中国メーカーは今後、日本メーカーにとっての脅威となるのか!?

中国メーカーは今後、日本メーカーにとっての脅威となるのか!?

 米・トランプ大統領の登場で、ここ最近はアメリカにばかり注目が集まっているが、忘れてはならないのがお隣、中国の動向。

 かつてはパクリ車ばかりと揶揄された中国の自動車製造も格段の成長をとげつつある。最新の中国の動向を考えてみた。

 文:国沢光宏
ベストカー2017年1月26日号


日本のピンチはもうすぐそこまで来ている

 「中国は日本の脅威になるのか?」と聞かれたら答えは超簡単。

 「なるのか?」でなく「日本の自動車産業にとって最大の脅威になった」ということになる。未来の話でなく現在進行形なのだ。

 最近聞いた話で最も「これは厳しいかもしれない」と感じたことは、中国の上海汽車がタイとインドネシアで、それぞれ20万台規模と15万台規模の工場建設に着手したというニュースである。説明しよう。

 そもそも中国の自動車メーカーが中国で販売台数を伸ばすこと自体、日本の自動車メーカーにとって明るい話ではない。とはいえ、直近を見ると中国の自動車需要そのものが伸びているため、中国の自動車メーカーの販売台数急増をまったく感じさせない。

 ニュースを見ていても、日本の自動車メーカーの好調な数字しか目にしないと思う。販売シェアが落ちても販売台数は伸びているからである。

 けれど中国の自動車メーカーの勢いたるや驚くほどになってきた。日米欧と合弁して作ったメーカーの販売台数はもちろん、民族系と呼ばれる中国独自資本のメーカーも販売数を伸ばしており、日本のメーカーは早ければ2~3年後にも販売台数を落とし、今のままだと規模の縮小を強いられる状況になるだろう。

 これはいかんともしがたいが、日本の自動車産業からすれば中国での市場規模を落とすだけ。

 今の欧州市場で起きている日本車の低迷と同じで、熱い湯だと驚いて飛び出すが、水から茹でると気がつかず煮えてしまうカエルのごとく、10年規模で徐々にダメになっていくのみだ。

 いっぽう、中国の自動車メーカーはイケイケドンドンの状態になってしまった。それが文頭に書いたタイとインドネシア。中国の経営者は歴史的に日本の経営者よりアグレッシブ。

 儲かると思ったらドンドン投資してくる。例えばタイはすでに生産能力は飽和状態になっており、これ以上工場を作っても売れない。日本のメーカーは生産調整を行っているほど。そこに中国が20万台規模の工場を作る。

 当然価格で勝負してくることだろう。数年前、いや2~3年前の中国車の完成度&品質であれば日本車にとって脅威などなかった。圧倒的に劣っていたから。

 しかし2015年以降にデビューした中国車を見ると、驚くほど進化している。先日、中国で数台のハンドルを握ってみたが、インドで作っているスズキのイグニスあたりと勝負したら劣っている感じはまったくしなかった。

 アジアで生産している安い日本車の水準には届く。そいつを日本車より安く販売したらどうか? 親日国であるタイですらTVは韓国製が主流になってしまった。

 タイ人からすれば韓国製TVのほうに魅力を感じたからにほかならない。クルマも同じ状況になる可能性は大だろう。しかも中国の自動車メーカーは韓国の自動車メーカーと違い、「華」がある。競技にも出てくるだろう。何よりタイは中国文化圏だ。

 20万台の工場が稼働し始めたらシェアを失うのは間違いなく日本勢である。そして今回タイに進出するのは上海汽車のみ。

 中国を見ると海外進出を準備しているメーカーが私の知るかぎり、第一汽車や広州汽車、長城汽車、BYDAなどなど7社ほどある。これらがタイに20万台規模の工場を作ってきたら、もはや日本車は防戦いっぽうだ。商品力の弱い車種しか持たない日産や三菱などは厳しい。

 マツダやスズキだってお客を持っていかれる。困ったことに中国の進出に対し、有効的な防止策はない。漠然とした表現ながら「もっといいクルマ」を作るしか手はない。

 こういった動きは、タイだけでなくインドネシアやマレーシア、インドあたりでも始まる。東南アジア市場が中国やヨーロッパ市場のように縮小してくる事態は、日本の自動車メーカーにとって悪夢である。

 次のフェーズとして南米や大洋州がターゲットになっていく。すでに南米では中国車にシェアを奪われ始めている国も出てきた。

 オーストラリアやニュージーランドで中国車がラリーなど始めたら、これまた乗り替えたりする人が続々出てくるに違いない。繰り返すが日本の自動車メーカーにとって重要なのは「もっといいクルマ」を開発すること。競争に負けたメーカーは家電メーカーのようになる。

中国市場に力を入れる日本の自動車メーカー。2016年4月の北京モーターショーではマツダが新型クロスオーバーSUV「CX-4」を世界初公開している
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