2025年7月20日に行われた参院選で与党が大敗した結果、半世紀にわたってガソリンにかけられてきた「暫定税率」がついに廃止されるそうだ。実現するのはいつ? いくら安くなる? そもそもホントに廃止されるのか?
文/鈴木喜生、写真/写真AC
【画像ギャラリー】 「暫定税率」廃止はいつ実現する?(5枚)画像ギャラリーガソリン価格の42%が税金!?
1972年、田中角栄が第64代内閣総理大臣に任命されると、その2年後の1974年に「暫定税率」が導入された。
ガソリン税の一部として新たに徴収されることになったこの税金は、当初は2年間だけの暫定的な課税だったことからこの名がつけられたが、51年経った2025年現在も施行され続けている。
その結果、国民からは「2年だけじゃなかったのか」「暫定とは名ばかり」「約束が違う」と、総ツッコミを受けているのはご存じのとおりだ。
この暫定税率が付加された結果、私たちが1リッター100円のガソリンを買うと、そこには72.3円の税金が上乗せされるようになった。つまりガソリン代金の42%が税金だ。その仕組みをおさらいすると以下のようになる。
1リッター100円のガソリンには、そもそも28.7円のガソリン税がかけられていた。このガソリン税を「本則税率」という。これに対して田中角栄が「暫定税率」である25.1円を課税した。その結果、ガソリン税は本則税率と暫定税率の2つで構成されるようになり、その合計額は53.8円になった。
ただし、ガソリンにかけられている税金はこれだけではない。1978年からは「石油石炭税」(施行当時は「石油税」と呼ばれた)が課税されるようになり、その税額は現在2.04円。そして2012年からは、ここに「温暖化対策税」の0.76円も上乗せられ、その合計額は2.8円になった。
これらの税額をすべて合算すると56.6円になり、1リッターのガソリンは156.6円になるが、さらにこの金額に10%の消費税(15.7円)が上乗せされる。
つまり、税金に税金がかけられているのだ。その結果、1リッター当たり100円のガソリンに対する税金の総額は72.3円になり、私たちの支払額は172.3円になる。
暫定税率、廃止されるとお財布はラクになる?
ガソリン税、石油石炭税、温暖化対策税などの税額は、ガソリンの市場価格や原油価格にかかわらず、常に定額とされている。そのため、ガソリン税の一部である暫定税率が廃止されれば、私たちがガソリンに対して支払う金額は、確実に1リッター当たり25.1円安くなる。
ドライバーにとってはこれが「暫定税率廃止」の最大のメリットといえるだろう。
しかし、国内の経済活動を広く見渡せば、暫定税率の廃止は私たち国民にさらに大きな恩恵をもたらす。
その筆頭が物流コストの低下だ。
食料品や日用品など、あらゆる商品の値段には輸送料が含まれている。建築資材などの重いモノには特に輸送コストがかかるが、ガソリン代さえ安くなれば、これらの商品の多くが値下げに転じるはずだ。
また、マイカーの所有者にとっても移動の心理的ハードルが下がるため、行動の自由度が広がり、旅行やレジャーに出かける機会が増え、その結果、地域経済の活性化にもつながるに違いない。
つまり、暫定税率が廃止されれば、単にガソリン代が安くなるだけでなく、日本の内需を拡大させる。
その活力を活かして企業が業績を好転させ、同時に経費も削減されれば、社員の所得アップにもつながるだろう。そうした好循環が生まれれば、暫定税率などで追加課税しなくても政府の税収は大幅に上がるはずなのだ。







コメント
コメントの使い方この手の話題では、安くなった分を「他でもない自分が」「他の方法で支払う」ということを、絶対に忘れてはいけません。
それは、道路の補修が行われなくなり、轍や窪みにとらわれての車の修理費、といった分かりやすいものから、
車とは関係ない、自分や家族の医療環境かもしれませんし、消費税増税かもしれません。
経済成長が横ばい以下の国では必ず、減らした分、他でツケを払うことになります。目先に囚われ損しないよう。