ホンダ シティは自由な発想と若々しいエネルギーから生まれた新時代のライヴビークル【愛すべき日本の珍車と珍技術】

ホンダ シティは自由な発想と若々しいエネルギーから生まれた新時代のライヴビークル【愛すべき日本の珍車と珍技術】

 これまで日本にはたくさんのクルマが生まれては消えていった。そのなかには、「珍車」などと呼ばれ、現代でも面白おかしく語られているモデルもある。しかし、それらのクルマが試金石となったことで、数々の名車が生まれたと言っても過言ではない。

 当連載では、これら「珍車」と呼ばれた伝説のクルマや技術などをピックアップし、その特徴を解説しつつ、日本の自動車文化を豊かにしてくれたことへの感謝と「愛」を語っていく。今回は、低重心かつワイドなフォルムで独特の存在感をアピールした、シティの2代目モデルを取り上げる。

文/フォッケウルフ、写真/ホンダ

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大ヒットした初代の魅力を継承しつつ新たな価値を提案

80年代前半に一世を風靡した初代モデルの「トールボーイ」スタイルから、1986年に発売された2代目モデルは、ロー&ワイドなデザインのスポーティなモデルへと一変した
80年代前半に一世を風靡した初代モデルの「トールボーイ」スタイルから、1986年に発売された2代目モデルは、ロー&ワイドなデザインのスポーティなモデルへと一変した

 1981年10月に登場した初代「シティ」は、トールボーイスタイルという特異なルックスや広い室内空間がウケて、特に若年層から熱狂的な支持を集めてヒットモデルとなった。

 一般的に自動車業界では、ヒット作となった車種がフルモデルチェンジするときに基本コンセプトは大きく変えず、キープコンセプトとするのがセオリーとされる。しかしホンダの開発陣はそういった定説にあえて逆行し、より高次元の性能と感性価値の融合を目指すことにチャレンジする。そうして誕生したのが2代目シティだ。

 第2世代シティの開発にあたっては“新しい世代”、すなわち自らのライフスタイルや価値観をさりげなくクルマで表現したいと願う層のニーズを的確に捉え、それを具現化することが最大のテーマとされた。

 新世代のユーザーが求めるのは、単なる移動手段としての機能性だけではない。クルマは日々の生活に自然に溶け込み、時には個性を語るツールとして、そして運転する楽しさを直感的に感じられる存在としての役割を担うべきである。

 そうした定義のもと、ホンダの開発陣は従来の技術的枠組みに留まることなく、人とクルマの新しい関係性として、「感覚にフィットする道具」としての在り方を再定義し、性能・感性・スタイルを三位一体で設計することに注力した。単なるスペック競争や装備の充実といった次元を超えた、次世代コンパクトカーに求める理想像を具体的に体現することになる。

 外観は初代モデルで表現した独自の世界観を継承しながら、高性能なコンパクトカーとしての機能が追求された。フォルムは塊感を意識した丸みを帯びた大胆な造形を採用。視覚的な量感と緊張感のバランスを取りながら、従来のコンパクトカーとは一線を画す存在感をアピールしている。

初代の丸目から角目となり、ロー&ワイドのプロポーションとなった
初代の丸目から角目となり、ロー&ワイドのプロポーションとなった

 ボディサイズは全長3560mm、全幅は1620mm、全高を1335mmとしてロー&ワイドのプロポーションを表現するとともに、タイヤが四隅に踏ん張るように配置することで高いスタビリティを想起させる。

 これに加え、スーパーワイドフェンダーの採用によって、視覚的にも低重心かつワイドな「クラウチングフォルム」を実現している。さらにボディ表面にはフラッシュサーフェス処理を徹底し、隙間や段差の少ない滑らかな面構成を形成。

 これらの相乗効果によって優れた空力特性を達成している。デザインと機能が高次元で融合したこのスタイルは、単なる外観美にとどまらず走行性能や燃費性能の向上にも寄与する、まさに“機能美”の結晶であり、走りの本質に応えるコンパクトを体現していた。

次ページは : 単なる移動手段以上の体験を提供してくれる高質な室内空間

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