新社長のイヴァン・エスピノーサ氏を先頭に経営再建計画「Re:Nissan」を掲げ、数々の策を打ち出している日産。しかし一度は否定された台湾の鴻海精密との協業話がいまだ出てくるなど、水面下の動きもあるようだ。国沢光宏氏はどう見る?
※本稿は2025年7月のものです
文:国沢光宏/写真:日産 ほか
初出:『ベストカー』2025年8月26日号
まだ可能性アリ!? 日産と鴻海の関係は?
一度は否定された「日産と台湾企業の雄である鴻海精密との協業話」が未だに出てくる。火のないところに煙は立たない、ということわざどおり、バックヤードでさまざまな折衝を行っていると推定される。
というか、交渉中なのは間違いないと考えます。すでに鴻海が開発&生産した電気自動車を三菱自動車が販売するという動きなど出てきた。日産は三菱自動車の大株主である。
ここにきて話題に上がっているのは、閉鎖されるのではないかと言われている追浜工場で鴻海のクルマを生産するという内容。(※2025年7月15日、日産は追浜工場での車両生産を2027年度で終了することを発表)
追浜工場は日産にとって初めての量産工場である。日産としても継続したいところながら、現在生産しているのは、年間生産台数にして10万台ほどのノートだけ。追浜工場の生産能力24万台の4割にしかならない。一般的に工場の操業率は8割以上必要。
現状だと明確に赤字だと思う。追浜工場を存続させようとすれば10万台程度の増産をしなければならない。日産も新型キックスの生産を考えているようだけれど、現行モデルより大幅な値上がりが必至。頑張って5万台か。
残る5万台をどうしようとなった時に出てくるのが鴻海車の生産委託を受けるというもの。すでに新聞など大手メディアがこの協業話を報じている。
果たしてどうか? 可能性としては充分あると思うけれど、難しい点も多い。
考えていただきたい。この目論見、鴻海車を日本で5万台売らなければならないという高い「ハードル」を超えなくちゃならない。こう書くと「輸出すればいいでしょう」と思うクルマ業界を知らない人もいるだろう。しかし、我が国の政治家は大票田である農家を守ることばかり重視してきた。
そこには食糧自給率を確保するというグランドデザインなどない(本当に守ろうとするなら価格競争力は付けなければならない)。輸入農産品に高い関税を掛ける代わり、相手国が自動車に高い関税を掛けることを容認してきた。
トランプ政権になり、関税2.5%という唯一の『太客』だったアメリカも怪しくなってきた。それ以外の国への完成車輸出は高い関税に阻まれ不可能に近い。
唯一残る手は鴻海車を5万台規模で国内販売すること。
果たして鴻海車が売れるだろうか? 私は厳しいと考える。日本で生産するとなれば生産コストは日産車と同じ。価格も同等になる。
今でさえトヨタのひとり勝ち状態。技術の日産ですら歯が立たない。鴻海も決して悪いクルマじゃないだろうけれど、日本市場だと戦う相手はトヨタです。厳しいと思う。

















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