ただの「楽な位置」だと思っていないか!? 「ドラポジ」の追求が真の人馬一体に近づく道だ!!

ただの「楽な位置」だと思っていないか!? 「ドラポジ」の追求が真の人馬一体に近づく道だ!!

 良い運転には「ドライビングポジション」が重要だといっても、それは単純に「座り方」さえ気を払っていればいいというワケではない。車両との一体感を得るために考えるべきことはなにか!? 理論派レーシングドライバー中谷明彦氏が「ドラポジ」の深さを語る!

文:中谷明彦/写真:Lamborghini、McLaren、三菱、富士スピードウェイ、ベストカーWeb編集部

【画像ギャラリー】ドライビングポジションはまさに運転の根幹! スーパーカーはシートはやっぱ伊達じゃない! レーシングドライバーが絶賛するランボルギーニ ガヤルドSTS(11枚)画像ギャラリー

ドラポジを極めるとクルマは変わる!?

中谷明彦氏が市販車ベストと称賛するシートをもつランボルギーニ・ガヤルドSTS
中谷明彦氏が市販車ベストと称賛するシートをもつランボルギーニ・ガヤルドSTS

 ドライビングポジション(以下ドラポジ)の重要性は、今さら言うまでもない。自身が主宰している「中谷塾」でも、また多くのドライビングスクールにおいても、必ず最初に解説されるのはドラポジの基本だ。操作の正確さも、車両との一体感も、その出発点はすべてドラポジに集約される。

 すなわち、ドライバーとクルマとのインターフェースを決定づける根幹である。ただし、ここで多くのドライバーが誤解しているのは、停止状態で「楽だ」と思えるポジションが、そのまま理想のドラポジであると信じてしまうことだ。

 実際には、走り出して加減速や横Gを受け、ステアリングやペダル操作を行うと、身体はシートに押し付けられたり、ステアリングに引き寄せられたり静止状態では想定できない力を受ける。そのとき初めて「少しステアリングが遠い」「シートバックから肩が離れる」などの違和感が現れる。

 だからこそ、走行を開始してから微調整することが不可欠だ。特にサーキットでは、やや窮屈と感じるくらいのポジションが最適となる。高い横Gや減速Gを受け止めるには、身体をしっかり支える環境が欠かせないからだ。

ホールド感×快適性×フィット感!

ランボルギーニ・ガヤルドSTSのシート
ランボルギーニ・ガヤルドSTSのシート

 ドラポジを最大限に活かすには、シートそのものの質も重要な要素になる。ホールド性、快適性、そしてフィット感。この3つが揃わなければ長時間の走行で集中力を維持することは難しい。

 自身が経験した中で、市販車ベストと感じたのは、ランボルギーニ・ガヤルドSTS(スーパートロフェオストラダーレ)に装着されていたカーボンバケットシートだった。一体式ながら身体が吸い込まれるように馴染み、腰から肩まで無駄なく支持してくれる。

 結果としてステアリング操作も、ペダルワークも極めて精度が高まった。シートが身体を受け止めてくれるからこそ、ドライバーは余計な力を使わず、繊細な入力に集中できるのである。

 シートに加えて重要なのがシートベルトだ。サーキットでは最低でも5点式、できれば6点式以上のハーネスが必須となる。4点式は一見レーシーに映るが、実際には衝突時にバックルが腹部や胸部を圧迫し、内臓損傷のリスクを抱える。

 むしろ市販車の3点式プリテンショナー付きの方が安全性が高い場合もある。

シートだけでなく、拘束システムも進化がほしい

中谷明彦氏がかつて搭乗したマクラーレンF1 GTR。写真は、2000年のJGTC GT500クラスにエントリーしたゼロ マクラーレン (写真提供:富士スピードウェイ)
中谷明彦氏がかつて搭乗したマクラーレンF1 GTR。写真は、2000年のJGTC GT500クラスにエントリーしたゼロ マクラーレン (写真提供:富士スピードウェイ)

 安全装備において「見た目」や「雰囲気」に惑わされるべきではない。ここで僕が強く疑問を抱くのは、レーシングハーネスの締結方式が半世紀以上変化していないことだ。未だに人力でベルトを引き、金具に通して締め上げる方法が主流である。

 確かに物理的な確実性はあるが、ベルトが血管を圧迫し心拍数を上げ、長時間では疲労を増大させる。そろそろ医療や航空分野の技術を応用した新しい拘束システムが登場してもいいはずだ。身体をソフトに包み込み、均一な圧力で固定できる構造や、伸縮率を制御可能な新素材ベルトなどが望まれる。安全性と快適性を両立する技術は既に存在しており、自動車分野が取り入れない理由はない。

  これまでの体験を振り返れば、フォーミュラカーやGTマシンのドラポジ調整には毎回苦労が伴った。例えばかつて搭乗したマクラーレンF1 GTRでは、車体センターマウントのシングルシーターというレイアウトゆえ膝周りを支えるコンストラクションがない。

 ドライバーはシートだけでなく、モノコックやバルクヘッドなどに膝や肘を当て、振動や高G下に置いてペダルやステアリング操作を正確に行おうとする。そこが省かれてしまうと正確な体制の保持ができない。

次ページは : 人馬一体とは最も身体に適したポジションを探すこと

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