ホイールベアリング交換で使用するベアリングプーラー、パイロットベアリングプーラーと呼ばれる専用工具は、ベアリングの内輪に挿入したチャックを引き上げるタイプがポピュラーです。このタイプのプーラーは2本の足で立つ本体が必要で、足場が不安定だと使いづらいことも。そんな時に便利なのが、目的のベアリングとは反対側からくさび上のドライバーを挿入してコレットを押し抜くタイプのリムーバーです。必要な工具がハンマーひとつという手軽さも魅力です。
文/栗田晃
意外に制約のある引き上げタイプのベアリングプーラー
潤滑不良や異物の混入によってフリクションロスが増加したホイールベアリングは、発見次第交換しなくてはなりません。ホイールハブに圧入されたベアリングを取り外す際に使用するのがベアリングプーラーで、内輪に挿入したチャックを引き上げるタイプの工具がよく知られています。
ベアリングホルダーに2本の足を立てて、橋桁部分に挿入したプーラーボルトでチャックを引き上げるのが一般的すが、上手く扱うにはいくつかの制約もあります。まず第一に、ベアリングの外側に2本の足が立つための足場が必要です。ディスクローターの座面があるフロントホイールはさほど苦労はしませんが、スプロケットキャリアとホイールダンパーを取り外したリヤホイールは意外と足場が不安定になる場合もあります。
またチャックの先端にはベアリング内輪のテーパー部分に掛かるよう僅かな突起がありますが、左右のベアリングの間にあるディスタンスカラーが密着していると突起が内輪にうまく引っ掛からず、プッシュボルトを締め込んでもチャックの先端が充分に開かず、プーラーボルトを巻き上げても抜けてこないこともあります。
さらに足場が不安定だと、プーラボルトにある程度のテンションが加わるまでプーラー自体が安定せず、2本のレンチを扱うのに手間が掛かる場合もあります。
定番と思われているベアリングプーラーにも、思わぬ制約があるものなのです。
引いてもダメなら押してみるタイプのベアリングリムーバー

複数のコレットとドライバーをセットにしたベアリングリムーバーの一例。ドライバーと呼ばれる棒の先端はマイナスドライバーのようなクサビ状で、コレットのサイズによって溝の幅が異なるため2本セットされている(本文中で紹介したモーションプロ製の工具ではない)

コレットはマイナス溝が掘られた部分をベアリングの内輪に挿入する。サイズはホイールベアリングで一般的な10、12、15、17、20、22、25mmで、このサイズ設定はWebikeで販売しているモーションプロ製も同様となっている。
引き抜くタイプのベアリングプーラーが使いづらい場面で役立つのが、押し抜きタイプのベアリングリムーバーです。これはベアリングの内輪にマイナス溝入りのコレットを挿入し、ホイールハブの反対側から挿入したドライバーと呼ばれる専用棒で叩いて使用します。
ドライバーの先端はマイナスドライバーのようなクサビ状で、コレットのマイナス溝に打ち込むことでコレット自体がベアリングの内輪に強く押しつけられていくのが特徴です。引き上げタイプのベアリングプーラーはチャック先端の突起がベアリングにうまく掛からないと滑って抜けることがあるのは先述の通りですが、ベアリングリムーバーのコレットの先端にはそのような突起はありません。
それでも圧入されたベアリングが抜けるのは、ドライバーを打撃するほどコレットが内輪に密着する圧力が大きくなるためです。引き上げタイプのベアリングプーラーは、チャックを拡張するプッシュボルトとチャックを引き上げるプーラーボルトが別々に働くため、ベアリング内輪とチャックの密着が不十分な状態でもプーラーボルトを巻き上げることが可能で、その結果チャックが滑るトラブルにつながります。
一方押し抜きタイプのベアリングリムーバーはコレットの圧着と押し抜き作業をドライバー一本で行うため、ハンマーでドライバーを叩くほどコレットが内輪に強く密着して滑りづらく、ベアリングが抜けやすくなります。
引き抜きタイプのように2本の足を立てるための安定した足場が不要で、プーラーボルトを締め上げるための2本のレンチも使いません。

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