日本の自動車関連税制が大きく変わろうとしている。以前より、自動車関連税制を、2026年(令和8年)度に抜本的に見直すといわれており、その見直し内容が政府内で審議されている。2025年は、日本の自動車界にとって勝負の年なのだ!!
※本稿は2025年10月のものです
文/写真:ベストカー編集部
協力:日本自動車工業会税制部会長 後藤 収氏(日産自動車理事)
初出:『ベストカー』2025年11月10日号
2025年が勝負!? 日本の自動車関連税制が大きく変わる
日本の自動車関連税制にとって、ひいては日本自動車界にとって、2025年は「勝負の年」となる。
というのも、自動車関連税制については政府与党を中心に以前から「2026年(令和8年)度に抜本的に見直す」と言われており、その見直し内容が今まさに政府内で審議されているからだ。
そこでベストカーでは、自動車工業会の後藤収税制部会長に、「日本の自動車関連税制はどうなるべきなのか」、「業界団体としてはどういう要求をしていくのか」を伺った。
日本の自動車界の状況は「かつて」と大きく異なる危機的状態
編集部:百年に一度の改革期に際して、日本の自動車関連税制にとって「勝負の年」を迎えることになりました。自工会としては、日本政府に対してどのような税制体系を要求してゆくのでしょうか。
自工会・後藤収税制部会長(以下、後藤氏):最初の一手は取得時の負担軽減、具体的には環境性能割の廃止です。ここは2025年中に結論を出して、来年(2026年)4月から実装してほしい。
日米自動車関税問題は最大の危機を乗りきったとはいえ、国際情勢が大きく揺れ動くなか、日本自動車メーカー各社にとっては国内市場の重要性、産業基盤の維持と活性化はますます重要になっています。そうしたなかで、まず“クルマを買う時の壁”を低くすることはとても大きな意味を持ちます。
編集部:まず第一には、環境性能割(現状、モデルによって登録車で0~3%課税)の単純廃止、ということですね。
後藤氏:そうです。自動車の「保有段階」における税制改革も進めてほしいところですが、こちらは大工事になります。
国税(重量税)と地方税(自動車税)が二本立てになっている現状を、「重量を課税標準に」、「環境性能で増減する」、新しい保有税体系へ設計し直す必要がありますので。この統合は制度・運用の整理が大きい。
だから「2025年は方向性を示す」にとどめざるを得ないでしょうが、重量と環境性能による新しい税体系の導入を決めたうえで、なるべく早く、2~3年以内には新制度を整備すべきだと思います。
闇雲に負担を強いるだけの税金はNO!
編集部:今、世の中では物価高対策をふまえて「ガソリン暫定税率廃止」が求められています。これについてはどうお考えですか?
後藤氏:ガソリン暫定税率の廃止は、もちろんぜひやっていただきたいです。ただ、自工会としては、国内市場の維持・活性化という観点で「まずは環境性能割の廃止」が一義的に重要です。
ここを間違えると、せっかく買い替え意欲が戻りかけても冷えてしまう。ですから、「ガソリンはガソリン」、「車体は車体」で、それぞれ最適解を出していただきたいと考えています。
そのうえで、ここは最も強調したいところなのですが、この「ガソリン暫定税率の廃止」のための財源を、「車体課税への付け替え」を含むユーザー負担増につなげることには断固反対します。「こちらを減税したのだから、あっちを増税」といった付け替えはやめてもらいたい。
編集部:「ガソリン減税の穴」を車体側へ付け替える案も出ていますね。
後藤氏:それは我々が考えていることと「真逆」です。付け替えで車体側を増税したら、国内新車市場はさらに縮みます。そうなると、自動車に関する国内生産・雇用・地域経済へ連鎖的に悪影響が及びます。
編集部:一部報道で「走行距離税で補う」という案も検討されているようです。
後藤氏:いえ、ユーザーの便益に応じた負担とすべきですが、走行距離税にはまだまだ課題が多いと考えています。
まず、走行距離で課税するのであれば、すべての車両の走行距離の把握が必要になりますが、その際のセキュリティ、個人情報、徴収方法……実装の道筋が見えていません。無理やり導入するとなると大変なコストがかかるでしょう。
さらに“痛税感”が極めて高くなる。たとえば車検ごとの徴収は家計のショックが大きい。そして地域間格差が大きすぎます。
都市部在住者は数キロを往復する利用がメインですが、地方では毎日数十キロの距離を自動車で通勤する人がたくさんいます。こういう不公平感をどう解消するか。幅広いユーザーが納得できる、クルマを使うことに喜びを感じる制度を望みます。









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