時代の先を読み過ぎた!? 不人気車は挑戦の歴史! 売れそうだったのに予想外に売れなかったクルマ5選

時代の先を読み過ぎた!? 不人気車は挑戦の歴史! 売れそうだったのに予想外に売れなかったクルマ5選

 大ヒットを期待されながらも、思わぬ理由で販売が振るわなかったクルマたち。しかし今だからこそわかる挑戦と個性がそこにはあります。本稿では、ホンダHR-V、スバルエクシーガ、ダイハツソニカ、ホンダジェイド、トヨタブレビスの5台について、販売期間や生産台数、そして売れなかった理由を徹底的に解説します。

文:ベストカーWeb編集部/写真:ベストカーWeb編集部

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予想外に売れなかったクルマ:ホンダ HR-V(初代)

HR-Vはロゴをベースとして最低地上高を高くとり、全高を低く抑えた。国内販売は低迷したものの欧州では人気を博した
HR-Vはロゴをベースとして最低地上高を高くとり、全高を低く抑えた。国内販売は低迷したものの欧州では人気を博した


■販売期間:1998年9月~2006年2月
■販売台数:累計6万9106台

 1990年代後半、RVブームのなかでホンダが送り込んだ意欲作が初代HR-Vです。現在のクロスオーバーSUVの先駆け的存在で、街乗りにもアウトドアにも対応できるコンパクトSUVという独自の立ち位置を確立しようとしていました。

 しかし当時の市場は、RV=本格派SUVという認識が根強く、HR-Vの「ライト感」がむしろ中途半端に映ってしまったのです。

 内装の質感や動力性能についてもライバルのトヨタRAV4やスズキエスクードと比べると見劣りするという声が多く、販売は期待ほど伸びませんでした。

■編集部コメント

 「今見ると、むしろ時代を先取りしすぎていた感があります。当時のユーザーは”SUVらしいSUV”を求めていたのに、HR-Vはその文脈から外れていたからかもしれません。東京モーターショーで公開された時は評判が高かったのですがいざ販売してみるとさっぱりだったのを覚えています」。

フロントからリアにつらなるシャープなサイドウィンドウなど、デザイン面は一部では高い評価を得た
フロントからリアにつらなるシャープなサイドウィンドウなど、デザイン面は一部では高い評価を得た

予想外に売れなかったクルマ:スバル エクシーガ

エクシーガはインプレッサをベースとした7人乗りのステーションワゴン。着座位置が徐々に高くなるシアターシートレイアウトのおかげで3列のどこに乗っても見晴らしがよかった
エクシーガはインプレッサをベースとした7人乗りのステーションワゴン。着座位置が徐々に高くなるシアターシートレイアウトのおかげで3列のどこに乗っても見晴らしがよかった


■販売期間:2008年6月~2018年3月(エクシーガクロスオーバーセブン含む)
■販売台数:累計5万3846台(エクシーガクロスオーバーセブン含む)

 スバルが「走りの良い7人乗り」を目指して開発したのがエクシーガです。レガシィ譲りのシャシー性能と水平対向エンジンを備え、ロングドライブも快適な3列シートワゴンとして登場しました。

 しかし、市場はすでにミニバン全盛期。5ナンバークラスではノア/ヴォクシーやホンダステップワゴン、Lクラスミニバンでは、アルファード/ヴェルファイアなど、背の低い乗用車型ミニバンの人気は下降気味で、居住性と利便性を最優先する背の高いミニバンが市場の中心でした。

 スバリストからは支持されたものの、3列目シートの快適性はライバルに劣り、ファミリー層からは「中途半端」との評価もありました。最後期モデルでクロスーバーSUVとなったエクシーガクロスーオーバーセブンとなってからも巻き返しを図ることができませんでした。

■編集部コメント

 「クルマ好きの人が”ミニバンじゃない選択肢”として買うには最高だった。でもそういう層は少なかった。走り好きのスバリストにとって3列7人乗りは必要なかったのかもしれない。市場のニーズとメーカーの思いが噛み合わなかった好例です」。

2015年4月、エクシーガの販売終了に伴って発売されたエクシーガクロスオーバー7。全幅を1800mm、最低地上高を170mmに拡大したSUVとして生まれ変わった
2015年4月、エクシーガの販売終了に伴って発売されたエクシーガクロスオーバー7。全幅を1800mm、最低地上高を170mmに拡大したSUVとして生まれ変わった

予想外に売れなかったクルマ:ダイハツ ソニカ

ダイハツムーヴのフルモデルチェンジが重なり、設計の古さが目立ったソニカは存在感が薄くなった
ダイハツムーヴのフルモデルチェンジが重なり、設計の古さが目立ったソニカは存在感が薄くなった


■販売期間:2006年6月~2009年4月
■販売台数累計2万9244台

 「爽快ツアラー」というコンセプトのもと、ロングドライブを快適に楽しめる新ジャンルの軽自動車として2006年6月に登場。しかし2009年4月にはあえなく販売終了となった悲運の名車。それが、ダイハツ ソニカです。

