「サンキュー事故」を知っているか? 「感謝が焦り」が生む負のスパイラルにご用心

「サンキュー事故」を知っているか? 「感謝が焦り」が生む負のスパイラルにご用心

 夏休みが近づいてまいりました。普段は運転しないサンデードライバーが急増し、道路は大渋滞。そんな中で注意したいのが「サンキュー事故」。これは、優先権を持つ直進車が対向の右折車に道を譲った結果、「ありがとう」の気持ちが焦りを生み、発進時に二輪車や自転車と衝突する交通事故の一種です。いわゆる右直事故の一種で、死角と心理的プレッシャーが重なり合うことでリスクが一気に高まります。本記事では、定義から典型的な発生シーン、そして本当に現実的な予防策までを解説します。

文:ベストカーWeb編集部、画像:AdobeStock

【画像ギャラリー】これが「サンキュー事故」の図…「止まってくれたんだから早く行かなきゃ」が事故を呼ぶ(1枚)画像ギャラリー

感謝が招く危険スパイラル! サンキュー事故の真実

「サンキュー事故」とは、交通事故の一種で、優先権のある車両が優先権のない車両に道を譲った結果、停止中または発進・合流時に二輪車や自転車と接触する事故を指します。典型的には、渋滞中の交差点で直進車が対向右折車を先に行かせた後、直進車の左側をすり抜けてきた二輪車と衝突するパターン。いわゆる「右直事故」の一種であり、譲った側・譲られた側それぞれの死角と、「譲られたからには早く行かなければいけない」という感謝と焦りから生じる心理的プレッシャーが事故を誘発します。

対向車線が詰まっている際に、「A車」がいったん停止してくれたのを見て、「B車」が「これで右折できる」と思って進むと、A車の横から進んできたバイクや自転車と衝突。いわゆる「右直事故」
対向車線が詰まっている際に、「A車」がいったん停止してくれたのを見て、「B車」が「これで右折できる」と思って進むと、A車の横から進んできたバイクや自転車と衝突。いわゆる「右直事故」

(止まってくれた対向車へ)感謝を示すためにクラクションを軽く鳴らしたり、手を挙げたりすることで、注意力が途切れたり回避動作が一瞬遅れるケースもある。同乗者が「ほら譲ってくれたぞ、早く行け」などと急かして焦るケースもあるという。まさに「感謝」が仇になるパターンといえます。

 以下、この「サンキュー事故」の原因と対策を列挙します。

■なぜ起こる?【原因編】
(1)心理的プレッシャー

譲ってもらったドライバーは「せっかく譲ってもらったのに…!」と焦り、発進前の安全確認がおろそかに。

(2)視界の死角
停止直後の再発進では、ボンネットやAピラーの陰に隠れた二輪車を見落としやすい。

(3)動作切り替えのタイムラグ
停止→確認→発進という一連の動作がテンポ良く進むほど、次の瞬間への注意が薄れる。

発生しやすい典型シーン【状況編】
(1)渋滞中の交差点

直進車が対向右折車を先に行かせた直後、左側から二輪車がすり抜け。

(2)商業施設の出入口
駐車場出口で譲った瞬間、脇道の自転車と接触。

(3)高速道路の合流ランプや渋滞列からの車線変更
合流を譲るために減速し、そのまま加速ラインを走行中に後続のバイクに追突。

(4)路肩の一時停止
一時停止後、左右確認が甘くなる隙に二輪車が横切る。

 いずれも低速域ながら、死角と心理的焦りが大事故を招きやすいのが特徴です。

今日からできる5つの現実的な予防策【対策編】
(1)冷静な一呼吸

道を譲られた後でもすぐに発進せず待機し、周囲の動きをしっかり確認。

(2)ウインカー&ブレーキランプで明確に合図
手信号やライト点滅、いわゆるサンキュー動作の前に、基本の点灯操作をしっかり実施。

(3)ミラー+目視の二重チェック
発進前にミラー確認後、必ず直接目視で死角をチェック。

(4)ゆとりある減速走行
合流や右折前は速度を抑え、いつでも停止できる余裕を持つ。

(5)交差点・合流直前の警戒強化
繁忙時間帯や死角が多い場所では特に速度を落とし、二輪・歩行者の動きを注視。

 交通ルールを守るだけでは防げない“ありがとう”の危険スパイラル。いわゆる右直事故の一種であるサンキュー事故を理解し、今日からできるシンプルかつ現実的な対策を実践して、夏休み前の週末ドライブを安心・快適に楽しみましょう。

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