クルマにはさまざまなカテゴリーがあるが、そのいずれもが最初からあったわけではなく始祖的なモデルが存在する。今回は、そうした新カテゴリーの礎になったエポックメイキングなクルマたちを紹介していこう。
文/長谷川 敦、写真/スズキ、スバル、トヨタ、ホンダ、日産、CarWp.com
【画像ギャラリー】ブームをつくったパイオニアたちをもっと見る(22枚)画像ギャラリー新発想のスタイルでNEWジャンルを切り開く!
●トヨタ RAV4
現代でこそSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)にはさまざまなサイズのモデルが存在するが、かつては比較的大型のクロスカントリー車がこのジャンルの代表だった。
そんななか、トヨタが1994年に発売した初代RAV4は、それまでにない5ナンバーサイスに収まるコンパクトなSUVとして注目を集めた。
一部にカローラなどのコンポーネンツを流用するものの、大部分が新設計されたRAV4は、舗装路での走行に軸足を置きつつ、オフロード走行も可能なタフなサスペンションとフルタイム4WDを採用していた。
フレームが他社製SUVのようなボディ別体式ではなく、乗用車と同じモノコックボディだったのも特徴のひとつ。
ここまで見ていくとわかるように、RAV4は現在隆盛しているクロスオーバーSUVの先駆け的な存在だった。
乗用車感覚で運転することができて、さらにオフロードも走れるというRAV4の特徴は多くのユーザーに支持されて好調なセールスを記録。他メーカーからも同様のコンセプトを持つモデルが相次いで発売された。
●ホンダ オデッセイ
RAV4が登場したのと同じ1994年に、ホンダからも新ジャンルに挑戦するモデルがデビューした。
ギリシャ神話のオデュッセイアに由来するオッデセイの名称を持ったそのクルマは、ホンダ初のミニバンであり、従来のミニバンとは一線を画すローハイトスタイルのモデルだった。
既存のミニバンには背の高いモデルが多かったが、オデッセイはアコードのプラットフォームをベースにしていたことで車高が低く、ボンネット内にエンジンを搭載していたため低床でもあった。
それでいて室内空間はしっかり確保され、6名、または7名が乗っても快適に移動できた。
低重心設計は走行性能や乗車時の快適性にも有効に働き、スタイルの良さと併せて初代オデッセイは高い評価と人気を得ることに成功した。
オデッセイのヒットにより低床・低車高のミニバンというコンセプトも確立され、それがミニバンブームにもつながっている。
軽自動車の可能性を拡大した2モデル
●スバル 360
現在の日本国内ではきわめて高いシェアを誇る軽自動車だが、その歴史は意外に古く、1949年には道路運送車両法に「軽自動車」という区分が登場している。
当初の軽自動車には小型3輪自動車が多く、やがて4輪の軽自動車もいくつかのメーカーから販売された。
そして1958年には決定版ともいうべき4輪軽自動車がデビューする。
そのクルマこそが「てんとう虫」の愛称で親しまれたスバル 360だった。
360の特徴は、完成度の高さもさることながら、ライバルに比べて圧倒的に価格が安かったことにある。
360の販売価格は42万5000円に設定され、これは当時の大卒初任給2年分以上にもなる高額なものだったが、それでも普通車や他社製モデルに比べると安価で、マイカーを持つという夢に手が届く距離にあった。
高度経済成長期に入った日本ではこうした360のコンセプトと内容が受け入れられて大ヒットモデルになり、その後の軽自動車発展の根幹ともいうべき存在にもなった。
●スズキ ワゴンR
軽自動車は車体のサイズが小さく、それゆえに室内空間が狭くなってしまうのは仕方ないこととされていた。
そのぶん車体価格が安いことや税制上有利なこと、さらには街乗りでの使いやすさなどのメリットがあり、室内の狭さはある意味享受されていた。
だが、1993年にスズキから発売されたワゴンRは、そうした常識を覆す構成を持っていた。
それまではどちらかというと女性向けとの見方もあった軽自動車を、男性ユーザーにも魅力あるものとするためにスズキがとったアイデアが、背を高くして室内に余裕を持たせること。
実際に登場したワゴンRのスタイルは、トールワゴンの名を定着させるほどに背が高く、シートの座面も高めに設定されていたために、体の大きな人でも余裕を持って座ることができた。
荷物の積載量も大きかったワゴンRのコンセプトは市場に受け入れられて生産が追いつかないほどのヒットモデルになり、他社からも同様のコンセプトを持った軽自動車が相次いで登場した。
日本の道路事情にも最適な軽トールワゴンは、今や日常生活に完全に溶け込んでいる。























コメント
コメントの使い方