モデルチェンジ。基本的にはいい響きだし、もちろん送り出すメーカーの方々が良かれと思って手を加えているのはよくわかる。が、受け止める我々ユーザーの側が両手を上げて歓迎できるかといえばそうでもない。
良かったところに手を付けて「あそこがいいところだったんだよ!」と言いたくなるようなクルマ、逆に「なんであそこが直ってないんだよ!」と言いたくなるようなクルマもあれば、「かゆいトコロに手が届く」と表現したくなる「名モデルチェンジ」まで、その有り様は様々だ。
モデルチェンジで現行車になり「変わってしまった」クルマ、また短所がなくなって「見違えた」クルマ、それぞれ主な5車ずつピックアップしてご紹介!
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※本稿は2020年2月のものです
文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2020年3月10日号
■【見違えたぜ!】現行型になって短所がなくなったクルマ
●ダイハツ タント
現行タントは徹底的な欠点潰しを行った。ノーマルエンジンの実用回転域における駆動力不足、曖昧な操舵感、旋回時における前輪のグリップ不足、後席の柔軟性不足と足を前側に投げ出す不自然な着座姿勢など、欠点を片っ端から直した。ライバルのN-BOXに比べてインパクトは乏しいが、後席の座り心地や安定性はタントが優れる。
●スズキ ジムニー
20年ぶりの刷新とあって、舗装路での安定性、操舵感、乗り心地は大幅に向上した。4輪のブレーキを独立して電子制御する機能により、悪路走破力も向上している。衝突被害軽減ブレーキも採用した。
●日産 リーフ
モーター、プラットフォーム、ボディの基本部分は先代型と共通だが、現行型では駆動用電池の容量を大型化して航続可能距離を伸ばした。動力性能も向上している。荷室容量などの実用性も含めて幅広く改善した。先代リーフは世界初の量産電気自動車で、いわば生まれたばかりのクルマだから、2代目の現行型で大幅に進化した。
●トヨタ プリウス
現行型は4代目になり熟成が進んだ。現行型はプラットフォームをTNGAの考え方に基づく新しいタイプに改めて、安定性や操舵感を飛躍的に向上させている。
●ホンダオデッセイ
従来型はルーフの低いワゴン風のミニバンだったが、現行型はステップワゴンやアルファードと同様、フラットフロア構造のボディを備える。先代型に比べると3列目の居住性が格段に向上して多人数乗車も快適だ。しかも低床設計で充分な室内高を確保しながら全高は1700mm以下だから、低重心で走行安定性も優れる。販売は低迷するが、居住性と走りを高次元で両立させて商品力は高い。
■【どうしてこうなった…】現行型になって長所が失われたクルマ
●ホンダ シビック
以前のシビックは、若年層が気軽に買えるスポーティなコンパクトカーのよさがあった。それが今はミドルサイズで、1.5Lターボでも価格は260万円以上だ。シビックタイプRも、初代は1.6LのVTECを搭載して199万8000円だったが、今は2Lターボで458万3700円に達する。従来と大幅に異なるクルマになった。
●トヨタ カローラ
走行安定性、乗り心地、内外装の質は、3ナンバー車になった現行型で大幅に向上したが、5ナンバーサイズのセダン&ワゴンという個性は失った。後席の足元空間やワゴン(ツーリング)の荷室奥行も狭くなった。従って先代型の乗り替え需要に応えきれず、アクシオとフィールダーも継続販売している。
●日産 マーチ
先代型は外観と内装が上質で、可愛らしさと存在感が両立していた。それが現行型では質感が下がり乗り心地も粗い。安全装備も一部省かれ、先代型はサイド&カーテンエアバッグを選べたのに現行型はカーテンエアバッグのみだ。
●トヨタ クラウン
現行型では従来の柔軟な乗り心地が失われた。外観もリアウィンドウを寝かせて、セダンらしさが薄れた。グレードでは豪華なロイヤルサルーンを廃止して、スポーティなRSが主力だ。走りは向上したが、持ち味がメルセデスベンツEクラスに近づき、クラウンを選ぶ価値も薄れた。予算に余裕があれば本家本元のEクラスを選ぶから、クラウンの販売は低迷している。
●トヨタ センチュリー
先代型は専用開発された5L V型12気筒エンジンとプラットフォームを備えたが、現行型は先代レクサスLS600hLがベースだ。共通化で独自性が薄れたのに、価格は700万円以上値上げされた。
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