日本では2024年11月に登場した新型BMW 1シリーズ。今回テリーさんに乗っていただいたのは、もっともベーシックな「120」。「ベーシックグレードでじゅうぶん」というテリーさん。しかしグレードよりも気になる部分は他にあった!?
※本稿は2025年7月のものです
文:テリー伊藤/写真:茂呂幸正、ベストカー編集部 ほか
初出:『ベストカー』2025年8月26日号
そこに「楽しさ」はあるのかい?
2024年秋に日本で発売されたばかりの新型車だが、正直に言って、新しいクルマなのか前からあるクルマなのかわからなかった。
もちろん、BMWだから走りは素晴らしいのだ。3気筒、1.5Lターボのマイルドハイブリッドで、BMWとしてはエントリークラスだろうが、文句なしの性能。ほかに300psの2Lターボもあるらしいが、私には最もベーシックなグレードで充分である。
だが、そうは言ってもBMWだ。今回乗ったベーシックグレードは488万円で、オプションを含めた価格は571万7000円。この価格では「走りがいい」だけでお客さんを引っ張ってくるのは難しいだろう。
同じ「1」でも、SUVのX1なら楽しげな雰囲気もあって新しいユーザーを呼べそうだが、ハッチバックの1シリーズは「借金してでも欲しい!」と思わせる魅力や特長が少ない。
移動のアシと割り切るクルマではないし、趣味のクルマでもない。ユーザー像が見えにくい一台だと思う。
インテリアも少し問題がある。運転席に座ると目の前にパソコンが置いてあるような風景で、まるでオフィスのようなのだ。
仕事を終えて乗り込むと、さっきまでいた会社と同じ風景では疲れも取れない。わざとオフィスのような雰囲気にしているようにも思えるが、それはどうなのだろうか。
今、クルマの内装は端境期にあるのではないか。新しいとされていたものが古くなってきているタイミングという意味である。
インパネに大きなディスプレイを並べるのは、2010年代前半にメルセデスベンツから始まったと記憶しているが、あれから10年以上経った今、高級車のインパネはどれもこれもディスプレイだらけ。右端から左端まで画面で埋まっているクルマもある。
BMW120の内装はそれほど極端ではないにしても、やはりディスプレイの存在感は大きく、事務所にいるようで温かみが感じられない。アスクルで注文した事務機材に囲まれているような気持ちにさせられる。
あのミニと中身が同じだったとは!
新型1シリーズは、ドイツでどのようなポジションなのか、そこが気になる。日本でBMWはやはり特別なクルマだが、ドイツでの1シリーズは「普通のクルマ」だとしたら、このような無難なデザイン、コンセプトに終始するのもわからないでもない。会議で「無難に作りましょう」とうなずき合っているのかもしれない。
しかし、毎年新作が出る洋服なら「来シーズンに期待」ということもできるが、クルマは一度作れば少なくとも6年以上は売り続ける。特徴のないこのデザインで、この先何年も持つのだろうかと心配になってしまう。
同乗者やクルマ好きの友人にいろんなことを伝えたくなる、そんなもっと「語れるクルマ」であってほしい。
しかし、聞いて驚いたのだが、BMW 1シリーズはBMW ミニと「中身はほぼ同じ」だというではないか。パーティーに向かう人と、出社する人くらいの違いがあるのに中身が同じとはこれいかに。
クルマはデザインやコンセプトで印象が変わるとつくづく思うが、それならBMW 1シリーズももう少しミニの遊びの要素を投入してもいいのではないか。何かできない理由でもあるのだろうか。
新型1シリーズをそれはそれで尊重するとして、別バージョンを考えてもらえないものだろうか。
BMWなら「M」のように、どのメーカーも走りのモデルを加えたがるが、そうではなくエンタメグレードが欲しいのだ。クルマも「楽しい、面白い、かわいい」が重要な時代になっていることに気づくべきだ。新型1シリーズは「面白い」が不足している。まずは子どもが喜ぶクルマを目指してほしい。
●BMW 120(488万円・7DCT)
BMWのエントリーモデル。全長4370×全幅1800×全高1465mm、ホイールベース2670mm、車重1460kg、WLTCモード16.8km/LのFF車。
システム出力170ps/28.6kgmの直3、1.5Lターボ+マイルドハイブリッドのほか直4、2Lディーゼルターボ+マイルドハイブリッド(120d)、300psの直4、2Lガソリンターボ(M135)がある。



















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