 ソニカは開発陣の“気合”が感じられる一台でした。全体のフォルムはダイハツが「コンパクトの常識を打ち破るロー&ロングフォルム」とうたった通りの低く長く身構えたプロポーションでした。走りもよかったです。

 そもそも低重心かつロングホイールベースであることに加え、フロントとリアにはスタビライザーを装着(4WDはフロントのみ)。さらには各所に専用チューニングが施されたサスペンションを採用したことで、その操縦性と高速域での安定性、そして乗り心地の良さは軽自動車の枠を完全に超えています。

 同時代にはスーパーワゴンのタントやパレット、N-BOXが市場を席捲していた頃です。このダイハツソニカと、スバルR1、R2は当時、ハイトワゴン全盛時代にチャレンジングだなと思ったものでした。

■編集部コメント

 「軽なのに上質というコンセプトは素晴らしいです。しかし、購買ターゲットであるフリースタイルカップルズ(まだお子さんのいない若夫婦)はそれを求めていませんでした。彼らが求めていたのは走りうんぬんではなく広さと背の高さであったことは、後の歴史が証明しています。今でしたら、上質な軽に乗りたいという還暦を過ぎた夫婦にニーズがあるかもしれませんね」。

リアビュー。全高1470mmにまとめられた外観は、10年前のものとは思えないスマートさを持つ
リアビュー。全高1470mmにまとめられた外観は、10年前のものとは思えないスマートさを持つ

予想外に売れなかったクルマ:ホンダ ジェイド

全長4650×全幅1775×全高1530~1540mmという日本の機械式駐車場にんも入るサイズだったが
全長4650×全幅1775×全高1530~1540mmという日本の機械式駐車場にんも入るサイズだったが

■販売期間:2015年2月~2020年7月
■販売台数:累計約2.7万台

 ストリームとオデッセイを統合した車種として開発されたジェイド。低床・低重心設計で走行性能と居住性を両立し、スタイリッシュなデザインでファミリー層と趣味層の双方を取り込むことを目指しました。

 しかし、国内市場ではSUV人気が過熱。さらに3列目シートは分割可倒式床下収納式だったものの、補助席的な扱いで、ファミリーミニバンの実用性を求める層には刺さらず、ステーションワゴン好きからも「中途半端」との評価。狙った層が薄すぎたのが失敗の要因です。

■編集部コメント

 「ホンダらしい技術と美意識を感じるクルマでしたが、市場の主流であるSUVや実用ミニバンとは戦えなかった。今ならむしろ乗用車的なハンドリングや輸入車的な個性が評価されるかもしれません」。

荷室は3列目使用時でも90Lの容量を確保。3列目シートが床下に格納できるのをはじめ、全席左右独立して折り畳むことができる
荷室は3列目使用時でも90Lの容量を確保。3列目シートが床下に格納できるのをはじめ、全席左右独立して折り畳むことができる

予想外に売れなかったクルマ:トヨタ ブレビス

「小さな高級車」の意味合いから「鎌倉ベンツ」と呼ばれたトヨタ ブレビス。クルマの出来はなかなか良かったものの、「小さいのに安くはないクルマ」と理解されず、2007年6月に販売終了
「小さな高級車」の意味合いから「鎌倉ベンツ」と呼ばれたトヨタ ブレビス。クルマの出来はなかなか良かったものの、「小さいのに安くはないクルマ」と理解されず、2007年6月に販売終了


■販売期間:2001年6月~2007年6月
■販売台数:累計3万3411台

 「クラウンよりコンパクトで上質」をコンセプトに開発されたのがブレビスです。クラウンほど威圧感がなく、マークIIより高級感があるというポジションで、若い富裕層をターゲットにしました。

 しかし、デザインは地味で若々しさに欠け、クラウンの存在感と比べるとインパクトが薄い。価格も割高で、結局クラウンやマークXに顧客を奪われてしまい、販売は低迷しました。

■編集部コメント

 「ブレビスはトヨタ内での立ち位置が曖昧すぎました。誰に向けたのかが分かりにくく、クラウンに吸収されるのも時間の問題だったと思います」。

プログレと並んでブレビスの内装は豪華で質感の高さが光っていた
プログレと並んでブレビスの内装は豪華で質感の高さが光っていた

総評:不人気車は挑戦の記録でもある

 今回紹介した5台は、市場のトレンドやユーザーの価値観と合致しなかったことで販売が振るわなかったモデルです。しかしいずれも、メーカーの新たな挑戦や未来への布石として存在価値があります。こうした失敗があるからこそ後の成功があるのです。

 不人気=失敗ではありません。むしろ「挑戦の証」として今もファンの記憶に残り、中古市場で再評価されるケースも増えています。あなたが今乗る愛車も、数十年後には「時代が早すぎた名車」と語られるかもしれません。

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