電気自動車（EV）の普及とともに、増加する「EV火災」。従来の放水方法では難しかったリチウムイオンバッテリー（LIB）の冷却に対し、株式会社モリタが新開発した「アクアサイクロンTM」が登場した。消防現場の常識を変える、この革新的ノズルの実力に迫る。
文：ベストカーWeb編集部／画像：PRTimes
EV火災の“盲点”を突く──モリタ「アクアサイクロンTM」の登場
EVは環境性能や静粛性で注目される一方、火災時の対応が極めて難しいことが知られている。バッテリーが車両下部に配置され、発火時には可燃性ガスと酸素を発生。再燃の危険が高く、長時間にわたる冷却が不可欠だ。従来の放水ではこの“下からの熱源”に水が届きにくく、消防関係者の間で大きな課題となっていた。
この問題に正面から挑んだのが、消防・防災機器のリーディングカンパニー・モリタだ。新発売の「アクアサイクロンTM」は、車両下部に差し込み、回転するノズルで効率的に冷却できる画期的な製品。全高わずか90mmの薄型ボディながら、50L/minという少ない水量で広範囲に放水できる。LIBの熱暴走を効果的に抑制し、再燃リスクを大幅に低減するという。
消防隊員を守る“現場目線”の設計
モリタがこだわったのは、「安全性」と「使いやすさ」だ。2250mmという長いノズルにより、隊員が車両に接近せずに設置できるほか、側面放水ノズルが下方からの火炎を遮断。設置後は“置くだけ”で放水可能なため、消火活動中の負担も軽減される。さらに、ノズルは分割・伸縮式で収納時は980mmまで短縮でき、持ち運び性にも優れる。
現場でのスピードが求められる消防活動において、「アクアサイクロンTM」は軽量（約4.4kg）・簡単操作・高効率冷却という三拍子を実現。モリタの長年にわたる消防技術の結晶といえるだろう。
EV時代の「消火ソリューション」へ
同社は「アクアサイクロンTM」単体だけでなく、EV火災専用のトータルソリューションも提案している。
・STEP1：消防ポンプ自動車「Miracle CAFS Car」
泡薬剤と空気を混ぜて放射し、少ない水で効率的に鎮火する最新消防車。
・STEP2：「アクアサイクロンTM」による下部冷却
LIB部分を直接冷却し、熱暴走を防ぐ。
・STEP3：車両火災用ブランケット「FIRE ISOLATOR」
車両を丸ごと覆い、延焼を防止。
・STEP4：簡易型止水板「Flood Guard」
車両を移動させずに水槽を設営し、LIBを“水没冷却”で失活化。
これらを組み合わせることで、EV火災への対応を「迅速・安全・効果的」に変えることができる。モリタはこのシステムを通じて、持続可能な社会と消防現場の安心を両立させることを目指している。
EV普及の裏で浮上する「新しい火災リスク」に対し、モリタの「アクアサイクロンTM」はまさに時代が求めた解答。安全と効率を両立するその技術が、次世代の消防活動を支えていく。
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