スーパー耐久でも導入!! そもそもエタノールをガソリンに混ぜるとなにが起きるのよ?

スーパー耐久でも導入!! そもそもエタノールをガソリンに混ぜるとなにが起きるのよ?

 2025年のスーパー耐久シリーズで、ENEOSのエタノール20%混合ガソリンの実証実験が始まることが発表された。実はこれすごい挑戦。エタノールの混合率を20%まで高めるとCO2削減にも効く反面、技術的課題も高まるためだ。そこでENEOSや自動車メーカー各社が挑む「エタノール混合ガソリンの課題」をまとめてみた!

文:ベストカーWeb編集部/写真:SPJ-JS、ENEOS、Adobestock

エタノールは水を吸う!? 燃料系の素材に影響あり

S耐富士24時間レースではENEOS提携チームにおけるエタノール20%混合ガソリンの使用が発表された
S耐富士24時間レースではENEOS提携チームにおけるエタノール20%混合ガソリンの使用が発表された

 エタノールはトウモロコシやサトウキビ、古紙などから作られるバイオ燃料で、燃焼しても大気中のCO₂を実質的に増やさない「カーボンニュートラル」な燃料として注目されている。地球にやさしい燃料というわけだ。

 実はエタノール混合ガソリン自体はすでに存在しており、日本にも2%程度エタノールを混ぜたETBEガソリンがあるのだが、問題はその混合率。ガソリンにどんどんエタノールをまぜていくと、それなりに不具合も生じてしまうのだ。

 まず一つは、エタノールは吸湿性が高いということ。空気中の湿気を取り込みやすいので、燃料タンクや配管内に水が混入し、金属部品のサビや腐食を引き起こすことがある。さらにゴムや樹脂などの素材によってはエタノールに対する耐久性が低く、劣化や膨潤といったトラブルが起きる場合がある。

燃費や出力にも影響! エンジン制御の対応がカギだ

エタノール85%で戦う米インディは特殊だが、それを除くとS耐の20%という濃度は画期的。ちなみに米NASCARはエタノール15%だ
エタノール85%で戦う米インディは特殊だが、それを除くとS耐の20%という濃度は画期的。ちなみに米NASCARはエタノール15%だ

 エタノールのもう一つの特性が、発熱量がガソリンよりも小さいことだ。つまり、同じエネルギーを得るためには、より多くの燃料を燃やす必要がある。結果として、単純に混合率を上げただけでは燃費が悪化する可能性があるのだ。

 さらにエタノールは高オクタン価でノッキングには強い反面、冷間時の始動性が悪いといった特性も持つ。これらの特性を踏まえると、エタノール混合率の高い燃料を使うには、素材の改良やエンジン制御の最適化など、より高度な技術が求められる。

 スーパー耐久が挑もうとしているのはまさにこの点だ。過酷な条件下でクルマを鍛え、これらの問題を乗り越えようというのだ。

 この取り組みはまさに、市販車両へのエタノール普及の筋道をつけ、さらには内燃機関の可能性を高める動きだといえる。速さばかりでなく、自動車の実験場としての存在感を高める「S耐」に、大いに期待しようじゃないの!

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