どうしてここまで独り勝ち? トヨタディーラーが潰れない理由

どうしてここまで独り勝ち? トヨタディーラーが潰れない理由

 国内の自動車販売は、経済後退局面の影響をもろに受け、経営が成り立たなくなり倒産するディーラーも出てきた。そんな中でも常に安定した数字を出し続け、倒産とは無縁の場所にいるのがトヨタディーラーだ。今後もトヨタディーラーが潰れることは、無いのだろう。その強さの秘訣を探っていきたい。

文:佐々木 亘/画像:Adobestock(トップ写真=Svyatoslav Lypynskyy@Adobestock)

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トヨタが貫く「製販分離」の理念が強いディーラーを作る

トヨタ販売店とメーカーの力関係は、ほぼ対等。これこそがトヨタディーラーの強い所以なのかもしれない(HQAsset@Adobestock)
トヨタ販売店とメーカーの力関係は、ほぼ対等。これこそがトヨタディーラーの強い所以なのかもしれない(HQAsset@Adobestock)

 トヨタディーラーはトヨタモビリティ東京以外、地方にある全てのディーラーの運営を、その土地の資本家(地場資本)が行っている。トヨタほど、クルマを作る「メーカー」と、クルマを売る「ディーラー」がそれぞれ独立しているブランドは無い。

 そもそも自動車産業は、製販分離の構造で成り立っているのだが、どうしても‘‘メーカー>ディーラー’‘の力関係となり、販売に関してもメーカーが口をはさむことが多くなる。

 メーカーが直接経営するディーラー(直営ディーラー)も、トヨタ以外ではまだまだ多くあり、製造と販売の分離とは名ばかりのところも多いのだ。

 そんな中でトヨタは、販売を各地域のディーラーに任せている。ディーラー自体に独自性があり、独自采配できることが、トヨタディーラー最大の強みだ。トヨタ販売店とメーカーの力関係は、ほぼ対等なのである。

 裏を返すと、売れなければ全部ディーラーのせいということ。ディーラーが経営危機に陥っても、基本的にメーカーが助けてくれることはほとんどない。だからこそトヨタディーラーは自分の足で、強く地場に根を張り、懸命に歯車を回し続ける。

「うちのクルマ」とは言わないトヨタ営業マン

トヨタディーラーのショールームに立つ彼らの仕事は「クルマを売る」こと。決してトヨタのクルマを売ることが仕事ではない(WavebreakmediaMicro@Adobestock)
トヨタディーラーのショールームに立つ彼らの仕事は「クルマを売る」こと。決してトヨタのクルマを売ることが仕事ではない(WavebreakmediaMicro@Adobestock)

 筆者は取材などでさまざまなブランドのディーラーに足を運ぶが、トヨタディーラーの営業マンだけが、ほとんど使わないワードがあることに気が付いた。それは「当社(わが社・うち)のクルマ」という言葉だ。

 ライバルやユーザーが比較対象にする他社のクルマとの違いを教えてほしいとトヨタ以外の営業マンに問うと、一定数「当社のクルマは〇〇です」と答える営業マンがいる。

 取り扱い車種について話をするのだから、至極当然の言い回しなのだが、これをトヨタ(レクサス)販売店ではほとんど聞くことは無い。

 トヨタやレクサスの営業マンは揃って「トヨタ(レクサス)のクルマは〇〇です」と、わざわざブランド名を使うのだ。

 筆者も元々トヨタやレクサスディーラーで営業マンをしていたが、ショールームで「当社のクルマ」や「うちのクルマ」などと言ったことは無い。そこには、クルマを作るトヨタと自分がいる販社は、違う会社だという強い意識がある。

 これは誰から教わったわけでもないのだが、研修や日々の業務の中で、メーカーとディーラーは違うもの(製販分離)を強く意識させることが多いのだろう。

 トヨタディーラーのショールームに立つ彼らの仕事は「クルマを売る」こと。決してトヨタのクルマを売ることが仕事ではないのだ。

トヨタの商品力は相応に高いが、国内で一強の立ち位置を作ったのは、超一流の販売店の力。おそらく彼らは、他ブランドのクルマを売ることになっても、トヨタ取り扱い時と同じくらいの成果を出すだろう。

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