2020年2月、レクサスは昨年の世界新車販売実績を発表した。それによると総販売台数は76万5330台。前年比10%増、過去最高の成績となった。
2019年1~12月の主要地域別の販売実績を見ると、北米では約32.5万台(前年比100%)とほぼ横這いながら、中国は約 20.2万台(前年比 125%)、欧州は約 8.7万台(前年比 114%)、中近東は約 3.2万台(前年比 108%)、東アジアは約 3.4万台(前年比 108%)など、ほかのすべての地域で前年比プラスとなっているのが目をひく。
一方、日本ではどうだったのか? 日本におけるレクサス車の販売は2019年の新規登録台数が6万2394台で、前年に比べて13.2%増と堅調だった。
さて、順風満帆に見えるレクサスだが、2020年以降はどうなっていくのか? 新車登場スケジュールは? 流通ジャーナリストの遠藤徹氏が解説する。
文/遠藤徹
写真/レクサス ベストカーWEB編集部
CGイラスト/ベストカー編集部
※新型車登場スケジュールは2020年2月時点で流通ジャーナリストの遠藤徹氏が、各メーカーや新車販売店に取材した結果を反映したものであり、発売日が近づくことによって流動する可能性があります。新情報が入り次第更新していきます
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2019年売れたレクサス 売れなかったレクサス
■2019年1~12月販売台数/月販平均台数
LS:3145台/262台
LX:1137台/95台
GS:1049台/87台
ES:1万1140台/928台
IS:2050台/171台
CT:2344台/195台
RX:9561台/797台
NX:1万3233台/1103台
UX:1万6395台/1442台
LC:656台/55台
RC:1684台/140台
日本における2019年のレクサス車の新規登録台数は6万2394台で前年に比べて13.2%増と好調だった。2018年10月24日に新型最上級FFセダンの「ES」、同年11月27日に新型コンパクトSUV「UX」を発売、両モデルがフルに販売したのが貢献している。
とはいえ、全体の数値だけを見れば「波に乗っている」順風満帆に見えるが、個々に車種別に見ると喜んでばかりはいられない。
ほとんどのモデルが古くなり、需要一巡で大幅なマイナスになっているので、日本のレクサス市場はそれほど喜べる状況にはないといえる。
足を引っ張る形になっているのが、GS、IS、CTの3車種だろう。GSは2012年1月の登場でデビューから約8年、ISが2013年5月のデビューで約7年、CTにいたっては2011年1月登場だから約9年といずれも長寿車である。
販売台数を見ると目もあてられない。2019年1~12月の販売台数をみると、GSは1049台で月販平均台数は87台、ISが2050台、月販平均台数が171台、CTが2344台、月販平均台数は195台と散々たる台数である。
SUVが好調とはいえ、この3車種はラグジュアリーブランドの屋台骨ではなかったか。EセグメントのGS、DセグメントのIS、CセグメントのCTがことごとくこの状態では先が思いやられる。
輸入車の各車種の販売台数は公開されていないため、正確なことがいえないが、レクサスの2019年の新車販売台数の6万2394台というのは、2019年の輸入車販売台数NO.1を達成したメルセデスベンツの6万6523台(対前年比98.5%)より4129台少ない規模である。
ちなみにBMWは4万6814台(対前年比91.8%)、アウディは2万4222台(対前年比91.5%)と、日本市場で販売される欧州ラグジュアリー(プレミアム)ブランドよりも土筆の頭が飛び出した程度である。
ラグジュアリーブランドには,「歴史」と 「文化」、製品の品質、信頼性、卓越性に関わる「製品の誠実さ」、著名人による支持・保証を意味する「エンドースメント」、ブランドイメー ジへの投資である「マーケティング」、そして「価値主導の創発」といった要素が必要といわれている。
また、私がレクサスディーラーを回って感心するのは、販売方法である。日本のレクサス販売店は店舗規模ごとに標準デザインが策定され内装素材などについても細かく規定されている。
これほど徹底した店舗デザインの共通化は米国も含めて他国では行われていない。 建設費用は通常のトヨタ店舗の3倍ともいわれているが全額販売会社の負担である。
入り口に総合受付を置き、半個室的に仕切られた商談スペースとオーナー専用ラウンジが備えられている。
さらに通常はショールームに隣接する事務スペースはお客から見えないバックヤードに置かれ、あたかもホテルのラウンジのような雰囲気を持ったレクサスの店舗は従来の自動車ショールームとは大きく異なるものになっている。
高級車の専業メーカーである欧州競合ブランドのアプローチとは異なり、大衆車メーカーであるトヨタがその強み(品質、接客)を最大限に生かしながら自らの手で新たな価値(スマートラグジュアリー)を生み出したことにある。
日本のモノづくり企業が高級市場への進出を検討する際、歴史がなくても新しいタイプのラグジュアリーブランドを生み出せる可能性をレクサスの事例は示した。
顧客志向に立ち、マーケティング発想に基づき先進技術と高品質を訴求するラグジュアリーブランドの新しい形をレクサスは提示してきたのである。
こうしたレクサスの”おもてなし”販売がようやく実を結んできたといえよう。レクサスの接客術は高級ホテルや高級ブランド店にいるかのような、コンシェルジュの思わせるものだ。 私が知るかぎり、BMWやメルセデスベンツのディーラーではしていない。それに近い雰囲気はマツダの新世代店舗だ。
それを裏付けるように、J.D.パワー2019年日本自動車サービス満足度調査・総合満足度ランキング、ラグジュアリーブランド別ランキングでは、レクサスが13年連続で1位を獲得。
「サービス納車」「サービス担当者」「サービスクオリティ」「店舗施設」「入庫時対応」の全ファクターで対象ラグジュリーブランド中、最高評価だった。
2005年の販売スタートから早15年、レクサスが熟成期を迎えようとしている。デザインに関してもチーフデザイナーの福市得雄氏が推し進め、2012年のGSから採用されたスピンドルグリルやエッジの効いたパワーのあるデザインはだいぶ馴染んできて、デザインが欧州ラグジュアリーブランドに負けないウリの1つになった。
また、最新のESやUXは、トヨタのTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)を活用した、レクサス版のGA-KやGA-Cプラットフォームを採用したことにより、走行性能だけでなく乗り心地においてもしなやかな上質さを手に入れるようになった。
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