SUVやミニバンなど、特定の自動車カテゴリーがブームになる時期がある。そのブームで販売を伸ばしたクルマはいいのだが、流れに乗れず惜敗(?)したモデルも存在する。今回はそうした“ブームに乗り損ねた”車種を見ていこう。
文:長谷川 敦/写真:スバル、ダイハツ、トヨタ、マツダ、三菱自動車、CarWp.com、Newspress UK
【画像ギャラリー】ブームをつかみ損ねた、不運のモデルたちをもっと見る(13枚)画像ギャラリーバブル期の自動車ブームに咲いた仇花
●マツダ・ルーチェ(5代目)
1980年代末~1990年代初頭の日本国内バブル景気時代には、各自動車メーカーから高級車が続々と発売された。
そうした高級車路線に最もうまく乗れたのが日産のシーマであり、多くの他社モデルもバブル景気終焉までは好調なセールスを記録した。
その少し前にマツダも自社製高級車のルーチェをモデルチェンジした。
ルーチェの5代目モデルが登場するのは1986年であり、まだバブル景気はスタートしていなかったものの、メインとなるエンジンはそれまでのロータリーからV6に変更され、外観も4代目までの個性の強いものから、いかにも高級車然としたスタイルに変化した。
だが、個性を捨ててトヨタ クラウンやメルセデスベンツのような見た目になったルーチェの高級サルーン化は市場に受け入れられずに販売は低迷。
マツダお得意のロータリーエンジン搭載車も用意されたが、やはりルーチェの売り上げは伸ばせず、1995年に後継車を残すことなく販売が終了。ルーチェ自体の歴史も29年で幕を閉じることになった。
●三菱自動車 エクリプス(初代)
本格的バブル景気時代に突入した1990年に三菱自動車が日本国内に向けてリリースしたのが2&3ドアモデルのエクリプス。
エクリプスは当時流行していたスペシャルティカー、あるいはスポーツカーに属するクルマであり、この時期に三菱自動車と提携関係にあったアメリカのクライスラーと共同開発されている。
三菱自動車のギャランをベースに開発されたエクリプスだが、もともと北米市場をメインターゲットにしていたこともあってアメリカンな雰囲気が強く、さらに日本国内でも左ハンドルモデルしか導入されていないという特異な立ち位置のモデルでもあった。
実際、コンパクト(アメリカでは)で性能も高かった初代エクリプスは、1989年に先行販売されたアメリカでヒットモデルになり、その後4代目まで継続されることになるのだが、左ハンドル車のみのせいか、日本国内ではそこまでの支持を得られなかった。
なお、後年になって2001年公開の映画「ワイルド・スピード」の劇中で2代目エクリプスが活躍し、同車への注目が一気に高まった。
現在の三菱自動車はSUVのエクリプスクロスをラインナップしているが、スペシャルティカーのエクリプスとの技術的なつながりはない。
RVブームも追い風にならず
●ダイハツ ラガー
現在ではオフロード走行もこなせる乗用車をSUV(Sport Utility Vehicle)と呼ぶことが多いが、かつてこうしたカテゴリーのクルマはRV(Recreational Vehicle)と呼称されていた。
そんなRVブームが日本で起こったのは1980年代後半のことで、ウイークデイは日常用車両として使い、休日にはアウトドアに乗っていけるRVに注目が集まった。
そうして各メーカーのRVが販売成績を伸ばしていくのだが、ダイハツが1984年に発売したラガーは、RVブームのなかでもあまり目立つことがなかった。
先代のタフトから、日本国内での販売名がラガーに改称されたこのクルマは、1980年代のRVらしく質実剛健な作りが特徴だった。
つまり、RVとして十分な性能を持っていたのだが、少し後の時代に登場する他社製RVに比べると地味な印象を拭えなかった。
なによりも変速システムにAT(オートマチック)がなく、MT(マニュアル)のみだったのが時代の要請を考えると痛かった。
それでもラガーの販売は継続され、最終的に1997年に後継車種を残すことなく販売を終えている。
















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