日本全国の大学自動車部を取材し、活動内容を周知し、応援していくこの企画。今回、奥野大志氏は新潟県へ。まったくの無名から、2024年のフォーミュラジムカーナでいきなり全国優勝を遂げた長岡技術科学大学自動車部を取材した!!
※本稿は2025年7月のものです
文:奥野大志/写真:奥野大志、Formula Gymkhana ほか
初出:『ベストカー』2025年8月10日号
いきなり全国優勝! 長岡技術科学大学自動車部の強さの秘密
●「自動車部」とは?
自動車部は野球部や陸上競技部等と同じ運動部。学生自動車連盟の大会が中心となる私立大と異なり、国立大は近隣の大学と競技会を開催するケースが多い。
長岡技術科学大学の場合、フォーミュラジムカーナのほか、本庄サーキットで行われる軽耐久レースや、甲信越地区の国立大学とのジムカーナ競技会に参加している。
●長岡技術科学大学 自動車部活動内容
・正式名称:長岡技術科学大学 自動車部
・部員数:35名
・試合車:ミラ
・活動場所:自動車部 部室
・活動日:不定期(月1回のミーティングあり)
* * *
突然ですが、「フォーミュラジムカーナ」という競技で全国の大学自動車部が盛り上がっているのをご存知でしょうか?
自動車メーカーが用意した同一車両で自動車部が争う“ワンメイクジムカーナ”で、2023年にスタート。今回取材した国立長岡技術科学大学(以下長技大)は、2024年の全国大会優勝校です。
ちなみに、初代王者は強豪、中央大学。長技大は自動車部の世界では無名でしたが、フォーミュラジムカーナの優勝により、一躍その名前が全国に知れ渡ったのです。
と、前置きが長くなりましたが、これが長技大に取材をお願いしたいと思った動機。SNSで見る限り、カーライフを楽しんでいる部員が多そうなのも興味を引いた理由です。
キャンパスは新潟県の長岡駅からクルマで20分ほどのところにあります。学生の自家用車が普通にキャンパス内を行き来しており、いかにも国立大学という雰囲気。学生のクルマ保有率は非常に高そうです。
校舎群を抜けて屋外体育施設ゾーンに向かうと、自動車部のガレージ(部室)に着きます。2台分の屋根付き作業エリアがあり、2柱リフトやタイヤチェンジャー、エンジンハンガーなどを完備。隣には広大な共用駐車場のほか、周辺にもクルマが停められるスペースがあり、自動車部にとって絶好のロケーションです。
インタビューに対応いただいたのは部長(当時)の越塚リョウさん。アルファロメオのブレラとプレオを所有する、工学部の修士1年生です。
「自動車部は35名で活動しています。“自分のやりたいことをやる”がモットーで、活動は不定期。部全体の活動としては軽の耐久レースがありますが、これも自由参加です。月一の全体ミーティングや、部車の整備のために招集をかけることはあります」(越塚さん)。
ガチガチの自動車部を想像していただけに予想外でしたが、自由な雰囲気を大事にしていることが伝わってきます。そのためか、いろいろなタイプの部員が在籍し、競技志向の人はジムカーナ、カスタムや旧車が好きな人はガレージでDIYと、それぞれが自分のスタイルで自動車部ライフをエンジョイしています。
ただ、ここで疑問に思うのは、それほど武闘派ではない長技大が、なぜ激戦のFジムカーナで優勝できたのか? 越塚さんに問いを投げかけてみました。
「好成績の要因は練習環境にあると思います。新潟県内はジムカーナの練習環境が整っていて、スキー場の駐車場やミニサーキットなど、普段から練習できるところが3カ所もあります。
スキー場の駐車場は1日4000円で走り放題と安く、Fジムカーナにドライバーとして参加した今川くんはMR-Sで多い時期はほぼ毎週練習に行っています」(越塚さん)。
なるほど。新潟といえばスキー場。オフシーズンの間に駐車場でたっぷり練習したら確かにうまくなりそう。4000円という費用もフレンドリーです。
「冬は冬で、長岡市は『特別豪雪地帯』に分類されていて、雪道運転が当たり前です。
一部の部員は冬場でも後輪駆動車で移動しているので、普通に運転しているだけでも、アクセルとクラッチのていねいな操作や、低速時のカウンターなどの技術が身につきます。低μ路の運転が得意な部員が多いと思います」(越塚さん)。
目からウロコとはこのことで、長技大は新潟の地理的な特徴をうまく活動につなげています。全日本レベルのスピード競技で活躍しているOBがたくさんいて、過去には3人が同時にタイトルを取ったことも。“トリプルチャンピオン”と呼ばれ、部員の間で語り草になっています。
一方、カスタムや旧車においても長技大ならではの特徴があります。それは2台以上の個人車を所有している部員が多いこと。
そのひとり、マキシマオーナーの湯浅さんは、なんとシトロエン BXとMGBも所有。「競技はやってないです」と語り、ガレージでの整備と部のサポートに精を出しています。
恵まれた環境があるからこそですが、これもまた長技大の活動。個々の部員がそれぞれのフィールドでカーライフを楽しめることが大事なのです。
「ひとりひとりの個性が凄く強いので、意見が食い違うこともありますが、みんな折り合いをつけて仲よくやっていると思います。クルマを楽しむことが一番大事です」(同)。
独自のスタンスで輝きを放つ長岡技術科学大学自動車部にご注目ください!


















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