CX-30の価格などを発表したのが9月でも、CX-30の外観は、2019年3月のジュネーブモーターショーで公開されていたことだ。
この時に興味を持ったユーザーは、販売店に問い合わせるなど購入に向けて動いていたから、受注期間を3か月と見るのは短すぎる。実質的に半年くらいの実績と見て良いだろう。
また、発売から数か月後に1万2346台という受注台数は、新型車としてさほど多くない。
例えば同じマツダのCX-8は、高価格のLサイズSUVでありながら、2017年12月の発売から1か月後の受注が1万2000台を超えていた。2017年に登場した現行CX-5は、1か月後の受注が1万6639台であった。
他メーカーのSUVを見ると、2019年11月に発売されたトヨタライズは、1か月後の受注が3万2000台に達する。トヨタRAV4は、2019年5月に発売して1か月後に2万4000台だ。いずれもCX-30の1万2346台を大幅に上まわった。
CX-30の発売は諸刃の剣!? 身内にも影響大
CX-30が登場したことで、マツダ3の売れ行きが下がったことも気になる。
マツダ3は、2019年5月に発売され、9月の登録台数は7533台と好調であった。それが10月には1891台と大幅に減っている。10月は台風19号によって甚大な被害を被り、消費増税も行われた。
マイナス要因も多かったが、7533台から1891台という格差は極端だろう。10月にCX-30が2525台を登録すると、入れ替わるようにマツダ3が減っている。
CX-30はSUV、マツダ3はファストバック(ハッチバック)とセダンだからボディタイプは異なるが、先に述べたとおり内外装とメカニズムには共通点も多い。
しかも、マツダのディーラー網は全国に約800店舗だから、トヨタ全店の4900店舗、ホンダの2200店舗、日産の2100店舗に比べて大幅に少ない。同時期に複数の新型車が登場すると、1車種当たりの販売力が弱まってしまう。
両車ともに「SKYACTIV-X」の発売が遅れたから(マツダ3は2019年12月、CX-30は2020年1月)、発売時期が実質的に重なった。発表/発売時期を離すことも大切だ。
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