利益急減!! トヨタ 日産 ホンダ…… 2024年度決算にみる各社の動向と今後

利益急減!! トヨタ 日産 ホンダ…… 2024年度決算にみる各社の動向と今後

 ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。第43回となる今回は2024年度決算を受けての各社の動向と今後について。「トランプ関税」が世界を揺るがすなか、各メーカーが重視すべきものとは?

※本稿は2025年5月のものです
文:中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)/写真:トヨタ ほか
初出:『ベストカー』2025年6月26日号

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■2024年度決算はスズキを除く全社が2桁を超える減益に

2024年度決算における営業利益と2025年度会社ガイダンス(億円)
2024年度決算における営業利益と2025年度会社ガイダンス(億円)

 日本の自動車メーカー7社の2024年度決算は、業界合計の営業利益が前年比14%減少しました。スズキを除く全社が2桁を超える減益の厳しい結果です。

 収益力の高い上位2社(トヨタ、ホンダ)は穏やかな減益に留まりましたが、残りは非常に厳しく、日産に至っては88%減益となり、6760億円もの巨額の最終赤字に転落しました。

 自動車産業は、4月から始まったトランプ関税を前にして非常に厳しい経営環境に入っています。この背景には、米国・中国における競争環境の悪化、販売奨励金の増加、台数の減少があります。

 2025年度の利益計画は、会社よって出し方がまちまちです。影響が大きいと見られていた日産、マツダ、SUBARUは、現時点で算定が困難という理由で利益計画は「未定」としました。

 利益計画を出したトヨタ、ホンダ、スズキ、三菱自においても関税影響の条件や価格・台数前提がバラバラです。見通しが不透明なようで、どう影響を織り込んで情報発信すべきか、各社非常に悩んでいる姿が浮き彫りとなりました。

 2025年度の業績予想に織り込まれたグロスの関税影響額は、会社によって全面反映、部分反映、未定の3つに分けられます。参考までに下図で、筆者が試算したグロス影響額(部品関税のオフセットを除く)と対比させています。

2025年度の関税影響額比較
2025年度の関税影響額比較

 トヨタは関税影響を業績予想の「部分反映」だけに留めました。自らが輸入業者として支払う4月、5月の関税費用が1800億円で、この実額だけを業績に織り込んだのです。日米政府が関税交渉中で、余計なノイズを発しないようにする配慮も見え隠れします。

 4月は通関量が少なく、4~5月で1800億円だから年率で1兆円という計算は間違いです。筆者は1兆4500億円と試算してきました。この試算値は政府間交渉で大きな合意がなければ、依然合理的な予想だと考えます。

 関税影響をほとんど織り込まずに、営業利益計画が前年比21%減の3.8兆円というのはいかにも低いという印象です。ここに関税費用を支払えば2.8兆円に利益は降下します。さまざまな挽回策で3.5兆円レベルへ挽回してくるとは考えますが、トヨタにとっての先ゆきは決して楽なものではないのです。

■2025年度を「最悪の年」にすると決めたホンダ

「トランプ関税ショック」が続く。さすがのトヨタも先ゆきは決して楽ではない
「トランプ関税ショック」が続く。さすがのトヨタも先ゆきは決して楽ではない

 一方、「全面反映」したのがホンダです。営業利益は実に前年比59%減の5000億円と公表しました。

 ただし、関税の影響もあるのですが、本質的な原因として、EV戦略を転換して過去の負債の一掃を図り、今年をベースイヤー(最悪の年)にして、その後の反転を目指すという経営の意志が強く入っています。

 ホンダの計画に織り込まれた関税影響は6500億円です。完成車関税3000億円、部品/原材料関税で2200億円、二輪車/パワー製品の影響1300億円が含まれます。価格改定などで2000億円の挽回努力を見込み、ネットで4500億円の減益要因を計画に織り込みました。

 ホンダは自動車関税の影響がトヨタ並みに軽微なはずでした。しかし、部品関税の軽減を無視して25%をそのまま前提に置くなど、最悪の条件で全面反映することで、予想を超える関税費用を織り込んでいます。

 中国、アジアからの二輪車や汎用部品に対する相互関税の影響が1300億円と予想を超えました。筆者は自動車関税を4600億円と予想していましたが、影響の差異は部品関税と相互関税の前提条件差に起因します。実態として5000億円程度が現実的だと考えます。

 ホンダは2000億円のEVに関わる会計的費用も計上します。これはEVシフトを推進した三部社長の戦略転換に起因します。

 5月20日の「CEOアップデート」で表明したとおり、2030年に向けたEV戦略を後退させます。カナダ新工場を最低2年遅らせる決定をしました。資産減損、サプライヤー補償、違約金など、この戦略転換に費用がかかります。

 どうせ業績が下向くなら思いっきり下げようというわけでしょうか。為替前提もトヨタの1ドル=145円より10円も円高の135円に置いています。

 日産、SUBARU、マツダは「未定」としました。

 日産は関税影響総額が4500億円。関税影響を織り込まない前提において営業利益は収支トントンという見通しを示しながらも、関税影響を含めた計画は未定としました。絶対に赤字予想は出したくないということでしょうか。

 日産は新CEOエスピノーサ氏が「Re:Nissan」と銘打った再建策を発表、人員削減9000人から2万人、中国以外の生産能力削減50万台から100万台、7工場の閉鎖を今後3年で進めます。

 課題は確かに残りますが、わずか就任1カ月少しで、これだけの案をまとめ上げてきた若き経営者の実行力に目を見張るものがありました。

次ページは : ■各社は市場シェアを守る強い意思を示した これから重要なのは?

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